表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方滅界録  作者: 坂上儚月
第一章-来訪者、そして謎-
2/12

序章-呼ばれし者達-

幻想郷から突如として住人達が消えてしまう異変が起きていた。そして、その異変は想像を絶する大規模な異変だった...竜神は他の幻想郷から呼ばれし者達と会い、協力を仰いでいくのだった。

ここは幻想郷。妖怪と人間が共に住む忘れ去られし者達の最後の楽園。そしてこの幻想郷は結界で外の世界と隔離されており、普段は外の人間が入る事は無い。そう、唯一つの例外の除いては。そしてその幻想郷にある妖怪の山から幻想郷を見下ろしている若者が一人立っていた。その者は坂上竜神。紫が幻想郷に連れて来た外の世界の人間。そして一年前に起きた異変の中心人物となった者でもある。その異変の解決の際に竜神を守る為にそして幻想郷を守る為、犠牲になり死んでしまった仲間達を蘇らす為に自身の命を犠牲にし、仲間を生き返らせて自らは消滅した。しかし、幻想郷にある地獄の閻魔、四季映姫・ヤマザナドゥから幻想郷を護るように頼まれ再び生き返った。しかし、今幻想郷では更なる異変が起きていた。それは、幻想郷の住人達がなんの前触れも無く突然姿を消してしまう異変だ。最初は何処かに出掛けただけだと皆思っていたが、それが立て続けに起きたので霊夢はこれを異変だと断定した。そして今、幻想郷の住人達は最初の三分の一も消えてしまった。その中には八雲紫、八意永琳、八意永琳等の幻想郷の実力者までも消えてしまった。それを誰よりも危惧した竜神と霊夢は、同じく幻想郷に幻想入りした兄、坂上儚月の三人で調べていた。霊夢は恐らく外の世界も巻き込んだ大規模な異変だと踏み、霊夢は外の世界に居る秘封倶楽部の二人と調査を進め、竜神と儚月は幻想郷の中で調査をしていた。しかし、調査を進めても手掛かりは全く見つかっていなかった。


「くそ...手掛かりが見つからない...何故手掛かりが無い...?敵は誰だ?皆は一体何処に...?」


竜神は頭を悩ませながら山に住む天狗の住処へと向かっていった。そして、竜神は知らなかった。異変は外の世界をも巻き込み、そして別の平行世界である幻想郷も巻き込んでいる事に。そして別の幻想の者が幻想入りしている事に...



____________________________________________




「おお、来たか。強者よ。」


「どうも。禦黑ごこく、何か情報は掴めたか?」


「いや、やはり何も掴めなかった。儂は己が不甲斐ない。」


「仕方ないさ。俺ですら何も掴めてないんだからな。」


竜神は天狗の住処に辿り着き、大きな屋敷と言えるような建物の中で禦黑と呼んでいた者と話していた。傍から見れば普通に会話しているだけだが、この禦黑と呼ばれた者は妖怪の山では最強の天狗、つまりは大天狗と呼ばれる他の天狗達を纏めている存在なのだが...竜神は一度、禦黑と勝負しておりそれに勝っているのだ。なので禦黑は竜神に対して強者と呼び、竜神は禦黑と呼んでいるのだ。とどのつまりは戦友であり、親友と言う事になる。


「しかし、ここまで情報が無いのも不自然極まりない。一体何が起きておるのだ?」


「それが分かれば苦労しないさ。だからこうして俺や俺の兄貴も動いているんだ。」


「ふむ、それもそうだな。そう言えばお主の兄とやらには会った事が無いが、強いのかのぅ?」


「正直接近戦だと俺は勝った試しが無いな。」


「おお...一度戦ってみたいものだ!」


「ははは...禦黑は相変わらずの戦闘狂だな。まあ、この異変が解決出来たなら相談してみるさ。」


「それは楽しみだ。しかし、解決出来たならと言っておったが、やはりお主でもこの異変はキツいかのぅ?」


「ああ、情報も無い。敵も分からない。戦力も心もとない。正直言うと幻想郷は今一番の苦境に立たされている。」


「なんと...そこまでなのか...」


「ああ、出来れば戦力になる人材が欲しいところ何だが...この幻想郷には戦力と言える奴らが少な過ぎる。普通の妖怪共も協力するような質じゃないしな。人里の人間は死なせたくも無い。戦力は全く無いに等しいな。」


