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魔法使いになるっ!  作者: 東メイト
第八章 天城遥(窮地)編
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第55話:理事長からの依頼

僕は魔道競技祭が終わると早々に何故か学長室に呼び出されていた。


(何かやらかしたかな?)

僕は学長室に呼び出される身に覚えがなかったため、しばらくの間、学長室の前で考え込んでしまっていた。

鴇音になら覚えがあるかもしれないが、僕はこれと言って大きな問題は起こしていないはずだった。


(今は考えるよりも用件を聞いた方が早そうだな・・・)

僕は深呼吸を整えると重苦しい学長室の扉を叩いた。


「・・・お入りなさい」

部屋の中から返事が返ってきた。


「失礼します・・・」

僕は緊張で身を強張らせながら学長室へと足を踏み入れた。


部屋の中には学園長の他に理事長と弥生先生が立っていた。


(何とも重苦しい空気だな・・・)

僕は学園長以上に存在感が半端ない理事長の雰囲気に当てられて思わず固唾を呑み込んだ。


「貴方が・・・高見澤茜さん?」

「はい・・・ぼっ・・・わ、私が高見澤茜です」

僕は重苦しい雰囲気に負けないように気を張り詰めながら質問に答えた。


「貴方のことは先生達や麗奈からよく聞かせてもらっています」

理事長は麗奈の祖母であり、彼女から僕の話を色々と聞いているようであった。


「まずは・・・そこにお掛けなさい」

理事長は校長の机の前にある椅子に腰掛けるように促してきた。


「はい・・・」

僕は言われるまま椅子に腰を掛けた。


「最初に・・・これまで学園に多大な貢献をしてくれてありがとうございました」

理事長は腰上げると唐突に頭を下げてきた。


「えっ・・・」

僕は突然の出来事に驚いた。まさか理事長直々に礼を言われるなんて思ってもみなかったからだ。


「どっ、どういうことですか?」

「貴方がこれまで我が学園に貢献してくれた数々の功績について感謝しているということです」

理事長は表情を崩すと微かに笑みを浮かべた。


「学園に貢献?」

僕は特に学園に対して貢献した覚えはなかった。


「まずは天城遥さんを立ち直らせたこと、次に魔道競技祭で勝利に導いた数々の功績、それから魔法研修で活躍したこと、そして、魔道科学者の天才である宮守鴇音さんにスカイレース部の発明を促してくれたこと・・・」

