第40話:部活動(物理研究部編)
「・・・ここがそうなの?」
遥は僕がある部室の前で足を止めると不思議そうに首を傾げた。
「そうです。この部屋の中に僕達が会わなければならない人物がいます」
「でも、この部活って・・・」
遥は部室の名前を見て戸惑っていた。
僕達が訪ねた部活は『物理研究部』であった。魔法とは最もかけ離れた部活である。
「確かに物理の法則なんて魔法には全く適さない知識ですが・・・魔法を物理に取り入れようとしている研究はどこでも行われています」
水力発電や太陽光発電、風力発電のように自然のエネルギーを電気に変えて都市エネルギーに利用しているように魔法のエネルギーを何らかのエネルギーに変えて利用する物理学・・・その名も『魔法工学』である。
この藤白波学園でもそんな研究も行われていた。
「この部活であれば、きっと魔道エンジンについても研究されているはずです・・・」
僕は物理研究部の扉を叩くと中から人が出てくるのを待った。
「はい?どちら様でしょうか?」
僕達が部室の外で待っていると部屋の中から部員らしき生徒が顔を出してきた。
「あの・・・あなたが『宮守鴇音¨みやもりときね¨』さんですか?」
僕は顔を出した女子生徒に名前を確認した。
「鴇音先輩ですか?」
女子生徒は目を丸くさせると首を傾げていた。どうやら彼女は鴇音ではないようであった。
「すみません。私達、宮守さんに会いに来ました」
僕は目の前の人物が会いたかった者でないことを知ると再び鴇音の所在について確認した。
「そうでしたか。・・・それではこちらへ」
女子生徒は僕達を部室の中へと招き入れると鴇音の下まで案内してくれた。
部室の中には何やら怪しげな装置が所狭しと並べられていた。
「鴇音先輩、先輩にお客さんが来ましたよ」
「・・・客?」
鴇音はパソコンの前で何やら実験のシミュレーションを確認していた。
「あなた達は?」
鴇音はこちらに視線を向けて怪訝そうな表情を浮かべると僕達の素性について確認してきた。
「私は・・・高見澤茜と言います」
僕は鴇音の目の前に立つと自己紹介をした。
「あたしの名前は天城遥って言うの。よろしくね」
遥は後ろから僕を押し退けると鴇音に手を差し出した。
「天城遥?・・・ああ、あなたがあの人間大砲の・・・」
鴇音は遥の名前を聞くと目の前の人物が誰なのかをはっきりと理解したようであった。
まぁ、遥が見せた障害物競走での荒技は確実に観客の視線を釘付けにさせていた。記憶に残っていても不思議ではなかった。
「それで?私に何か用かしら?」
鴇音は眼鏡の汚れを近くにあった布で拭うと僕達に用件を尋ねてきた。
「実は・・・あなたにお願いがありまして・・・」
僕は遥を押し退けると再び鴇音の目の前へと歩みでた。
「私にお願い?」
鴇音は僕の方に視線を向けると眉をひそませた。
「はい・・・魔道エンジンについてご教授してほしくて」
「魔道エンジン?・・・ああ、あの魔法を使うやつね」
鴇音は魔道エンジンについて思い当たると軽く手を叩いた。
「別にそんなのいくらでも教えてあげるわよ」
鴇音は口許を緩めると余裕の表情を浮かべた。
「本当ですかっ。それなら・・・」
僕は鴇音の返答に表情を明るくさせるとすぐさま魔道エンジンについて質問しようとした。
「ストップっ」
鴇音は僕の唇に人差し指を当てると口を噤ませた。
「むぐっ」
僕は鴇音のいきなりの行動に目を白黒させた。
「交換条件があるの」
鴇音は魔道エンジンについて教えるに当たって交換条件を出してきた。
「交換条件ですか?」
僕は予想外の鴇音の申し出に眉を吊り下げた。
まさか彼女が交換条件を持ち出してくるなど思ってもみなかった。
「駄目かしら?」
鴇音は僕の顔色を探るように僕の目を凝視してきた。