「ふむ...おお、そうじゃ。そう言えば見知らぬ者がこの妖怪の山に来ておるぞ。何やらその者、『幻想郷』から来たと言っておるが...」


「は?幻想郷から来たって...ここが幻想郷なのにか?」


「うむ、それにその者は幻想郷の住人達の事を全員知っておるようじゃった。他の天狗達のことも知っておったわい。天狗達はそ奴の事は知らないと言っておったがのぅ。」


竜神は少し考え、もしかしたらその幻想郷から来たと言っている奴が仲間になってくれるかも知れないと考え、その謎の男に会いに行くことにした。


「...よし、ちょっとそいつに会ってみるか。」


「む、その者に会うつもりか?しかし、そ奴は中々出来るようじゃぞ?」


「おいおい、誰が戦うって言ったんだよ。一度会ってそいつの事を知っておきたいだけさ。もしかしたらこの異変に関わりがあるかも知れないからな。まあ、あわよくば仲間になってくれたら戦力の増強も出来るかもしれないしな。」


「そうか。成程それも一理あるわい。」


「だろ?それで、そいつは今どこにいるんだ?」


「今は木花咲耶姫殿の所に行っておるぞ。」


「桜の所に?まあ、行ってみるしかないか。」


「うむ、ただその者はかなりクセ?と言うものが強いらしくてのう。哨戒天狗と鴉天狗達はその者を避けているらしいぞ。」


「クセが強い奴は幻想郷には多いだろう?別に避けなくても良い気がするんだが?」


「確かにそうなんじゃがな、皆はその者が破廉恥と変態行為?と言うものをするから近付きたくは無いらしいぞ。」


「あ、それは避けるな。」


「後はかなりの強者と聞いたのう。その者と戦った鴉天狗はそ奴に瞬間で倒されたらしいわい。」


「へぇ、鴉天狗を瞬殺する程のやつか。出来れば仲間になってもらいたい所だな。変態なのはどうもあれだけどな。」


「まあ、会ってみるが良い。木花咲耶姫殿のいる洞窟への入り口には椛を監視役として立たせてあるからのう。入る時は一言声を掛けてやってくれ。」


「ああ、分かった。それじゃ、行ってくるかな。」



_____________________________________________



「おーい、椛。ちょっと入らせてくれない...か?」


竜神は天狗の里を後にして、木花咲耶姫...桜のいる洞窟の場所に向かっていたが、洞窟についた時に何故か椛が殺気全開で洞窟の入り口の方を睨んでいた。


「えーと...どうしたんだ椛?」


「どうしたもこうもありませんよ...あのセクハラ野郎...絶対切り裂いてやる...!」


(あ、これはさっき話を聞いた変態行為する奴にやられたな。それにしても椛の奴、完全に性格が変わっているな...)


竜神はとりあえず殺気を放っている椛の横を静かに通り抜け、洞窟の中に入っていった。


「そう言えば桜に会うのも久しぶりな気がするな。あの異変から一年も会っていないからな。もしかしたら忘れられているかもしれないな。」


竜神は反響する洞窟の中で一人呟きながら奥に歩いていった。そして、しばらく歩いていると広めな空間に出た。そして、その空間の中心に社が建っていた。


「あれか...」


竜神は社に向かって歩いて行った。すると、近付くにつれて社の中から声が聞こえてきた。


「ん?中で話が聞こえるな...とりあえず入ってみるか。」


竜神が社の扉の前まで来て、扉を開けようとしたら中から一瞬殺気を感じて咄嗟に身を伏せると、扉が勢い良く開いて頭上スレスレで斬撃の様なものが飛んできた。


「うお!?いきなり何すんだ!」


「この場所を知っているのは妖怪の山の天狗ぐらいなんだぜ?なのに天狗以外の気配感じたらそりゃ敵と認識しないといけないだろ?」


そう言いつつ出てきたのは、見た目は二十歳ぐらいの若者だった。そして、ガタイの良い体型をしており、幾つもの修羅場を潜り抜けた者の放つ特有の気配を放っていた。


「いや確かにそうだが、相手の確認無しに攻撃するのもどうかと思うのだが?」


「悪ぃがいきなり別の『幻想郷』に連れてこられたらこう言う反応とるしか出来ないだろう?」


「ん?別の幻想郷...つー事は、お前が別の幻想郷から来たっていう奴なのか?」


「ああ、多分それは俺で間違いないぜ。んで、俺に何か用なのか?今、ここにいる神様に妖怪の山の事を隅々聞いていた所なんだが。」


「ん?妖怪の山の事を?だけど別の幻想郷から来たとは言え、そっちの幻想郷と変わらないんじゃないのか?」


「いや、それがかなり変わっている。勢力、地形、皆の住処とかな。それを把握しておかないと何かと不便になりそうだと思ってな。」


「なるほど、筋は通っているな。だが、それなら禦黑...大天狗の所で聞いた方が良いんじゃないか?」


「俺は男は好きじゃないんでな。それなら美女に聞いた方が良いだろう?」


(あ、こいつは癖が強いなんてレベルじゃないな。目を離せないレベルだな。)


