表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/59

新たな始まり

 朝。僕は顔を洗い、学校の制服を着る。

 制服は白い学ランに黒いズボン、赤いネクタイというデザインで、何かの物語で見たことのあるようなものだったが、実際に着ると何だか少し恥ずかしい。


 翔はエミリーの家から学校に登校することとなり、彼女と一緒に登校する。


 町は竜に破壊された建物の残骸がいまだに残っており、復興作業が進められている。

 しかし、多くの人は杖を持ち、大きな岩を浮かせたり、泥を集めたりしている。きっとこれが魔術というものなのだろう。おかげで作業スピードはかなり速く、元の世界の復興作業とは風景が著しく異なっている。


 周囲の視線が僕らに集まる。僕はエミさんの家でしばらく暮らしていたが、あまり外には出ていなかった。エミさんと一緒に外に出たあの日も結局は竜のせいで台無しになったし、こんな登校時間に男女二人で歩いていれば、注目もされる。

 エミさんは少し赤面していて、顔をうつむけている。その一方で、僕は元々こういう周囲の視線が嫌いで、眉間にしわを寄せていた。

 なんでこんなことに……。



 数日前。

「この学校の生徒って……。エミさんが通っているってことは、ここは魔術を学ぶための学校なんですよね?僕は魔術なんて使えませんけど……。」

「そう、眠っている間に調べさせてもらったけれど、あなたには魔力が一切ない。そんなこと自体が異常なんですけどね。

 にもかかわらず、あの日、あなたは確かに炎を操っていた。それがどういう理屈でできたのか、今の魔術の研究では説明がつかないの。」

 魔力?それが何なのかは分からないが人の体を勝手に調べるってどういう頭してるんだか。

「なら僕の体で実験でもするつもりですか?そんなことならお受けできませんが。」

 僕は少しイラっとして、口調を荒げる。

「いいえ、そんな非人道的な行為はこの国では禁止されています。ですが、その謎を解き明かしたいと考えている人もいるのも事実です。だから、あなたには魔術を学んでもらって、どうやって炎を操っているのかを教えてもらいたいのよ。」


 なるほど。要するに研究対象として体をいじくられたくなければ学校に通って大人しく観察されろと。

 国が禁止していることを国民全員が本当にやっていないなんて言う話があるわけがない。


 理由は何となく分かったが、何か違和感がある。

 謎を解き明かしたいと考えている人がいる?あの時、周囲には人は全くいなかったはずだ。

 エミさんが話したのか?いや、それにしても情報が正確すぎる。あの時のエミさんの立ち位置では竜の巨躯が壁になって、僕の方はあまり見えなかったはずだ。


「なぜ僕のやったことを知っている人がいるんですか?」

「なぜって……、ビジョンで見たからよ?」

「ビジョン……?」

「あれ、知らないの?」


 僕とマリアさんは互いに首をかしげる。

 もしかして、普通の人なら知っていて当然のことなのか?だとしたらまずいな……。正直、別の世界の人であることはあまり知られたくない。いろいろと面倒なことになりそうだから。


「あっ、あぁ、ビジョンね、知っていますよ、もちろん。」

「……。」

 マリアさんは答えない。流石にばれたか……?

 彼女は一つため息をつく。

「まぁいいわ。詳しいことはあえて聞かないでおいてあげる。あなたもその方がいいみたいだし。ビジョンというのは遠くにいる人たちにその場所での出来事を映像で伝えるためのものよ。言っている意味は分かる?」


 分かるというか……知ってる。それってテレビのことじゃ……。あれ、テレビって確か正式にはテレビジョンっていうんだよな。この世界ではビジョンが略称だったりするのか?


「説明してくれてありがとうございます。大体分かりました。それを通してたくさんの人たちがあの状況を見ていたわけですか。」

「そんなにたくさんでもないわ。ビジョンを持っている人はそれほど多くないもの。

 話がそれたけど、そういう事だから、できればぜひうちの学校に来てほしいのだけど……。」


 それほど悪い話でもない。僕自身もなぜ炎を操れたのかは分からないし、知っておきたい。

 懸念はある。だけど、それは克服しなければならないことだと分かっている。

 僕は少し考えたが、やはり学校に通った方がいいと思った。


「分かりました。なら学校に通います。」

 僕が答えると、マリアさんはホッとしたように肩をなでおろす。

「ありがとう。では、あなたには治療が済んでから通ってもらう事になるから、準備をしておいてね。」


 少し急な気もしたが、僕はこうして学校に通うこととなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