「・・・内容にもよりますが、どんな条件でしょうか?」
僕は鴇音の条件について確認した。
「私が出す条件は2つ」
「2つですか・・・」
僕は割に合わない条件の数に眉をひそませた。
「別にそんな怖い顔しなくても・・・大した条件ではないわ」
鴇音は警戒する僕に身構えないように促してきた。
「1つ目の条件はこれよ・・・」
鴇音は机の引き出しから何やら用紙を取り出すとそれを僕達に提示してきた。
「これに名前を書いてほしいの」
「物理研究部の・・・入部届け?」
僕は突然持ち出された入部届けに目を点にさせた。
「この部活は今必要最小限の人数でやっていてね。とりあえず、名前だけでもいいから入部してほしいのよ」
鴇音は物理研究部の厳しい現状を訴えると僕達に幽霊部員になるように勧誘してきた。
魔法使いの学校では物理研究部は全く人気がないようであった。
ちなみに複数の部活に所属することは認められているため、スカイレース部との掛け持ちは可能である。
「別にそれくらいなら構いませんが・・・」
僕はあまりに簡単な交換条件に少々拍子抜けしていた。
「それでもう1つの条件とは何ですか?」
僕は2つ目の条件について確認した。
「その質問に答える前に・・・これを掴んでもらえるかしら?」
鴇音は何やら怪しげな装置を取り出すとそれを遥の方に向けた。
その装置は豆電球のように薄いガラスの管の中に銀色の物体があり、その両端には手を握り締めるグリップのような物が付いていた。そして、その両端からは何やら配線のようなものが伸びていた。
「あたしが掴めばいいの?」
遥は鴇音のいきなりの行動に目を点にさせていた。
「そう・・・この装置の真ん中にある物体を形状魔法でこれから指示する形に変えてくれる?」
鴇音は怪しげな装置の両端から伸びている配線をモニターに繋げると遥に装置の真ん中にある銀色の物体を変形させるように要求してきた。
「最初はどんな形にすればいい?」
遥は鴇音に渡された装置のグリップ部分を握り締めると彼女の指示を仰いだ。
「そうね・・・まずはこの形」
鴇音は引き出しの中に入っていた様々な形が書かれているカードを取り出すとそれを遥に見せた。
「最初は・・・丸形ね」
遥は鴇音の指示通りに真ん中の物体を丸く変形させた。
「ふむふむ・・・次はこれ」
鴇音は遥が丸形に変形させると今度は星形に変形させるように指示を出した。
「よいしょっと・・・」
遥は鴇音の指示通りに星形に変形させた。
「次はこれ・・・」
鴇音は星形の次はハート形、四角形、六角形と様々な形に変形させるように命令してきた。
「・・・やっぱりね」
鴇音は遥に渡した装置が繋がれているモニターを見ながら何度も首を縦に振っていた。
そして、全ての工程が終了すると納得したような表情を浮かべた。
「こんなことをして一体何になるというの?」
遥は鴇音の意図が掴めずに眉をひそませていた。
僕も彼女が何をしているのかよくわからなかった。
「これ?これはね・・・あなたの魔力の強さと適正値を計測する装置よ」
「あたしの魔力の強さと適正値?」
遥は意味がわからなそうに首を斜めに傾げた。
「その装置でそんなことがわかるんですか?」
僕は反応の薄い遥の代わりに驚きの声を漏らした。
まさか個人の魔力の強さを計測する装置があるなど聞いたことがなかった。
「ええ、この装置の中心の物体に掛かっている圧力と物体が変化するまでの時間を計測することで個人の持っている魔力の強さと魔法の適正値を計ることができるの」
鴇音は遥に持たせた装置について丁寧に説明してくれた。
「それで・・・その結果はどうでしたか?」
僕は鴇音に遥の計測結果について尋ねた。
「そうね・・彼女はとても強い魔力を持っているようね。普通の人が250くらいに対して彼女の値は700と出ているわ」