「...ん?どうしたんだ?黙り込んで。」


「あー、いや。何でもない。んで、桜とは話は終わっているのか?」


「桜?ここに居るのは木花咲耶姫じゃないのか?」


「あー、その木花咲耶姫が桜なんだ。」


「へぇ...って、ん?何でお前が木花咲耶姫の事を桜って呼んでるんだ?咲耶姫ちゃんって言えば、かなりの神じゃなかったか?」


「そうなんだが...此処で話しても良いが、多分話したら一週間は掛かるぞ?」


「よし、話さなくても良いぞ。」


男は俺の言葉を聞くと即答で断った。もしかしたら相当な面倒くさがりなのかも知れない。いた、そもそも一週間も説明聞くような物好きは居ないか。


「やっぱりその反応するよな。んで、話はどうだ?」


「ああ、あと少しで終わる。所で、お前はどうするんだ?」


「俺も中で話を聞かせてもらおう。ついでに桜とも話したいからな。」


「そうか。じゃあ中に入るか。ついでに自己紹介も中でしようぜ。」


「ああ、分かった。」


そうして俺とこの謎の男と一緒に桜のいる社の中に入った。



____________________________________________




「おーい、桜。久しぶりに会いに来たぞー。」


竜神が扉から顔を出してそう言ったら、桜は嬉しそうに飛び上がった。


「あ、竜神さんじゃないですか!お久しぶりですね!」


「さっきと喋り方変わってないか!?それに態度も!?」


「まあ、気にしない方が良いぞ。これでも妖精だった時は中々大変だったからな。」


竜神が普通に桜が妖精だったと言うと男は少し驚いた感じになっていた。


「よ、妖精だった?そりゃどう言う事なんだ?」


「まあ、話すと長くなるぞ?」


「全部話さなくていいから簡潔に話してくれ。」


「簡潔に話す?さて...どうやって説明するか...」


「それなら私が説明した方がいいでしょう。」


竜神が唸っていると、桜が手助けをしてくれた。


「あー、桜頼む。俺じゃあ簡潔な説明無理だわ。」


「ふふ、一年前に貴方と一緒に行動をしていたのですよ?貴方の事はある程度理解していますよ。」


「お、一年前の事を覚えていてくれていたのか。俺は忘れているかと思っていたんだがな。」


「私が忘れるはずないじゃないですか。あの一件が無かったら私はこの姿を取り戻せてなかったのですからね。」


「...俺ってもしかして空気か...?」


「あ、スマン。すっかり忘れていた。」


「結局俺はここでも雑なのな...」


と、見るからに分りやすい感じで落ち込んだ。


「あー、だから済まないって。てか、このままじゃ話が進まないぞ?」


「ま、それもそうだな。」


「立ち直り早いですね...」


「そりゃ、向こうでもこんな扱いだったからな。慣れたぜ。」


「「慣れるな。」」


「いや何で二人同時に言うんだよ。何だか悲しくなってくるんだが?」


「何だかあんただったら良い気がしてな。てか、最初に自己紹介しないか?お互い名前を知らないと不便だからな。」


「それもそうだな。それじゃあ、まずは俺からだな。俺は時龍。種族は半人半龍。能力は三つ持ってるぜ。【創造した物を創りだす程度の能力】、【龍の力を取り込む程度の能力】、【スキマを使う程度の能力】だな。二つ名は【変態野郎】って言われているぜ。向こうじゃ結構な強さなんだぜ?」


「なるほど変態時龍か。次は俺だな。俺は坂上竜神。種族は半人半神。能力は【能力を創造する程度の能力】だ。能力を聞いたら分かるだろうが、能力の創造が出来る。お陰で能力の数を全く把握しきれてない。基本使っているのは十個の能力を使用している。二つ名は【造られし龍の化身】って言われている。まあ、この幻想郷では最強の分類に入っているみたいだ。」


