エリカ
教室は元居た世界の教室というよりは大学の講義室のような場所だった。
奥に行くほど床は高くなり、生徒全員の顔が見える。
うすうす気づいてはいたが、こうして多くの人を全体的にみると、やはりこの世界の人には目に特徴があるとよく分かる。目の色が多彩なんだ。もちろん、何の変りもない普通の黒い瞳をしている人もいるが、赤や青、黄色に緑と、様々な色がある。
そして、その中には見覚えのある銀髪で青い瞳を持った女性もいた。
「エミさん!?」
思わず声が出る。僕はてっきり、この学校ではエミさんとはあまり会うことはないと思っていた。これだけ大きな学校なら、当然エミさんと同じクラスになる確率は低いと考えたからだ。
驚いたのはエミさんも同じようで、目を丸くする。それと同時に後ろめたいような悲しいような、そんな顔もした。
教室内が少しざわめく中、ケイン先生が両手を合わせ、パチンッという音を立てて、生徒を静かにさせる。
「はい、注目ー。今日からこのクラスに入ることになった、翔君だ。ビジョンで見たという人はもう知っていると思うが、仲良くしてあげてくれ。」
席は自由らしく、ケイン先生は好きなところに座るように言う。当然ながら、僕はエミさんの近くに座ろうかと思ったが、あの顔を見た後ではとてもそんな事はできず、隣ではあったが、少し距離を置いた場所に座ることにする。
「むにゃむにゃ……。」
すぐ隣で寝起きの時のような声がする。
見ると、机の上で気持ちよさそうに居眠りをしている女子生徒がいる。
金髪で少しふんわりとした顔立ち。座っていてもエミさんよりも背が低いことは分かる。眠っているが、その手にはしっかりと黄色の宝石が埋め込まれた杖を持っていて、手にはいくつもの豆が見える。
あまりにもぐっすりと寝すぎていたので、僕はその子の体を少しゆすり、起こすことにした。
なかなか起きなかったが、少し声をかけるとその子は意外にもすぐに目を覚ました。
「むにゃ……。もう授業始まるのー?」
目をこすり、あくびをしながら伸びをする。彼女は目を開けると、緑色の綺麗な瞳が顔をのぞかせる。
何だか猫を相手にしているような気分になるが、ひとまずは挨拶をすることにした。
「えっと……、僕は翔。今日からこの学校の生徒になったんだ。よろしく。」
僕が言うと、少女は「翔?」と言い直し、僕の顔を見る。
すると、彼女は何かを察したようにニヤニヤと笑みを浮かべる。
「へぇーー、アンタがエミリーの言ってたショーっていう男の子かー。青春してるねーー。」
「???」
訳が分からない。急に何を言っているんだ?
僕が困惑していると、彼女はこう続ける。
「私はエリカ。よろしくねー。」
「エリカって……。」
その名前には聞き覚えがある。いつものエミさんの話には学校のこともいくつかあったが、そこにはエミさんの親友のことも出てきた。その人の名前が「エリカ」だ。
じゃあこの人がエミさんの親友?聞いていた話ではこの学校随一の魔術の天才という事だったが、何だかあまりにも想像と違いすぎて違和感がある。
僕は少し学校でのエミさんの様子が気になり、さりげなく聞こうとする。
だが、そのタイミングで予鈴が鳴り、僕は仕方なく授業に集中することにした。




