呼び出しと仕事 4
結果だけ言うと。空軍海兵隊ヤバスギィ!
何がやばいって、宇宙空間っていうのが陸上での勝手と違い過ぎた。重力がほぼないから、軽くジャンプしたつもりでも、簡単に明後日の方向にとんでもない速度で飛んでいく。
赤ちゃん紐みたいな命綱がなければ、今頃死んでいたかもしれない。
しかも、そのうえで銃撃戦や格闘戦をやるのだ。何度も教官にボコられたうえに、罵詈雑言を浴びせられた。
確かに、こんなところ屯田兵が来てもいいところじゃないよ……。
でも、罰だから半年間は居続けなきゃいけない。帰りたかったけれども、どうにか耐えたよ……。
でも後で、嫌だったら別に帰ってもよかったと聞いたときは、真っ白になって固まってしまった。
そんなの、先に言ってよってニキータに言ったけれども、知ってると思ったと言われてしまった。
何度でも言われたが、空軍海兵隊の指揮権は空軍にある。陸軍に属する私が命令に従わなくても、ペナルティーなんかはない(ただし、戦闘中や指揮権の統合が行われた場合を除く)。
てか、仲悪すぎでしょ……。理由はわかるけれども、おんなじ国の人なんだよ?!
「でも、所属する指揮系統は違うんだよ義母さん。義母さんだって、同じ大陸に住んでいるからと言って、北部の奴らに命令はされたくはないだろう?それと一緒なんだよ」
「あれはそもそも、人間じゃない」
「いや、人間でしょう」
「絶対に違う!人間は、人間を食べるなんてしないもの」
「理屈ではね……」
残念だけれども、論戦とか言うのは私は勝てない。早々に切り上げて、婿殿に仕事について聞いてみた。
婿殿は突然別の話に変えたことに軽い抗議の声を上げたが、特に何もなく話題を変えてくれた。仕事に情報というものは必要だからと。
「義母さんが行くことになる星は、ここから24億光年ほど離れた所にある星だね。まぁ、輸送艦で7日もかからない距離にあるし、隣の星系にはルナ:サエッタを有する大規模補給基地もあるから大きな心配は必要ないよ」
「え?そんなところなの?」
「だからこそ、と言えるんだよ。宇宙進出する文明を持たないところは、脅威とならないから基本放置なんだ。放置している間に、文明が発展して脅威になったなんてことが度々発生しているから、地盤固めをようやく始めたってことだよ」
「じゃぁ、そこもそう言うところってこと?」
「いや、全然うよ。何と説明していいのか……、所謂『剣と魔法の世界』なんだよ」
よく言うゲームの世界の様な、中世ヨーロッパみたいな世界観に、魔法が入り込んだ世界。それがその星、ゼクト822-6Mらしい。
「それって、さっさと滅ぼしちゃった方が簡単なんじゃ……」
「『君臨せども統治せず』の方針があってね。統治は原住民に任せる予定だけれども、彼らがこちらが上に就くことが許せるか。その調査が必要ってことだね。無理なら、滅ぼして他から植民をさせるだけれども、その余計な仕事を増やしたくないから、こんな面倒なことをするんだよ」
「つまり、調査兼脅迫って事?」
「まぁ、そういうことだね」
剣と魔法の世界なんてものが、存在することに軽く驚きつつも、興味を抑えられそうにないよ。あぁ、早く行きたいな!私は、そう願ってやまなかった。
ナゼナニ☆レキシントン!
Q.おいしそうな名前の企業?
A.「企業統括集合体モナカ」の事。
いわゆる企業体連合だが、規模が凄まじく大きい。正規職員だけでも3兆人に少し届かないくらいと次元が違う。
なお、レキシントンが加盟する「枢軸連合国国家共同体」の中では2番目に大きな会社である。
Q.空軍海兵隊とは
A.星の海原で活動する特殊部隊の事。海軍には「海軍陸戦隊」、陸軍には「空挺師団」と言うのが存在する。
主な任務は白兵戦であり、ニーナが体験したように銃撃戦や格闘戦が主体。暗殺や情報収集も任務に含まれており、エリート集団な割には人数は多い(ただし、保有宙域の広さに比べれば圧倒的に少ない)。
なお、ニーナをボコボコにした教官達は婿殿の部下であり、婿殿から容赦の必要はないと命令されていた。
Q.物騒な話について
A.〇メリカ建国前の話で、「不老不死の妙薬」と言う話が。
アメリカ大陸の先住民で、しかも人型の爬虫類に似た生き物を見た開拓者は、怪しい男の言を信じて彼女を食ったと言うムゴイ話。
古代レキシントン帝国人が、他国人を信用できず、第三次世界大戦時に徹底的な破壊と殺戮を敵国に行った原因ともなっている事件でもある。
Q.24億光年は近いのか
A.5億光年ごとに超空間転送システムのゲートが存在し、それを使えば半日で25憶光年を移動できる。
日程として、1日目は輸送艦に乗って転送システムゲートへ向かい、ゲートを使って跳躍。2日目から6日目までは連続ワープで、1億光年戻る。7日目は、星系へ侵入して降下準備をすると言ったところでしょう。
Q.ルナ:サエッタ?
A.レキシントン語で、「ルナ→衛星」「サエッタ→工房」が合わさった固有名詞。兵器工廠または軍需工廠を示す言葉。
特に空軍が言うルナ:サエッタは、無人戦艦を製造する工場のことを示す。さすがに某自動車会社のように17分で1台は無理だが、最新型のヨウス級k型は22時間21分で1隻の建造が全て完了する。