授業①
魔術師を育成するための学校といっても、いつも魔術の授業をしているわけではない。この学校では魔術の授業をする日、国語や数学などの普通の授業をする日を交互に行っている。
昨日は普通の授業だったため、今日は魔術の授業をする日だ。いよいよ本格的に魔術について学ぶ時が来た。
ケイン先生が教壇に立つと、昨日とは段違いにクラスメイトの集中が高くなる。少しピリピリとした空気さえ感じる。そういえば、ここにいる生徒のほとんどは魔術を学びたくて通っているのだ。それなら、当然といえば当然か。
「はい、ではこれから魔術の授業を始めます。いつもであれば様々な魔術の構造について説明しますが、魔術の授業が初めての人もいるので、訓練場で実際に魔術の行使をする事にします。」
生徒がざわめく。いつもとは違う形での授業という事も理由の一つだろうが、それ以上に僕一人のためにそこまでするという事に驚いているのだろう。
実際僕が一番驚いている。
昨日はエミさんに魔術の基礎を教えてもらったが、実際に使うとなると話は別だ。あれから、僕は何度かあの時の感覚を思い出して小さな風を起こそうとしたが、成功率は2割ほど。
学校長によると、普段この町は結界という見えない壁のようなものに覆われており、危険な動物は入ってこないようになっているらしい。だが、あの時竜が町の中に入ってきた原因が分からない以上、また同じように危険な動物が入ってくるかもしれない。その時に備えるためにも僕は魔術が使えるようになりたいと思っている。
正直ありがたい。でも、不満を漏らす人は必ずいる。そして、その不満はきっと僕に降りかかってくる。つまり……
「またか……。」
ため息をつく。結局、違う世界に来ても僕は周りの空気には合わせられないんだ。当たり前といえば当たり前か。世界が違うとはいえ、ここにいる人たちは同じ人間なんだ。
環境が少し変わった程度で人の本質は変わらない。周りからの視線でそれを嫌というほど実感させられる。
僕は少しイラつきながらも席を立った。
僕らは入学の際にもらった杖を持ち、先生に連れられて訓練場に向かった。
訓練場はどちらかというと闘技場のような施設でかなりの広さがあり、端の方には的がある。他のクラスの生徒はおらず、砂地には何か魔術を使った跡が残っている。
「さて、それでは早速だが訓練場の端にある的に自分の得意な魔術を放ってもらう。それぞれ適当な位置についてくれ。」
先生は生徒を一か所に集め、的の近くに行くように指示する。
文句は言い出せばキリがないが、本当に言ってしまえばまた他の生徒に疎まれる対象になる。
面倒なことになったな……。
先生は何でこんなことをするんだ?こんな明らかに出来る者と出来ない者を引き裂くようなことを……。
僕はちらりと先生の方を見る。すると、先生のその目は何かを企んでいるような大人の憎らしい目がある。
そういう事か。つまり、先生も味方ではないんだ。僕が入学したことに何かしら不満を持っている。そして試しているわけだ。
気の弱そうな先生だと思っていたが、随分と腹黒い。
中学生の頃の担任と少し似ている。思い出したらムカッ腹が立つ。
僕は煮えたぎる怒りに懸命に蓋をして言われた場所の配置についた。