鴇音はモニターに映し出された結果について淡々と読み上げた。
「あなた・・・X染色体を3つ持っているじゃなくて?」
鴇音は装置の計測結果から遥がトリプルエックス染色体の持ち主であることを見事に見抜いた。
「そうらしいわね」
遥は鴇音の質問に対して首を縦に振った。
「ただ・・・魔法の適正値の方は低いわね。魔法を器用に使うのはあまり得意じゃないみたいね」
鴇音はの言うとおり、遥は細かな魔法の制御があまり得意ではなかった。それは彼女の強すぎる魔法の素質ゆえの問題であった。
「そんなことまでわかるんですか?」
僕は鴇音の的確な分析に驚きの声を上げた。
「まぁね。データは嘘を吐かないから・・・」
鴇音は満足そうな笑みを浮かべると誇らしげに両腕を組んだ。
「あなたも試してみる?」
鴇音は興味津々な様子で装置を眺める僕に遥と同じように使ってみることを提案してきた。
「いいんですか?」
僕は鴇音の提案に嬉しそうに声を弾ませた。
「少しでも多くの人間のサンプルを取りたいからね」
鴇音は遥に渡していた装置を僕に渡すと遥と同様の確認を行った。
変形させる形についてはカードをシャフルしてその順番をランダムにしている。
「なるほどね・・・」
鴇音は全ての工程を終わらせると微かに口許を緩ませた。
「何か・・・わかりましたか?」
僕は鴇音の分析結果を心臓の音を高鳴らせながら待っていた。
「色々とね・・・あなたの方は普通の人よりも魔力が弱いようね。魔力の強さは200と出ている」
鴇音はモニターの計測結果から僕が他の人よりも魔力が弱いことを見抜いてきた。
僕はY染色体が混じっている分、他の人達よりもX染色体を共鳴させるのが難しい状況になっていた。そのため、魔力の強さはそれほど強くはなかった。
「だけど・・・魔力の適正値の方はかなり高いわね。あなたは魔法を使うのに対してほとんど無駄な動作がないみたいね」
僕は他の生徒達よりも弱い魔力で魔法を発動させなければならなかったため、常に最も効率的な方法で魔法を発動させていた。
その答えにたどり着くために僕は何度も魔法の反復練習を行いながらその感覚を研ぎ澄ませてきたのである。
「その通りです・・・」
僕は鴇音の話を聞いて彼女が本物の天才であることを確信した。
「なかなか興味深いサンプルのようで良かったわ。これならば貴重なデータをたくさん取れそうね」
鴇音は嬉しそうに声を弾ませると不気味に眼鏡を輝かせた。どうやら僕達は彼女に気に入られたようであった。
「サンプル?・・・つまり、それは私達にあなたの実験体になれということですか?」
「そう・・・それが2つ目の条件。あなた達には今のように私が作った装置を使用して、その効果について色々とモニタリングしてほしいの」
鴇音は自らが作った魔法を組み込んだ装置を僕達に試してもらいたかったようであった。
「私は構いませんが・・・」
僕は遥の方に視線を向けた。
僕だけでなく彼女も対象になるのであれば僕だけの一存では決められなかった。
「別に構わないわよ。それで魔道エンジンについて教えてもらえるなら」
遥は全く気にしていない様子で鴇音の要求を了承した。
「それじゃ、交渉成立ということで・・・」
鴇音は交渉が纏まると僕達に手を差し伸べてきた。
「よろしくお願いします」
僕は差し出された鴇音の手を優しく握り締めた。
「よろしくね」
遥も僕の後から前へ出てくると鴇音の手を握り締めた。
「一応うちの部員を紹介しておくわね、菊花っ」
鴇音は右手を高く上げると先程接客してくれた女子生徒を呼び寄せた。
「この子は『星島菊花¨ほしじまきっか¨』と言うの」
「初めまして、星島菊花と言います」
菊花は鴇音に紹介されると恥ずかしそうに身体を震わせながら視線を下に向けていた。
(何か・・・恥じらいがあって可愛い子だな。遥さんにもこんな恥じらいが少しでもあればな・・・)