「一応私も自己紹介しておきますね。私の名前は木花咲耶姫。竜神さんや一部の人達は私の事を桜と呼んでいます。能力は【破滅を司る程度の能力】と【不死を滅ぼす程度】の能力の二つです。二つ名は【時の女神】です。」


「いやちょっと待って。初っ端から変態呼びなのかよ!?てか、咲耶姫ちゃんの能力が怖すぎるんだが!?」


「ん?別に普通の能力だろ?」


「そうですよ。別におかしくは無いと思いますが?」


「...そうか。」


(あ、何考えていたか分かった。どうせ変態行為したら消されると思ったんだろうな。)


「どうしたのですか?黙り込んでしまって。」


「いや、何でもないさ。とりあえず話の続きをしようか。このままじゃ、一向に進まないぞ?」


「おっと、そうだな。それじゃあ説明頼む。」


「分かりました。まず私は一年前は能力と姿を封印され、紅魔館で妖精メイドといて働いていました。」


「封印されていた?何故だ?」


「それは今からお話します。それで私は竜神さんと紅魔館で出会い、幻想郷を回ります。しかし、幻想郷では異変が立て続けに起こると言う謎の異変が起こりました。」


「異変が立て続けに起きるのは普通じゃないのか?」


「それが普通の異変に見えて違和感のある異変だったんだ。」


「そうです。異常に異変の起きるペースが早く、そして異変を起こした者達全員が異変を起こした事を曖昧にしか覚えていなかったのです。」


「ふーん、それは確かに違和感あるな。」


「それで、異変は外の世界から来た敵によって仕組まれていた異変だった事が判明します。」


「へぇ、外の世界から来た敵ねぇ。それってあれか?結界無理矢理破って来たタイプの奴か?」


「いえ、結界を壊すこと無く入ってきました。」


「外の世界の奴ってそんな事も出来たのか?」


「いや、正確にはそいつはもともと幻想郷に住んでいた奴でな。幻想郷の入り方を知っていたんだ。」


「そりゃまた珍しいな。幻想郷の住人だった奴が外の世界に住んでいたって事なんだろ?」


「そうです。しかし、この者は過去に幻想郷を『追放された』者だったのです。」


「追放?そいつは何かしでかしたのか?」


「まあ、そうだな。しでかしていたな。」


「竜神さん。あまり思い出したくない記憶でしょう?無理に言わなくても良いですよ?」


「いや、別に問題無いさ。」


「ん?何だ。あんまり無理に話したくなかったら話さなくても良いぞ?」


「なに、そこまで変な話じゃないさ。ただ、そいつのやった事はこの俺を【造り出した】って事だけだからな。」


「お前を造った?それにしては普通に喋っているじゃないか。いや、それ以前に自我すらあるじゃないか。造られたならそういったものは一切無いはずじゃないか?」


「ま、そこは少し特殊でな。俺は自身の自我をちゃんと持っているんだ。詳しく話すと長くなるから話さないがな。」


「そうかい。てか話がズレちまったな。」


「おっといけねぇ。桜、続きを頼む。」


「分かりました。その後、敵が判明したのでそれを討伐する為に大規模な編成をして、敵陣に乗り込み何とか敵の討伐に成功はしました。しかし、幻想郷の被害はとても甚大で死者はかなりの人数が出ました。」


「へぇ、そんなに敵は強かったのか?」


「そうだな。戦死したやつらは全員幻想郷でも知られているやつらばかりだったからな。」


「どんな奴らが戦死したんだ?」


時龍はサラッと聞いてきたが、こちらとしても思い出したく無い記憶だった。その意図を組んでか、桜が代わりに言ってくれた。勿論全員言っていたらキリがないので一部だけの奴らしか言わないだろう。


「博麗神社の博麗霊夢。魔法の森の霧雨魔理沙。永遠亭の八意永琳、鈴仙、蓬莱山輝夜。紅魔館のフランドール、十六夜咲夜、紅美鈴。妖怪の山の犬走椛、河城にとり。人里の上白沢慧音。地底の古明地こいし、星熊勇儀、火焔猫燐。月の民の綿月依姫、綿月豊姫。後は森近霖之助、チルノ、竜神のお兄さん、風見幽香、八雲紫等が戦死しました。他にも沢山の人物達が戦死しましたが、これ以上言うと多くなるのでここまでです。」


