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魔法使いになるっ!  作者: 東メイト
第二章 天城遥編
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第11話:アルバイト!?

「あれが・・・海か・・・」

僕は初めて目にする海の大きさに感動を覚えていた。僕はずっと内陸で過ごしてきたため、実際に海を見るのは今回が初めてであった。


「何を固まっているのよ」

僕が海の美しさに魅了されていると後ろから遥が背中を押してきた。


「ごめんなさい・・・海を見るのは初めてで・・・」

僕は素直な気持ちを遥に伝えた。


「とんだ田舎者ね」

遥は呆れた表情を浮かべると僕をからかうように両手を広げて首を横に振った。


(旭川暮らしの遥さんに言われたくないな・・・)

僕は自分よりも田舎に住む遥に小馬鹿にされて心の中で毒づいた。


「何か言いたそうね?」

遥は僕の心の声に敏感に反応した。


「何でもないです・・・。それよりも遥さんは海を見たことがあるんですか?」

僕はその場の雰囲気をはぐらかすように遥の話題について話を振った。


「あるわよ。海で何度もバイトしたことがあるから」

遥は海の家で何度もバイトをしていたため、海を見ることには慣れていた。


「さすがは遥さんですね」

「当然よっ」

遥は得意気に鼻を上に向けた。


「早く宿泊先に向かうわよ」

遥は僕を急かすと近くの民宿へと移動した。


「よく来てくれたね。これからしばらくの間、お世話になるよ」

僕達が宿泊先に到着すると早々に民宿の店主らしき人が出迎えてくれた。


(お世話になる?お世話になるのは僕達の方なのでは?)

僕は店主の台詞に疑問を感じていた。


「こちらこそ、よろしくお願いします」

遥は戸惑う僕に構わず眩しい笑顔を浮かべると店主と固い握手を交わした。


「早速で悪いんだけど・・・」

「大丈夫です。直ぐに向かいますので・・・」

遥は店主とアイコンタクトを交わすと僕の方に振り向いた。


「荷物を置いたら直ぐに水着に着替えて」

「どういうことですか?」

僕は何が何やら訳がわからないまま遥達の遣り取りを見守っていた。


「あれ?言ってなかった?あたし達はこの民宿で5日住み込みのバイトに来たのよ」

「えええ」

僕は寝耳に水な遥の発言に驚きの声を上げた。


バイトに来るなど一言も聞いていない。まぁ、普通に考えてみれば水着を買うのも躊躇っている遥がただ海に遊びに来るはずがなかった。彼女は最初から夏休みをバイト漬けにする予定であった。


「さっさと準備を済ませて浜辺に向かうわよ」

遥は唖然とする僕のお尻を勢いよく叩くと宿の中へと移動した。


「やれやれ・・・」

僕は溜息を吐くと遥の後ろを追いかけた。


「ここがあなた達の部屋よ。よろしく頼むわね」

宿の女中に案内されて僕達は住み込み用の部屋に案内された。その部屋は2人が寝るのが精一杯の広さで部屋の半分には二段ベッドが置かれていた。


「よいしょっとっ」

遥は部屋の狭さを気にせずに二段ベッドの上に自分の荷物を投げ入れるとそのまま上段ベッドへとよじ登った。


「あの・・・遥さん、部屋が1つしかないのですが・・・」

「それがどうかしたの?」

遥は何の疑問も待っていない様子で自らの上着を脱ぎ始めた。


「僕は男ですよ」

「知ってるけど?何か問題ある?」

「大有りですよ。仮にも男女がこんな狭い部屋の中で一夜を共に過ごすなんて・・・」

僕は男性に対して危機感の薄い遥に男の危険性について注意した。


「別にいいじゃない。普段から同じ部屋の中で生活してるんだから」

「確かにそうですが・・・寮の部屋の広さと違いがありすぎます」

「あたしは気にしないわよ。それよりも早く水着に着替えたら?」

遥はまるで僕のことを男と思っていないようであった。


(遥さんが良くても僕は良くないんだけど・・・)