僕は恥じらう菊花を見て思わず口許を緩ませた。
「菊花は私達よりも1つ年下の後輩になるわ。くれぐれも手を出さないようにね」
鴇音はしまりのない顔で菊花を見つめる僕に対して釘を刺してきた。
「そんなこと・・・しませんよ」
僕は苦笑いを浮かべると両手を軽く横に振った。
「そう?ならいいんだけど・・・」
鴇音は僕に疑いの眼差しを向けたまま不敵な笑みを浮かべた。
「あとはもう1人・・・『吉岡結衣¨よしおかゆい¨』と言う部員がいるわ」
鴇音は部室の奥の方を指差すとそこには黙々とパソコンを動かす結衣の姿が見えた。
「彼女は人見知りで無口な性格だから自己紹介は省かせてもらうわね。ちなみに学年は菊花と同じ1年生よ」
「それでは・・・今度はこちらから」
僕は菊花達の紹介が終わると再び自分の紹介を始めた。
「私の名前は・・・高見澤茜と言います。これからよろしくお願いしますね」
僕は優しく微笑むと菊花の方に手を伸ばした。
「・・・よろしくお願いします」
菊花は頬を赤らめながら僕の手を握り締めた。
「次はあたしの番ね。あたしは天城遥って言うの。よろしくね」
遥は無邪気な笑顔を浮かべながら菊花に手を差し出した。
「・・・よろしくお願いします」
菊花は僕から手を離すと今度は遥の手を握り締めた。
「とりあえず、これであなた達も物理研究部の一員ね。それじゃ、入部届けを職員室に出してきてもらえるかしら」
鴇音は僕達の自己紹介が終わると入部届けを出してくるように促してきた。
「わかりました。それでは戻ってきたら魔道エンジンについて教えてくださいね」
僕は鴇音に交換条件について念を押すと遥を連れて部室を後にした。
「これで魔道エンジンの方は何とかなりそうですね」
「それはいいんだけど・・・」
遥は怪訝そうな表情を浮かべたまま僕の顔を凝視してきた。
何やら彼女は僕に聞きたいことがあるようであった。
「なんですか?」
「茜はどうして宮守さんのことを知っていたの?」
遥は僕が鴇音のことを知っていたことが不思議なようであった。
「彼女のことはテストの結果で何度も見ていましたからね」
鴇音の名前は中学の全国模試の頃から何度も見てきたのでその存在を知っていた。
特に彼女の数学と理科は常に満点に近い点数で常に1位の座を譲らなかった。
他の科目のおかげで僕は何とか彼女の成績を抜くことをできたが、理数科目だけならばあの麗奈ですら敵わなかっただろう。
「あとはクラスの中でも結構噂になっていましたから」
鴇音は1年生の頃から物理研究部を立ち上げるため、あちらこちらの生徒に声を掛けており、変わり者として有名であった。
結局、魔法使いの高校では物理研究部は嫌われる傾向が強く、しかも大半の生徒がスカイレース部の1本に絞るため、ほとんど部員は集められなかったようであった。
「そうなんだ・・・」
遥は不思議そうに首を斜めに傾げた。
彼女は学校の成績を上げるのに必死で鴇音の噂まで頭に入れている余裕がなかったようであった。
「とりあえず、さっさと用事を済ませて部室に戻りましょう」
僕は遥を急かすと職員室に行って弥生先生に物理研究部の入部届けを出してきた。
「・・・お帰りなさい」
僕達が物理研究部に戻ってくると鴇音は何やら設計図らしき物を何枚か並べていた。
「それらは?」
「これはあなた達がお望みの魔道エンジンの設計図よ」
鴇音は僕達が職員室に行っている間に何種類かの魔道エンジンの設計図について用意してくれていた。
「それで・・・あなた達が作りたい魔道エンジンはどれかしら?」
「えっと・・・」
僕は鴇音の用意してくれた魔道エンジンの設計図に目を通した。
(・・・何が書いてあるのか・・・僕にはよくわからない)