「うん?ちょっと待て。数人は死んでも蘇るようなやつがいなかったか?それにお前の兄貴って奴も此処に来ているのか?」


「ああ、俺の兄貴も此処に幻想入りしている。あ、桜…」


俺はもうひとつの時龍の質問を代わりに桜に言ってもらおうと桜に頼もうとしたら、桜はまた俺の意図を組んでくれた。


「はい。さっき死んでも蘇る人がいると言いましたが、敵の能力が私と同じ能力だったので不死すらも殺されたのです。氷の妖精のチルノに関しては【雹の宝珠】と言うものを使用して、自身の能力と姿を強化して敵と戦ったのです。敵には勝ちましたが、その宝珠の代償は使用者の死なのです。その宝珠は妖精でも絶対に死んでしまうのです。」


「そうか...しかし、さっきその戦死したはずの椛ちゃんを見たが...椛ちゃんは亡霊って事になるのか?とてもそんな気配は無かったが...」


「それはですね。竜神さんが自分の命を全て犠牲にして死んだ人達を蘇らせたのです。」


「命を全て犠牲に?だけど目の前にいるじゃないか。」


話を聞いていた時龍は、その死んだ人間が目の前で普通に前の異変の説明をしている事に質問してきた。


「ああ、それは地獄の閻魔から幻想郷をまた護り続けてくれと頼まれてな。生き返らせてもらったんだ。」


「へぇ、あの閻魔が生き返らせる事なんてあるんだな。」


時龍は少し意外そうな顔をした。それはそうだろう。地獄の閻魔が死んだ人間を生き返らす事などまず有り得ないのだから。


「俺だって驚いたさ。死んだのに生き返らせてもらえるとは思わなかったからな。」


「だろうな。まさかあの堅物がねぇ...」


「そんなん言って地獄の閻魔に聞かれたら長ーい説教を食らうだろうがな。」


「さあな。そん時はさっさと逃げるだけだ。」


「逃げたら逃げたらで、捕まった時の説教恐ろしいだろうな。」


「さあな。実際は全く怖かないんだがな。だってよ、あんな見た目が少女の閻魔が怒っても気迫が殆ど無いんだぜ?」


「確かにそうですね。一度話をしてみたりもしましたが、怖いと言うよりは面白い方でしたよ?」


「...へ?桜、いつ閻魔と話をしたんだ?」


竜神は桜がサラッと閻魔と話をしていたという事に思わず聞き返した。


「えーと、確か一ヶ月ぐらい前だったかしら?まあ、世間話だけをやってすぐに帰っちゃいましたけどね。」


「何しに来てたんだ?あの閻魔は。」


「さあな。閻魔で堅物って言ったって、見かけはあの少女だからな。もしかしたら生き抜きに誰かと話したかったんじゃねぇか?ほら、あのサボりの船頭がいるからな。」


「かも知れんな。所で、俺らは何処まで話してたっけか?」


「竜神さんが命を賭して幻想郷の住人達を生き返らせて、その後は閻魔様によって再び幻想郷に生を得た所まで話しました。」


「ああ、そう言えばそうだったな。んで、その話には続きはあるのか?」


「いえ、これで終わりですね。でも、今起きている異変に関してはまだ何も言ってはいませんが。」


「ああ、それって確か幻想郷の奴らがいきなり姿消すって言う異変だったか。でもそれだけじゃあ異変にならねぇんじゃねえのか?」


「それはそうなんだが、流石に規模がデカすぎてな。現に今まで無かった他世界の幻想郷から別の人間が幻想入りしてるのもそれこそおかしい話じゃないか?」


「ま、それは確かに言えてんな。んで、どれぐらいの奴らがいなくなってるんだ?」


「今把握しているだけでも幻想郷の三分の一は消息不明になっています。その中には五大老である八雲紫も含まれています。」


「おいおい、俺の思っていた以上に結構な人数いなくなっているんじゃないか?それって相当不味いんじゃねえか?」


「物凄く不味いです。このまま行くと幻想郷のバランスが崩れて幻想郷が崩壊する可能性もあります。」


「んで、重く見た俺と霊夢と兄貴で情報収集をしているが...全く手掛かりは掴めてない。」


「あん?三人だけで調べてんのか?他の奴らは何してるんだ?」


「他の人達には現存する勢力を纏めてもらっています。敵が掴めない以上、こちらは戦力の把握をしておきたいですから。」


竜神は桜が既に他勢力を纏めていると言う事を知っているのには驚いていた。と言っても竜神自身は桜に長らく会っていなかったので桜がどこまで把握しているかは分かっていなかったが、ここまで把握していると言う事は竜神の知っている所までは全部把握しているだろう。しかし、竜神はその事を少しも顔には出さずに話を続けた。