僕は全く動じない遥に呆気を取られながらベッドの下段に潜り込むと水着に着替え始めた。


(この上では遥さんが着替えをしているんだよな・・・)

当然遥の着替えを覗くつもりは全くなかったが、男としては何となくそんな妄想が頭の中を過ぎっていた。


(いやっ、いやっ、相手は遥さんだぞっ)

僕は必死で頭の中の妄想を掻き消しながら雑念を取り払った。


「どう?着替えは終わった?」

遥はベッドの上段から唐突に顔を覗かせた。


「ちょっ・・・ちょっと待ってくださいっ」

僕は胸の部分の着替えが終わっていなかったため、慌てて胸の部分の水着を引っ張り上げた。


「へぇ・・・よく似合っているじゃない」

遥はベッドの上段から飛び降りると僕の水着姿をまざまざと見つめてきた。


「・・・ありがとうございます」

僕は遥に見つめられて恥ずかしそうに腰を小刻みに震わせた。


「遥さんこそ・・・綺麗ですよ」

「ばっ・・・馬鹿じゃないっ。あたしに水着が似合うことは当然のことよ」

遥は顔を真っ赤に染めると照れ隠しをするように語気を荒げた。


「それじゃ、行くわよっ」

「待ってください・・・」

僕は水着姿のままで外を出歩くのが恥ずかしかったため、白いTシャツを一枚羽織った。そして、遥の後を追いかけて浜辺へと向かった。


「このお店のようね?」

遥は何とも形容しがたい建物の前で立ち止まると躊躇なくその建物の中へと入って行った。

建物の中は活気のない商店街のように閑古鳥が鳴いていた。


「想像以上ね・・・」

遥はキッチン周りの様子を確認すると水道や調理器具の点検を始めた。


「遥さん、勝手にお店に入り込んだりして大丈夫なんですか?」

僕は不安を隠しきれない様子で遥に訊ねた。


「問題ないわ。お店のオーナーからは好きに使っていいと言われているから」

遥は物怖じする様子がなく手慣れた様子で海の家の準備を始めた。


「それじゃ、あんたは浜辺でお客様を集めてきて。あたしは料理を作る準備を始めるから」

遥は冷蔵庫の中の食材を確認すると作れそうなメニューを書き出し始めた。


「えっと・・・」

僕は遥の無茶振りに困惑していた。

中学の頃から勉強一筋でバイトなんてほとんど経験がなかった。そんな僕にいきなり客を集めて来いとは何ともハードルの高い指示であった。


「どうかしたの?」

僕が固まっていると遥は不思議そうな顔で首を傾げた。


「どうかしたも何も僕はどうすればいいんですか?」

僕は客を寄せる方法など全くわからなかった。


「この看板を持って浜辺で美人なウェイターが待ってますって何時ものように愛敬を振り撒いてくればいいだけよ」

遥はいとも簡単そうに言い放ったが、人から注目を浴びたくない僕がそんな軽薄なことを人前で簡単に言えるはずがなかった。


「本気ですか?」

「本気よ。それともあんたがここで料理の下拵えをする?」

僕は家事全般を全て母親任せであったため、全くといっていいほど料理も駄目であった。


「遥さんは料理ができるんですか?」

僕は女の子らしくない遥しか見たことがなかったため、正直、彼女が料理を作る姿など全く想像できなかった。


「ふ~ふん」

遥は余裕な笑みを浮かべると冷蔵庫からキャベツを取り出した。


「これを見ても・・・まだそんな口が叩けるかしら?」

遥はキャベツを宙に投げるとそのまま空中でキャベツを二つに切って、それを瞬く間に千切りにしてみせた。

その様子はとても目で追えないほどの早さであった。彼女は中学に上がる前から教会の弟や妹達の面倒を見てきたため、家事全般を得意としていた。


「まさか・・・遥さんにこんな特技があったなんて・・・」

僕は動揺を隠し切れずにその場で膝と手を突いた。何とも言えない敗北感であった。


「もう四の五の言ってないでさっさと行って来なさいっ。これは命令よっ」

僕がショックを受けていると遥は痺れを切らして怒鳴り声を上げた。


「・・・わかりました」

僕は遥に命令されると諦めて看板を手にした。僕には彼女の命令に逆らえない理由があった。


(やれやれ・・・どうしたのものか・・・)

