6 物件探し
パーティーを脱退した次の日。
私はとりあえず首都に行き、そこで物件販売をしているお店に入った。
みんなには急がなくていいって言われたけど、のんびりしてると脱退したくない気持ちが勝つかもしれないし。
「お探しの物件は、モンスターが少ない田舎で庭が広く、古めという条件ですね? 」
「はい。……あ、もうひとつ、家の中も広めのところがいいです」
「広め……というと、どのくらいですか? 何人でお住いになるかにもよりますが。」
「一人と、うさぎを数羽飼う予定です。でも、仲間を定期的に呼ぼうと思うので、十人で暮らせるくらいの広さが理想です。古いというのは、どのくらい古くても構いません」
「分かりました、少々お待ち下さい」
私が物件に求める条件。
モンスターが少ないというのは極力戦闘は避けたいから。
田舎というのは、単純にのんびりしていそうだし、土地が広そうだから。
古めというのは私の個人的な趣味。古い洋館とか味があって素敵だと思う。
庭が広いというのは農業をするため。
かなり欲張ったけど一致する物件はあるのかな。
しばらくして、担当者の人が戻ってきた。
「数件ピックアップしてみました。こちらはいかがでしょう? 」
どれどれ。
一つ目の物件は、ここから馬車で数日かかる小さな村にある物件。
まあ、移動魔法が使えるから距離はあまり関係ない。
……あ、今は使えないのか。
築十六年で、庭も家も広い。
そして、大きな離れもあった。
……でも、四方が山に囲まれているから、ヴェーラ達は来にくいかも。
二つ目は、ここからもそこそこ近い村にある物件。
築三十年。庭と畑専用の土地があり、広い。なかなか惹かれる。
……でも、近くにダンジョンがある。
滅多にモンスターは出てこないとしても、ちょっと怖い。
三つ目は、馬車で一日ほどの場所にある、丘に建つ物件。
丘と言っても孤立している訳ではなく、近くにそこそこの規模の村がある。
築二十八年、広い庭と建てられた時からある花の庭園付き。
……なかなかいいと思う。
キープしておこう。
四つ目は、馬車で数日かかる海沿いの村にある物件。
築十三年、敷地内にプライベートビーチもある。
……こっちもキープ。
五つ目は、馬車で一週間ほどかかる湖畔の村の外れにある物件。
とにかく絶景で、築三十五年。敷地内に森があり、猟や採集なども楽しめる。
すごくいいと思う。
……でも、遠すぎる。ヴェーラ達が来にくい。
とりあえず丘と海、二件に絞った。
どっちにしよう。
「これとこれが気になっているんですが……それぞれ、価格はいくらですか? 」
「こちらの丘の家の方が三千五百万ゴールド。お買い得ですが、屋内や庭は手入れされていないので掃除しなければなりません。それを考慮しての価格です。こちらの海の家の方がブランド品の家具一式付きで一億四千万ゴールドです。一週間前に買い取ったので敷地内はとても綺麗です。」
価格の差が、ちょうど四倍。
広いからとはいえ、中古なのに高い。
これが新築だと価格は……考えるだけでも恐ろしい。
そんなにゴールドを持っているのか? と思われるかもしれないが、これでも元五つ星パーティーのメンバー。
収入は平均の十倍ほどはある。
六年しか冒険者をやっていないと言えばそうだが、それでも一生分の蓄えと家を買うお金はある。
ただ……家に一億四千万つぎ込むと今後は節約生活を余儀なくされてしまう。
決めた。
「こっちの、丘の家の方を買います。」
「わかりました。それでは契約書を持ってきますね。」
そうして契約書にサインをして、大金を支払って、私は家を手に入れた。
「ご契約ありがとうございます。それでは馬車は私達が手配致します。家の前までは馬車で移動してください。手配までお時間をいただくので、しばらくこちらでお待ち下さい。」
「はい! 」
ついに第二の人生が始まる。
数時間ほど待つと小綺麗な馬車がやってきた。
「それでは、分からないことがありましたらこちらの馭者に聞いてください。」
「はい。家探しを手伝っていただき、ありがとうございました! 」
「いえいえ。こちらこそありがとうございました。」
こうして、私は馬車で休憩を挟みながら丸一日、目的の村が見えてきた。