「だが、幻想郷でも最大戦力にもなるような奴らは殆どいないからな。正直見えない敵に対処出来るか分からねぇ。」


「ふーん、相当じゃなくてめちゃくちゃ不味いんだな。だから俺を仲間にでも引き入れようとしたんだな?」


「なんだ、やっぱバレてたか。」


「そりゃな、俺の所にもあんたみたいな奴がいるからな。分かんだよ。」


「成程な。んで、仲間にはなってくれるのか?出来ればなってもらいたいんだがな。」


「そうだな...正直面倒だが、どうもこの異変解決しないと元の世界に帰れそうにも無いような気がするからな。」


「って事は、仲間になってくれるんだな?」


「ああ、なってやるよ。男とつるむのは苦手だがな。」


「本当に女好きなんだな...何なら桜も来るか?たまには外に出て体でも動かせよ。」


「私も行っていいんですか?やったー!」


「...本当性格ころころ変わるな。」


「まあ良いじゃないか。これでも戦力にすると恐ろしいんだぜ?」


「そりゃあんな能力持ってれば恐ろしいだろうな。」


「それもあるが、一番は能力無しでの破壊力の強さだな。」


「能力無しでの破壊力?どれぐらいあんだ?」


「まあ、本気の十分の一で幻想郷壊せるな。文字通り、幻想郷が崩壊しちまう。」


「強いって言うか、連れていかない方がいい気がしてきたんだが?と言う俺も人の事は言えんが。」


「大丈夫だって。桜が腕に付けているリストバンドがあるだろ?あれで力を制御しているからな。あれが外れない限りは力は出せない。」


「そうか。なら安心だな!」


(あ、力が使えないって知ったから変態行為しようと考えているな?まだ言ってないこともあるが...言わない方が良いだろうな。)


竜神は時龍が変態行為を桜にした後の事を考えて、桜にこの事は言わないようにしようと心の中で決めた。言わないで時龍が変態行為をしたらどうなるのか?勿論、ズタボロにされるでしょう。と、竜神が考えていると桜が再び心配した顔でこちらを覗き込んできた。