鴇音が用意してくれた設計図には難しい計算式やら専門用語が散りばめられており、内容を理解するだけでも相当の時間を要しそうであった。
「すみません。ちょっとぱっと見にはわかりづらいので簡単に説明してもらってもいいですか?」
「・・・仕方がないわね」
鴇音は怪訝そうな表情を浮かべていたが、僕の隣に移動すると各魔道エンジンについて説明を始めた。
「まずは魔道エンジンといえども動力として使われる魔法は形状魔法と重力魔法のいずれかになるわ。あなたはどちらのタイプのエンジンを作りたいの?」
鴇音は魔道エンジンについて大雑把に2つの種類に分類した。
「そうですね・・・強い魔力で瞬時にスピードが上げられるタイプの魔道エンジンがほしいので重力魔法タイプのエンジンですかね?」
僕は鴇音の顔色を窺いながら遥の素質に合ったエンジンを提案した。
「そうね。出力を一気に上げたいのならば断然重力魔法タイプの魔道エンジンね。その条件ならば・・・」
鴇音は机に広げていた設計図を2枚に絞り込むと説明を続けた。
「とりあえず、圧力素子を使ったタイプのこのエンジンか、それともリニアタイプのこのエンジンかのどちらかね」
「圧力素子?」
僕は初めて耳にする用語に首を傾げた。
「簡単に説明すると・・・圧力を掛けると電気を発生させることができる素子のことね。この素子に重力魔法を掛けることで爆発的な推進力を得られるのよ」
「なるほど・・・」
僕は鴇音のわかりやすい説明に首を縦に振った。
「それじゃ、このリニアタイプというのは?」
「リニアタイプは電極のS極とN極を交互に変化させることでタービンを動かすタイプのエンジンね。リニアモーターカーの知識くらいは知っているわよね?」
鴇音は僕の理解度を試すように顔色を窺っていた。
「それくらいなら解ります」
僕は余裕の表情を浮かべると自信満々に胸を張った。
「それなら詳しい説明は省くわね」
鴇音は僕の様子を確認すると話を進めた。
「それでどちらのタイプの魔道エンジンを作りたいの?」
「そうですね・・・」
僕は細かな魔法作業が苦手な遥にはなるべく1つの魔法を掛け続けられるタイプの魔道エンジンの方が良いと判断して圧力素子タイプの魔道エンジンを選択することにした。
「圧力素子タイプの魔道エンジンでお願いします」
「それなら・・・こちらの設計図ね」
鴇音はリニアタイプの設計図を横にずらして地面に落とすと圧力素子タイプの魔道エンジンの設計図を全面に広げた。
「それじゃ、早速・・・」
鴇音は魔道エンジンのタイプが決まるとすぐさまエンジンの説明を始めようとした。
「ちょっ・・・ちょっと待ってください」
僕は事を急ごうとする鴇音に待つようにお願いした。
さすがに今からこの設計図を説明されても理解できる自信がなかった。そのため、じっくりと時間を掛ける必要があった。
「今日はもう遅いので明日からでいいですか?」
僕は部室に掛けられた時計の方に視線をやると鴇音に現在の時刻を認識させた。
時計の短針は夕方の6時を指そうとしていた。
「・・・そうね。そろそろ寮に戻った方が良さそうね」
鴇音は状況を理解すると僕の提案を受け入れてくれた。
(・・・良かった。こんな設計図をいきなり説明されなくて・・・)
僕は鴇音が素直に応じてくれて胸を撫で下ろした。
まさかこんな本格的な設計図をいきなり持ち出されるとは思ってもみなかった。
「それでは明日からよろしくお願いしますね」
僕は口許を緩めると営業スマイルを浮かべた。
「こちらこそ・・・よろしくね」
鴇音は眼鏡を光らせると不敵な笑みを浮かべた。
(一体僕達はどんな実験をさせられるのだろうか・・・)
僕は鴇音の笑みに不安を感じずにはいられなかった。
(まぁ、今は遥さんの箒を作ることだけに専念しよう)
僕は気持ちを切り替えると遥と一緒に寮へと戻っていった。