僕は客寄せの方法を考えながら浜辺へと向かった。


「浜辺には着いたけど・・・」

僕の頭の中には良いアイディアが浮かんでいなかった。


「どうしたの、彼女?何かお困りかな?」

僕が眉を潜めて困った表情を浮かべていると唐突に体格のいい3人の男性達が話し掛けてきた。


「あ・・・あの・・・」

僕は突然話しかけられてどう反応していいのか、わからずに言葉を詰まらせた。


「悩み事なら僕らに任せておきなよ」

男達は白い歯を輝かせると片目を閉じてウィンクしてきた。


(・・・これは使えるかも)

僕は下心丸出しなこの男達を使って客を集める方法を思い付いた。


「実は・・・この先にある海の家で働いているのですが・・・あまり、お客様が集まらなくて・・・」

僕は悲しそうに瞳を潤ませるとかよわい女の子のような仕草を振る舞った。


「そういうことなら・・・俺達に任せておけよっ」

僕の振る舞いは男達にやる気を出させるのに充分であった。


「本当ですかっ。お願いしますっ」

僕は表情を明るくさせると嬉しそうに眩しい笑顔を浮かべた。


(男って・・・本当にちょろい生き物なのかもしれない・・・)

僕は同じ男でありながら素直に何でも言うことを聞いてくれる男達を見て男性とは実に単純な生き物であると感じていた。


こうして男達の力を借りて僕は何とか客を集めることに成功した。


(そろそろお店の方に戻った方がいいかな?)

僕はある程度客を集めると店の方が心配になってきた。


「あの・・・」

「どうかしたのかい?」

僕が声を出すと男達は直ぐに反応して僕の所へと集まってきた。


「そろそろ、お店の方が・・・」

「そうだね。これだけ客に声を掛けたんだからお店の方がパンクしているかもしれないね」

「それじゃ、ここは俺達に任せて君はお店に戻りなよ」

「俺達は引き続きここで客を集めておくからさ」

男達は僕が全て話さずとも僕の意図を理解してくれた。


「ありがとうございます・・・」

(この人達って・・・本当に優しい人達だったんだな・・・)

僕はこんな優しい人達のことを利用しようと考えていたことがとても申し訳なく思えた。


「それじゃ、よろしくお願いしますね」

僕は柔らかく表情を緩めると男達に優しい笑顔を浮かべて精一杯の感謝を示した。


「・・・任せときなっ」

男達は一瞬の間を置いた後に慌てて決め顔を作り上げた。僕はその場を彼らに任せると店の方に顔を出した。


「ただいま・・・」

僕は先程とは一転して活気に溢れている店の雰囲気に言葉を詰まらせた。店の中には客が溢れ返っており、大繁盛していた。


「お帰りなさいっ。丁度良かったわ。あんたもオーダー取るのを手伝って・・・」

遥は両手に注文されたメニューを抱えたまま僕に次の指示を出した。


(遥さんって・・・本当に人使いが荒いな・・・)