「えーと、また黙ってしまってどうしましたか?お腹でも痛いですか?」


「いや、何でもない。ちょっと考え事していただけだ。」


俺が桜にそう言うと、時龍がふと思い出した様に行きたい場所があると言い出した。


「おっとそうだ、ちょっくら他にも寄りたい場所があるんだが行ってもいいか?俺の他の仲間も此処に来ているんでな。」


「他にも来ていたのか?それってさっき言っていた奴のことか?そいつはどんな奴なんだ?」


「ま、簡単に言ったら戦闘バカだな。ちょっと熱が入ると没頭しちまうな。」


「あ、それなら竜神さんも一緒ですね!」


「まあ、確かにそうだな。」


「おいおい、戦闘狂が他にも居たのかよ。」


「変態には言われたくない。」


「お?なんだ挑発でもしてるのか?」


「違ぇよ。まだ戦闘狂の方がマシじゃねぇのかって意味で言ったんだよ。」


「変態のどこが悪い!?」


「「変態行為をする所から全てが悪い。」」


竜神と桜は再び同時にハモってそう言った。


「だからなんで二人してハモるんだよ!?」


「さあな。これでも長い付き合いだからな。自然と同じになるんだよ。」


「えへへ〜」


「ふーん、そりゃつまり一心同体ってやつか。」


「ま、そう言うこった。」


「あ、所でもう一人のいる場所って何処なんですか?」


「ああ、確か地獄の閻魔の所に行くって言ってたな。」


「地獄の閻魔の所にだと?一体何をしに行ったんだ?」


「さあな。それは俺も聞いてねぇから分からねぇ。」


「ま、それは向こうに行ったら分かる事だろう。とりあえずどうやってこの洞窟から出るか考えないとな。」


「え?普通に正面から出たら良いじゃないですか?」


「いやそれがちょっと出来ないんだよ。」


「何故だ?別に問題は無いと思うんだが?」


「いや、問題あるんだよ。てかあんたに一番の問題があるんだよ!」


「はあ?そりゃどう言うこった?」


「ここに来る前に椛にセクハラして来ていただろ?」


「そりゃ洞窟の前で突っ立っていたからな。軽くスカートの中を覗いただけだぜ?」


「それのせいで椛がブチ切れてんだよ!」


「スカートの中を覗いただけでキレてんのか?短気な哨戒天狗だな。」


時龍はニヤニヤしながらそう言っていた。が、時龍は知らなかった。この洞窟では「能力の一切が使用出来ない」と言う事に。何故能力の使用が出来ないかと言うと、ここは桜専用で作られた洞窟だからだ。まあ、詳しく説明するのは時間が掛かるから省く事にしますかね。(桜の能力に関係)


「あ、そうだ。そのもう一人のお仲間さんは閻魔様の所って言っていましたよね?」


「ん、ああ。そうだが?何か問題でもあるのか?」


「いえ、念の為にもう一度確認をしておきたかっただけですよ。」


「...ああ、成程な。」


「あん?何が成程なんだ?」


「いや、独り言だ。それじゃ、行くとするか。桜は持っていく物とか無いよな?」


「大丈夫です。持ち物は大天狗さんに預けていますから。」


「そうか。それじゃ、行くか。」


「そうだな。さっさと言ってあいつに色々話をしなきゃいけないしな。」


「おっと、そうだ。洞窟の中じゃ能力の類は全て使えないから気を付けとけよ。」


「...は?」


時龍は普通に驚いていた。まあ、そりゃそうだろうな。


「そんなはず無いだろ...って、マジで使えねぇ!?」


「ああ、ここは桜専用に作られた洞窟でな。それで能力は言って使えねぇんだ。」


「へぇ...此処も能力持ちの敵にとっては最悪の場所って事か...」


「ああ、と言っても俺たちも能力が使えなくなるから実質、接近戦のみ。簡単に言ったら実力勝負になるな。」


「ま、それはそれで有難いがな。俺も基本は接近戦だからな。」


「ただ一つ問題があってな...何故かは知らんが素早過ぎる技とかは使えない様になってるんだ。まあ、多分洞窟の耐久度を考えた紫が結界で制限を掛けているんだろうがな。」


「...って事は俺此処から出れるか分からねぇじゃねえか!?」


「いや、別に問題無いだろ?背中に武器背負ってるじゃねえか。」


「こいつは刃が折れてんだよ!前にあった一件で壊れたんだ!」


「じゃあ何で持ってんだよ...」


「一応壊れたと言っても愛刀だしな。それに能力を使えば刃の代わりなぞ作れるからな。」


「まあ、能力使えないこの中じゃ変えの刃は作れんだろうがな。だけど格闘も出来る様な感じはするが?」


「いや、確かに出来るが...何だか外から物凄い数の気配を感じるんだが...」


「ん?そう言えば確かにそうだな。えーと...幽香と勇儀と萃香と椛と後は他の哨戒天狗達の気配を感じるな。」


「え、何で幽香さん達も来ているのでしょうか?」


「あー、多分椛から時龍にセクハラされたのを聞かされて女の敵って事で腕利きを連れてきたな?」


「おいおい、これってもしかして俺終わったか?」


「まあ、頑張れ(棒読み)」


「嘘だろおい...」


とりあえず俺と桜は普通に正面から出ることにした。時龍は...俺達が戻ってくるまで洞窟の中で待機するだそうだ。まあ、勇儀や萃香、それに幽香辺りは普通に洞窟に入っていくだろうがな。とりあえず念仏でも唱えておくか。



_____________________________________________




洞窟から出てきて暫く森の中にある道を桜と二人で歩いていた。よく考えると、桜と二人で歩くのも久しぶりだった。桜がまだ妖精の姿の時は何度かあったが、本来の姿で一緒なのは殆ど無かった。俺が一人感傷に浸っていると、桜が時龍の心配をしているのが聞こえた。


「大丈夫でしょうか...時龍さんは...」


「まあ、多分ボコボコにされているだろうな。」


「助けなくても大丈夫なのでしょうか...」


「いいんじゃないかな。あいつ、見掛けからして結構頑丈そうだしな。」


「まあ、竜神さんがそう言うなら...」


「ま、あいつの自業自得ってやつだからな。俺達が戻るまで生きていたら助けてやるさ。」


「何だか前置きが不吉なのですが...」


「ま、気にしたら負けって事だ。」


「そうですか?じゃあ気にしないで起きますね。」


桜は本来、位の高い神なのだが...やっぱり幻想郷に住んでいる神だからなのか、それとも元の性格なのかは定かでは無いが、結構なのんびり屋さんのお人好しだ。まあ、その分やはり他の人からはかなり好かれている。その為、洞窟に桜がいる間も良く客が来ていたと聞いている。本人も神という自覚は少ないのか、他の人と接する事を好んでいるので客が来た時は喜んでいたそうだ。


