表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

10 うさぎ探し

私は決めた。


「……よし、うさぎを飼うぞ! 」


なんでこうなったかと言うと、単純。

モンスターが怖いので、同居人がいれば怖さが減ると思ったが、同居人はいない。なので、せめて人じゃなくても可愛いペットを飼おう、ということに自分の中でなった。

ちなみに、うさぎにしたのはうさぎが好きだからである。冒険者をしていた時、とある街でうさぎを見かけ、一目惚れした。職業柄、ペットを飼うことはできなかったが、今ならうさぎを飼える!

……しかし、壁にぶち当たった。

うさぎはどこに行けば買えるのか?

さっぱりわからない。

この村にペットを扱うお店はなかったし、近くの街のことはよくわからない。

村の人の中で詳しい人がいたら聞きたいが、私には人脈がない。

まさかの挫折。


「こんにちはモネさんっ! 今日も会えるなんて幸せです! 運命ですね! ……べ、別に、モネさんを探して村中ウロウロとかはしてませんからね!? していたとしても変に思わないでください! 」

「あ、クララちゃんこんにちは」


私の唯一の仲がいい村人、クララちゃん。

クララちゃんならうさぎを飼う方法を知っているかもしれない。

私は一筋の希望を感じてクララちゃんに聞いてみる。


「クララちゃん、急なんだけど、うさぎを売っているお店ってない? 」

「うさぎ、飼うんですか!? いいですね……私もモネさんのペットになりたいです……。って、いけないいけない、うさぎを売っているお店ですよね? 」

「うん。」

「この村にはないですね……私動物にあまり興味が無いので、近隣のお店もわかんないです」

「そっか、ありがとう」

「……あ、でも、私の友達にうさぎとか小動物を飼っている人がいるんですけど、その人に聞けばわかるかもしれません! アーシャっていうんですけど、知ってますか? 」

「ううん。その人に会ってみたいんだけど、会える? 」

「会えますよー、老木の広場の近くに住んでます! 今から行きましょう! れっつごー! 」

「ありがとう! 」


クララちゃんの案内で、メインストリートを抜け、住宅街を歩き、おおきな木のある広場を通り、茶色い屋根の大きい家……屋敷……に着いた。

クララちゃんは屋敷の大きさに驚くことなく、門の脇のベルを鳴らす。

ちょっとして、メイドさんらしき人が出てきた。


「こんにちは! クララです、アーシャいますかー? 」

「こんにちはクララ様。少々お待ち下さい、アーシャお嬢様をお呼びしてまいります。」

「ありがとうございます! 」


おお、本当にお嬢様なんだ。

驚いているとすぐに扉が開き、お嬢様、という感じの金髪碧眼美少女が出てきた。


「ごきげんようクララ。あら、そちらの方はどなた? 」

「初めまして、モネ・シルギアと申します。」

「はじめましてシルギアさん。わたくしはアーシャ・クランブと申します。よろしくお願い致しますわ。ところで今日は、どのようなご用件でいらっしゃったのかしら? 」

「あの、アーシャさんはうさぎを飼っていらっしゃるんですよね? 」

「ええ。とても可愛らしいわ。」

「私もうさぎが飼いたいんですが、どこで売っているのかわからなくて。どこで買ったか教えて頂けませんか? 」


感じのいいお嬢様でよかった。

アーシャさんは少し考える素振りをする。


「私の屋敷にはうさぎが二羽いるのだけれど、一羽は一昨年の誕生日に叔父様から頂いたので場所はわからないわ。もう一羽は……エライア村のブリーダーから引き取ったとメイドが言っていたと思うわ。」

「ほんとですか!? 」

「ええ。記憶力には自信があるの。エライア村はこの村から馬車で一週間ほどかしら。」

「一週間……」

「北東に向かって道なりに進めば着くわ。ただ、一週間の馬車移動にうさぎが耐えられるか心配ね。わたくしの時はメイドが転移魔法で連れてきてくれたのよ。」

「転移魔法ですか……」

「モネさんは転移魔法、使えないんですか? 移動の時とか、魔法使いは使うイメージあるんですけど……」

「あら、モネさんは魔法使い……つまり、冒険者なのね! 素敵だわ。魔法は魔法学校にいかないと習得できないのよね。使えるなんて羨ましいわ。」


二人とも、悪意の欠片も無い言葉だけど結構グサッとくる……。

確かに使えたらとっても便利だった。使えない今だからこそ便利さが身に染みる。

でも今は使えないんだよなぁ……。


「諸事情で、今は魔法を使えないんです。」

「まあ、それは大変ね! ですのなら、転移魔法を使えるメイドをうさぎ探しの旅に同行させてもよろしくてよ。」

「いいんですか!? 」

「もちろんよ。代わりに、二つよろしいかしら? 」

「は、はい」

「一つは、わたくしのお友達になってくれませんこと? 村長と貴族の娘という立場からか、クララ以外の人とは距離を感じてしまうの。二つは、うさぎ探しの旅にわたくしも同行させて頂きたいわ! 可愛いものは見ているだけでも癒されるのよ。」

