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5 方向転換

ミッションは無事終わり、私達はいつものように、反省のため近くのカフェに入った。


いつもならワイワイと食事をしながら反省点や改善点を言い合うのだが、今日はなんとも言えない微妙な空気が流れている。


わかっている。私のせいだ。


「えーと……とりあえず、反省会を始めようか……。」

「うん……。」


なんて言うか……気まずい。


気を使われているのを感じるし、私もどうすればいいか分からない。


……でも、自分で招いた状況なら自分でなんとかしないといけない。


「えっと……今日はごめんなさい。魔法が使えなかったことと、魔法が使えない可能性があることをみんなに伝えなかったこと。言い訳だけど、もうこれ以上心配かけたくなかったんだ。最強パーティーとして再出発するライトソードの負担になりたくなかった。……でも、今の私ははっきり言って邪魔になる。」

「ええ、そんなことないよ! モネはモネだもん、魔法が使えなくたって! 」

「ありがとうルナ。……でもね、何となく感じるんだけど、私は少なくともあと数年は戦えない気がするの。魔法も使えないし、正直戦いが怖い。」

「……それじゃあ、うちの魔法使いはどうなるんだ……? 」

「……わからない。ただ、責任は持つ。新しいメンバーは自分で探して、指導するから。」

「それじゃ……モネはライトソードを抜けるのか? 」

「…………うん。」

「「「「「「…………! 」」」」」」

「ちょっと待て……! 俺達は結成した時からこの七人だぞ!? 」

「待って待って、本当に辞めちゃうの!? やだよ! 」

「……どういうことだ? 」

「考え直してくれ! 」

「抜ける必要なんかない……。モネのことは僕達でカバーするから! 」

「そうだよ! だからこれからもこの七人で……」


こうなることは予想出来ていた。


やっぱり、抜けるのも戦うのも嫌だ。


だけど、このままでは私はただのお荷物。


この先は自分の力でどうにかしないといけない。


「ごめんね……。私、療養中から脱退は考えてたの。悩んでた。でも、魔法が使えないことが決め手になったの。私がいることでみんなが危険な目にあうなんて耐えられない。」

「そんなこと……! 」


少し前から考えていた戦えない私の第二の人生。もう冒険者はやめて、田舎でのんびりと暮らしてみたい。


パーティーで頑張ってた時期は楽しかった。でも、今のわたしは戦いがない平和な人生を送りたい。


そして、わたしは許されないことをした。


「それに……私はもう戦う資格なんてない。」


ルナをおいて逃げたこと。


そんなことをしておきながら優しさに甘えて何も無かったようにできない……!


ルナは許してくれたけど。私は自分を許すつもりはない。


「私のせいでルナは大怪我を負った……! 私はこんなことをしておきながら仲間ですなんて顔できない……。」

「モネ……」

「私は気にしてないよ! 逆に生きてること自体がモネのおかげだもん。それに、冒険者なら命を大切にして当然だよ! 」


ルナは、パーティーメンバーは、本当にいい人すぎる。


あらためて自分のした事を本気で悔やむ。


「そう言ったら俺たちにも責任がある! 二人をおいていったこと、助けられなかったこと……。」

「ううん、先頭にいたなら気づかなくて仕方が無いし。最後にいた私が助けるのが普通でしょ? それにみんなは周りの人の無事をちゃんと確認した。私と違って! 」

「…………! 」


私には戦う能力も資格もない。


このパーティーにいる能力も資格もない。


「だから、本当にごめんなさい。私は……冒険者をやめる。」

「…………。」


この期に及んで自分勝手だ。


本当に自分が嫌になる。


「……モネが決めたことなら、俺は止めない。」

「本当は一緒にいたいけど……モネの負った傷は俺達では理解できない。どんなに辛かったか。どんなに怖かったか。だから俺は止める資格を持っていない」

「わかったよ……。でも、自分を責めないで! 絶対に! 」

「モネのことは止めない。……これから、どうするの? 」


みんないい人過ぎる。


やっぱり私には勿体なさすぎだ。


「これから、私は田舎で、どこにでもいる普通の村人として生きていこうと思う。戦闘とは縁を切って。」

「……わかった。応援する。」

「モネ、俺から条件を付けさせてくれないか? 」

「条件? 」

「ああ。一つ目は、もしトラウマが治ったら冒険者としてパーティーに復帰すること。二つ目は、家の住所をパーティーメンバーに知らせて、いつでも会えるようにすること。三つ目は、元気を取り戻すこと」

「……わかった。一つ目はできるかわからないけど、二つ目三つ目は了解。」

「みんな、それでいいか? 」

「「「「「……うん。」」」」」

「じゃあ決まりだ。」

「新メンバーは俺達が探す。これ以上モネに負担を押しつけたくないからな。」

「本当に……ありがとう。」


ああ、これで私の冒険者生活は一旦終わるんだなぁ。


なんて言うか、やっぱり思い出とか感慨とかそういうのを感じる。


「みんな、今までありがとう。みんなに会えたこと、パーティーを組めたこと、本当に幸せだった。感謝してもしきれない。こんな終わり方でごめんなさい……。でも。本当にありがとうございました。」

「……そうじゃないよ! パーティーを抜けても、モネはずっと大切な仲間だから! これからもよろしくね! 」

「ルナの言う通りだ。これからもよろしくな! 」

「そうだな。今までも、これからも、ずっとモネは大切な仲間だ! 」

「その通り。僕達はずっとモネの味方だよ。」

「元気だして、いつか絶対に戻ってこいよ! 」

「そのためにも、全力で村人ライフを楽しもうな! 」


やばい。泣きそう。


…………あ、もう泣いてた……。


みんなも泣いてる。でも、そのことがすごく嬉しい。


「みんな……本当に大好き……! 」


ありがとう。感謝しかない。


こうして私の冒険者生活は、一旦幕を下ろした。

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