僕は顔を引き攣らせたまま作り笑いを浮かべると遥の手伝いを始めた。


「焼きそば3つ、チャーハン3つ、ラーメン1丁、上がったよ」

厨房ではお店のオーナーが忙しそうに料理を作っていた。


「はいっ、ただ今っ」

遥は手早くメニューを客に届けると次のメニューを取りに厨房に戻った。


「メニューをお願いしますっ」

僕はオーダー表を手に取ると客からメニューを取った。


「こっちもお願いっ」

「こっちもっ」

僕がメニューを取り始めると次から次へと注文の声が上がった。


「少々お待ちください・・・」

僕は一呼吸置くと混乱する頭を静めて呼ばれた方へ向かった。そして、一席ずつ正確にメニューを取った。


こうして僕らは店の中から客がいなくなるまで同じ作業を繰り返した。


「しかし、やるわね、あんた。まさかこんなに客を集めてくるとは思わなかったわ」

遥は客の食べ終わった食器を洗いながら満足そうな笑みを浮かべていた。


「い~や~、本当に助かったよ。残りの日数もこの調子でお願いするよ」

店のオーナーも同じような笑顔を浮かべていた。


「それじゃ、戸締りをよろしくな」

店のオーナーは海の家の鍵を遥に手渡すと店を後にして民宿へと戻っていった。


「それで・・・どんな手を使ったのよ?」

遥は店のオーナーがいなくなったのを確認すると僕の方へと迫ってきた。彼女は普通に僕が客を集めてきたとは思っていなかった。


「それは・・・」

浜辺での出来事を思い出して思わず口を閉ざした。


(そういえば・・・あの人達、どうしたんだろうか?)