「あ、そう言えば俺の渡した「神木の御剣」は使いこなせているか?」


「一応渡された武器に私の神力を宿せるようにまでは使えています。」


「お、そこまで使えていたか。なら次はその神力を斬撃として飛ばせるようにの練習を今度するか。」


先程言った神木の御剣は、前の異変の際に敵だった人物から桜に託された物だ。ただ、今その人物は異界にて旅をしているのでこの幻想郷には居ない。


「でもあまり戦いたくは無いので使いたくは無いですね…」


「その気持ちは分からんでもないが…今の幻想郷には戦力と言える戦力が十分じゃない。だからこればかりは仕方ない事なんだ。察してくれないか。」


「勿論分かっていますよ。早く終わらせてゆっくりしたいものですね。」


桜はどこか霊夢に似ている様な気がする。もしかしたら霊夢の性格が少し移ったか?


「…ま、良いか。」


「え?何がですか?」


俺は気付かないうちに口で言っていたようだった。俺も俺で誰かの性格が移ったか?


「いや、何でも無いさ。所で…気付いているか?」


「勿論です…相手は…一人ですかね?」


「だが相当な強さを持っているな…もしかしたら敵の一人かも知れん…気を付けろよ、桜…」


竜神と桜はそれぞれ武器を構えると周囲の気配を探った。すると、桜の横の草むらから一人の青年が出てきた。勿論二人はその青年は初めて見た。いや、そもそもその青年の背中には吸血鬼の羽がはえていた。しかし、レミリアとフラン以外は吸血鬼は幻想郷には居ないはずだ。だとすれば…やはり敵なのか?


「え…と、何故にそんな武器構えて今にも襲おうとしているんですか…?」


「そりゃ、あんたをこの幻想郷じゃ見た事ない奴だからだ。それに吸血鬼の羽も持っていたら尚更怪しむもんだろ?」


「幻想郷…やっぱりここは幻想郷だったのか…と言う事は僕は別の幻想郷に幻想入りしたのか…」


「何…?あんたの口振りからすると、此処を襲った敵の一人じゃないのか?」


竜神と桜は武器を下ろして青年に聞いてみた。勿論、武器を下ろしたと言っても変な行動をしたら即刻戦闘が出来るようにはしていた。


「敵も何も僕は幻想郷の住人です。ただ、この幻想郷とは別の幻想郷から来たようですが。」


「別の幻想郷…竜神さん、もしかしてこの人が時龍さんの言っていた人じゃないですか?」


桜はそう言っていたが、時龍が言っていた奴の印象とは全く違っていた。


「いや、時龍の言っていた印象と全く違う。と言う事はだ…」


「第三の幻想郷から来た人…と言う事ですか?」


「可能性は大いにあるな。全く、どうなってんだよ…」


俺と桜で悶々としていると、一人状況の掴めていない青年はこちらに質問をしてきた。


「あの…とりあえず僕は貴方の幻想郷に幻想入りしたと言う事になるんでしょうかね?」


「ああ、そうだ。多分こっちの異変に巻き込まれてしまったんだろう。」


「異変…こっちでも異変が起きているとは…」


「ん?こっちでも?そりゃ、どう言う事だ?」


目の前の青年は自身の住んでいる幻想郷に起きている異変の事を話し始めた。その内容は竜神達も驚きを隠せないものだった。そして、青年の話をきっかけに幻想郷の運命は大きく回り始める…それが、前の異変と同じく死者を出してしまう大きな…いや、大き過ぎる異変だと言うことにこの時の竜神達、更に竜神達もまだ知らない【また別の幻想郷からの訪問者達】はそれを知る由は無かった…

はい。コラボ小説は別にも書いていたのですが、どうもネタが出てこ無さすぎたので諦めて書き直す事にしました。本当色々すみませんですm(_ _)m


コラボ者様


狼天狗様


小説「東方人獣妖鬼」



もう一人出ていますが、まだ名前を明かしていないので次の小説で紹介させてもらいます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