「二つとも了解です! 」


村長と貴族の娘なんだ……道理で綺麗な言葉遣いなんだ、納得。

社交界とか大変そうだなあ。


「では、善は急げとも言うでしょう、早速うさぎを探しに行きましょう! メイドを呼んでくるわ。」

「モネさん、アーシャ、うさぎ探しの旅、私もついて行っていいですか? 」

「もちろん! クララちゃんも一緒に行こう」

「よろしくてよ。みんなで行ったほうがきっと楽しいわ。」


そう言ってアーシャさんは屋敷の奥の方に歩いていった。

今のうちに所持金の確認をしよう。……うん、このくらいあれば多分大丈夫。

ちょっとして、アーシャさんはメイドさんを連れて戻ってきた。


「お待たせしたわ。こちらは魔法学校卒のメイドのリルですわ。」

「リルと申します、よろしくお願い致します。」

「よろしくお願いします、リルさん」

「よろしくお願い致します。では、皆さん手を繋いでください。……神よ、我に力を与えたまえ。転移魔法! 」


私達は光に包まれ、光が収まったら……知らない村の入口に立っていた。

ここがエライア村らしい。ログハウス風の建物が並ぶ山の麓の村。


「到着ね。ここがエライア村ですわ。リル、案内を頼みますわ。」

「承知致しました。皆さん、こちらです」


リルさんの後をみんなと話しながらついて行くこと、十数分。

ブリーダーさんのお店は一目でわかった。

壁に可愛いうさぎの絵がペイントされていて、看板にはブリーダー・カーラと書いてある。


「目的のお店はこちらになります。」

「ありがとうリル。では、扉を開けますわよ。」


少し緊張する。

アーシャさんのあとについて、扉の中に入ると……。


「…………! 」

「いつ見ても可愛らしいわ! 」

「なにこれっ! 可愛いー!! 」


ソファとテーブルがある可愛い部屋だったが、問題は隣の部屋だった。

ガラス製の壁と扉で隔てられた隣の部屋には、可愛い……可愛すぎるうさぎが、モコモコと動き回っていた。

これはまずい、見れば見るほど可愛い。

可愛い以外の言葉が無くなるくらい可愛い。

あまりの可愛さに夢中になっていたので、近づいてきた人の気配に気づかなかった。


「いらっしゃいませ。うさぎの購入をご希望ですか? 」

「! は、はい! うさぎが欲しいです」

「では、こちらの部屋へどうぞ。気になった子がいたら言ってくださいねー」


うさぎがいるガラス張りの部屋に入った途端、数羽が足元によってきた。

か、可愛い…………!

異次元の可愛さ! 生命体の域を超えてる……!

問答無用に可愛いとしか言えない。可愛い…………。


「とても可愛らしいわ! わたくしももう一羽飼おうかしら」

「きゃーかわいい! もふもふ! ふわふわ! ひゃー」


アーシャさんとクララちゃんもうさぎの魅力にやられている。

どの子にしようかな、まず何羽飼おうかな!

部屋の中にあるソファに座ると、膝の周りにうさぎがたくさん集まってきた。膝がもふもふのパラダイス。幸せ。


「決めましたわ! もう一羽うさぎを迎えるわ! 」

「きゃーおめでとうアーシャ! どの子にする? 」

「この子にするわ! わたくし、運命を感じましたの! 」

「運命! そういうのいいね! 」

「こちらの子にしますか? 」

「ええ! 」


アーシャさんがうさぎを増やすことを決めてしまった。

私はどの子にしよう……。

一羽だと寂しいかもしれないから、少なくとも二羽はいて欲しい。

…………ん?


「すみません、この茶色い子とぶち模様の子って……」

「はい、兄弟ですよ。仲良し兄弟です」

「この子達にします」


気がついたらそう言っていた。

これが運命ってものなのか?

二羽と目が合ったと思ったら一瞬で惹かれてしまった。

今も二羽にガン見されている。


「では、こちらの子とこちらの子を引き取るんですね。」

「はい」

「では、向こうのお部屋で書類手続きとお支払いをお願いします。」


うさぎを買うために必要なもの、あげてはいけない食べ物、病気の種類、病院のサイン、その他諸々を教わり、うさぎと一緒にケージやご飯一式も購入する。

そして書類にサインして、正式に購入となった。


「そうだ、ひとつ覚えて頂きたいことがあるんですけど……」

「なんですか? 」

「買った人全員に言っているんですが、うさぎをいじめたり、違法に譲渡したり、病気を放置したりしたら許しません。まあ、直感があなたなら大丈夫と言っていますけど……」

「直感? 」

「はい。直感がアウトと判断した客はまず店に入れません。ちなみに何故か直感が外れたことは一度もないんです」

「すごいですね」

「私はうさぎとテレパシー魔法が使えるんです。お客様は、私とうさぎに認められたので多分大丈夫だとは思いますが、テレパシー魔法でうさぎからSOSが届いたらあなたの命は無いと思ってください」

「は、はい! 」

「では、お幸せに! お買い上げありがとうございます」


想像以上にうさぎ愛が凄まじいオーナーさんのお店を出て、転移魔法を使ってもらってアーシャさんの家の前に帰ってきた。

私の家族になったのは、茶色い立ち耳の子うさぎと、茶色と白のぶち模様の立ち耳子うさぎ。

絶対に大切にする!


「アーシャさんはどんな子を買ったの? 」

「わたくしは真っ白なうさぎを買いましたわ。垂れ耳に惹かれてしまったわ。」


そうして、私のうさぎライフが始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