僕は仕事が忙しすぎて浜辺で手伝ってくれた男達のことをすっかり忘れていた。


「・・・ごめんくださいっ」

僕が彼らのことを考えていると不意に入り口の方から男性の声が聞こえてきた。


「すいません、本日は営業を終了・・・あっ」

僕は入り口に立っている男達を見て口を半開きにした。入り口に立っていたのは浜辺で手伝ってくれた心優しい男達であった。


「どうかしたの?」

僕が男達に驚いていると遥が店の奥の方から顔を出してきた。


「実は彼らに客集めの手伝いをしてもらいまして・・・」

僕は遥の方に振り返ると簡単に彼らのことを紹介した。


「なるほどね・・・あんたも罪作りなことを・・・」

遥は口許を吊り上げると厭らしい笑みを浮かべた。


「罪作り?」

僕は遥の言葉の意味が理解できなかった。


「お手伝い・・・ありがとうございました」

僕は男達の方に振り返ると最初に手伝ってもらったことを感謝した。


「いや、別にいいんだ。俺達が勝手にやったことだから」

「そう、そう」

男達は爽やかな笑顔を浮かべると全く問題ないことをアピールした。


「それで?彼らは何のためにここへ?」

「そういえば・・・」

僕は遥に指摘されて男達の目的について確認した。


「それは・・・」

男達は言いづらそうに口を噤んだ。男達は何やら僕にお願い事があるようであった。


「もし良ければ・・・電話番号とか連絡先を教えてもらえないかな?」

男達の1人が意を決して僕の連絡先を聞いてきた。


「えっと・・・」

僕は男の要求に思わず戸惑いを見せた。流石に見ず知らずの人に自分の連絡先を教えることはできなかった。


「やれやれ・・・」

僕が困っていると状況を見兼ねた遥が僕達の間に割って入ってきた。


「お兄さん達・・・その娘は男の子だけど、そっちの趣味があるの?」

遥のその言葉に辺りの雰囲気が一瞬にして凍り付いた。まるで凍結音が聞こえてくるかのようであった。


「はっ、はっ、遥さんっ」

僕は周囲の時間が動き出すと顔面を蒼白にして慌てふためいた。正直、いきなり自分の正体を見ず知らずの男達にばらされて動揺を隠し切れなかった。


「まっ・・・まさか、その子が男の子っ」

男達は動揺する僕の様子を見て遥の言うことを信じたようであった。


「そうよっ。その娘は間違いなく男の子よ。ちなみにあたしも男よっ」

遥は平然な顔をして男達にとんでもないことを言い放った。

ちなみに僕は一度彼女の裸を見ているが、彼女には男性にあるべきモノが付いていなかった。つまり、全くの大嘘である。


「お兄さん達にそっちの趣味があるのなら・・・連絡先を教えるけど?どうする?」

遥は八重歯を見せると悪魔的な微笑を見せた。


「いや・・・俺達にはそっちの趣味はないから」

男達は顔を引き攣らせたままその場を後にした。どうやら彼らには男性と愛し合う趣味はないようであった。


「酷いですよっ、遥さんっ」

僕は正気に戻るとすぐさま遥に近寄った。


「見ず知らずの人達に僕の秘密をばらすなんてっ」

「馬鹿ね。見ず知らずだからいいんじゃない。知り合いにばれるならまだしも、もう2度と会うこともない人達に正体がばれたって問題はないでしょ?」

遥の言うことはあながち間違いとも言えなかった。確かに2度と会わない人間であれば僕の正体がばれたとしても然したる問題にはならなかった。


「そうかもしれないけど・・・だからと言って・・・」

僕にとっては正体がばれることは何よりも隠すべきことであり、然したる問題にならなかったとしてもやはり気持ちがいいものではなかった。


「あのままだと付き纏われてもっと面倒なことになっていたと思うわよ」

遥は男達がストーカー的な行為に発展することを危惧していた。

軽い出会いの内であるならば冗談や笑い事として済ませられるが、万が一にも本気になられてしまったとしたならば、とても危うい状況になっていただろう。


「男なんて・・・本当にどうしようもない屑とどうしようもない屑、それにただの屑しかいないんだから簡単に気を許しちゃ駄目よ」

遥は真剣な表情で僕の瞳を見つめた。彼女にとって男という生き物は屑しかいないようであった。


まぁ、無理もない話である。遥を捨てた父親、彼女を脅迫してきた借金取りとろくな男性に出会っていなかった。同じ立場であったならば、僕だって彼女と同じような考え方になっていただろう。


ちなみに遥を救った神父は神的な存在であり、彼女から異性として認識されていないようであった。


「それなら・・・僕は?」

「あんた?あんたは・・・使える屑よ」

遥は楽しそうに声を弾ませると意地悪そうな笑みを浮かべた。


(屑には変わりないのか・・・)

僕は残念そうに苦笑いを浮かべた。


「さぁ、そんなことよりも明日に備えて早く宿に戻りましょう」

「・・・そうですね。そうしましょう」

僕らは足早に宿へ戻ると賄い食を頂いてお風呂に浸かった。


「ふぅ、いいお湯だった・・・」

遥は湯船で濡れた髪をタオルで拭きながら部屋へと戻ってきた。

僕は彼女のようにのんびりと湯に浸かっていられなかったため、彼女よりも早く部屋へと戻ってきていた。当然であるが、僕が入ったのは男湯の方である。


「お帰りなさい・・・」

僕は視線を下に向けたまま遥に返事を返した。


「あんた、何してるの?」

「はい、どうぞ」

僕は遥が覗き込んでくると満面な笑みを浮かべて問題集の束を遥に差し出した。

僕は今日一日散々振り回してくれた彼女に復讐する機会をずっと窺っていた。


「これは・・・何?」

遥は突然の出来事に目を丸くさせた。


「何って?約束の課題ですよ」

僕は作り笑いを浮かべながら遥に勉強をするように迫った。


「こんなにやらせる気?」

「当然ですっ。遥さんにはこれくらい勉強してもらわなければ周りの人間には追い付けませんから・・・」

「今日はもう疲れてるし、やめにしない?」

遥は甘えるような素振りで僕に勉強の取り止めを持ちかけてきた。


「駄目ですっ。ちゃんと旅行前に注意しましたよね?」

僕は頑固として遥の要求を突っ撥ねた。


「あたしの命令でも?駄目?」

「いいですよ。遥さんがそう言うなら、今後一切の勉強の面倒を見ませんから」

僕は心を鬼にして嫌がる遥に勉強するように強要した。


「・・・わかったわよっ。やればいいんでしょうっ、やればっ」

遥は半ばやけくそ気味に僕から問題集の束を奪い取ると2段ベッドの上へとよじ登った。


「できたら採点しますので終わったら声を掛けてくださいね」

「あたしが勉強している間、あんたは何をしているの?」

「僕はこれです」

僕は鞄の中から乾いた紙粘土を取り出すと魔法の訓練を始めた。


「あんたも好きよね・・・」

遥は呆れた表情を浮かべると課題用の問題集に手を付けた。


こうして僕らはバイトと勉強を繰り返しながらあっという間に5日間の日々を過ごした。

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