理事長はこれまでの僕の功績について淡々と語ってくれた。


最後の鴇音の功績については偶々であり、僕の功績とは言えないものであったが、とりあえず、ありがたくお褒めの言葉を頂くことにした。

正直、学園側から感謝されることは悪い気はしなかった。


「それで・・・私にそのお言葉を聞かせるため、ここに呼び出したのでしょうか?」

僕は用件を再確認した。まさか僕を褒めるだけにわざわざ学長室に呼び出したとは思えなかった。


「・・・そうですね。建前はこれくらいにして本題に入るとしましょう」

理事長は椅子に座り直すと僕に本来の目的を語り始めた。


「数々の功績を残した貴方の実績を見込んで学園から1つ頼み事があるのです・・・」

理事長は澄んだ瞳で僕の瞳を見つめてきた。

その眼差しは有無を言わせないような威圧を纏っていた。


「私に頼み事ですか?私みたいな平凡な成績の人間でよろしいのでしょうか?成績優秀者ならばもっと他に適任者がおられると思うのですが・・・。例えば、麗奈さんとか」

僕は理事長から下手な依頼を受けて目を付けられたくなかったため、とりあえず、麗奈の名前を出して牽制してみた。


「麗奈は確かに生徒としては優秀ですが、指導者としてはまだまだです。指導するのであれば貴方の方が相応しいと考えています」

理事長は首を横に振ると麗奈に任せることを否定した。


「それにあの問題だらけだった天城さんを正しく導いてくれた貴方だからこそ、この依頼を受けてもらいたいのです」

理事長は是が非でも僕に依頼をしたいようであった。


「それで・・・その頼み事とは?」

僕は諦めて理事長の願い事を聞くことにした。


「・・・ここから先の話はくれぐれも内密によろしくお願い致しますね」

理事長は依頼内容をオフレコにするように念を押してきた。


「・・・わかりました」

僕は理事長の雰囲気に圧倒されながら唾を飲み込むと覚悟を決めた。


「実は貴方には1人の生徒の面倒を見てもらいたいのです」

「生徒の面倒?」

僕はあまりに普通の内容に思わず気が抜けた声を出した。


「貴方にはその生徒が1人で魔法を扱えるようになるまでの間、面倒を見てもらいたいのです」

「そんなことで良いんですか?」

僕はわざわざオフレコにするような話でないことに疑問を感じていた。


「そんなことです。それではお願いできますね?」

理事長は畳み掛けるように僕の返答を求めてきた。


「・・・わかりました。責任を持って一人前に魔法を使えるようにしてみせます」

「良かった・・・」

理事長は僕の承諾を得ると表情を柔らかくして微かに笑みを浮かべた。


「それでは・・・お入りなさい」

「・・・承知したでござる」

理事長に声を掛けられると隣の接待室から1人の少女が入ってきた。


その少女はサファイアのような美しい青い瞳を持ち、青空を模したかのような見事なスカイブルーの髪を揺らしながら僕の前へとやって来た。その姿はまるで異国の人形のようであった。


(んっ?この娘は確か・・・)

僕はその少女に見覚えがあった。

それは魔道競技祭の格闘の競技で見た『柊霧華¨ひいらぎきりか¨』であった。


「この方の面倒を見るのですか?」

僕は目の前に現れた少女を見ながら呆然としていた。なぜならば、彼女は既に時間魔法まで操れるような人材である。

そんな少女の魔法の面倒など見る必要はないはずであった。


「何か不服ですか?」

「いえ・・・私が面倒を見なくてもこの方なら既に充分魔法が使えているのではありませんか?それに3年生の先輩ならもっと別の人に依頼された方が良いのではありませんか?」

僕は頭に浮かんだ疑問をそのまま質問した。


「その子は1年生です。それに・・・その子は魔法がほとんど使えないのです」

理事長は眉間にしわを寄せると真面目な表情を浮かべた。


「はい?」

僕は理事長の言うことが信じられずに思わず妙な声を出してしまった。


3年生だと思っていたことは勘違いだったとしても魔道競技祭の格闘であそこまで見事な戦いを繰り広げた霧華が魔法を使えないとはとても信じられなかった。


「・・・本当に魔法が使えないのですか?」

「事実です。その子は正真正銘魔法が扱えないのです」

理事長は真剣な眼差しで僕のことを見つめていた。どうやら、嘘や冗談を言っているようではなかった。


「それなら・・・どうして、彼女は魔道競技祭の格闘の競技で準決勝まで進めたのですか?魔法を使えなければ、あそこまで勝ち続けるのは不可能なはずです」

僕は疑問に感じたことをそのまま理事長に尋ねた。


「大変申し上げにくいのですが・・・それは全て彼女の力技による結果なのです」

「えっ・・・」

僕は理事長の言葉を聞いて表情を凍り付かせた。


霧華の人間離れした動きは全て魔法によるものだと思っていた。もし理事長の話が本当であるならば、彼女は魔法を使わなくても人を超えた武道の使い手だったということになる。


Y染色体を持たない女性である彼女がそこまでの使い手になるには血の滲むような修行を積み重ねてきたことを容易に想像することができた。遥の予想が見事に当たっていたのである。


「こほんっ・・・それで彼女に魔法についてご教授してほしいのですが・・・どうでしょうか?」

理事長は固まる僕に対して咳払いをすると同意を求めてきた。もちろん、僕には拒否権など存在しなかった。


(僕にこの子を導くことができるだろうか・・・何にせよ。引き受けてしまった以上はやるしかないか・・・)

僕は覚悟を決めると口を開いた。


「わかりました。私にお任せください」

「そうですか。それではよろしくお願いしますね」

理事長は満面の笑みを浮かべると僕に霧華のことを一任した。


「師匠っ。よろしく頼むでござるっ」

霧華は僕の前にやって来ると元気良く挨拶してきた。


「こちらこそ、よろしくお願いしますね・・・霧華さん」

僕は手を差し出すと霧華と握手を交わした。


こうして僕は霧華の面倒を見ることになった。

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