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妖精さんと食料(二)

さて、妖精さんの匂いを追うこと十分。段々、妖精さんの芳しい匂いが濃くなってきた。このまま妖精さんの匂いに溺れていたいところだが、そうもいかない。


 さっき考えないようにしていたが、妖精は単体では結構か弱い生き物なのだ。獣に襲われればそれがキツネやイタチのような小さな肉食獣でも簡単に食べられるし、鳥からだって餌扱いだ。下手をすれば肉食の虫にだって食われかねない。いや、本当生態系の下位にいすぎな、可愛い生き物なのである。


 勿論、妖精さんにだって力はある。妖精さんは、魔力を持たない我々獣人種とは違い、何と魔法を使うことが出来るのだ!

 ……ただし、火ならマッチの火程度、水なら多くてコップいっぱい分くらいしか出せないのだが。

 いや、可愛い妖精さんの為に言い訳をしてあげるなら、全ては妖精種が小さすぎるのがいけないのである。小さな妖精たちからしたらそれでも十分すぎるほどの大きさなのだ。それに妖精種はどちらかといえば攻撃的な魔法は得意ではないのだから仕方ないことではある。


 と、まあそれはともかく、そんなか弱くて可愛い妖精さんだからこそ、妖精さんがそういう獰猛(妖精さん比)な生き物に襲われない内に見つけて、保護して可愛がらなくてはいけないのだ。

 それに、こんな遠くから妖精さんの匂いを嗅ぐより、より近くで嗅いだほうが良いに決まっている。

 俺は妖精さんの匂いを堪能するため、そして妖精さんの可愛さを失わない為、いっそうスピードを上げ、茂みを進む。

 そして、ついに茂みを抜け、目の前が開けると、そこには何と――



――大きなリンゴの木になっている水水しいリンゴに齧り付く、妖精さんの姿があった。



 ちょっと、妖精さん!?

 何してはりますのっ!?




「妖精族は、甘い果実の気配を感じるのが得意なのですよー」


 被告人はそう供述していた。


「狐さんが食べ物をくれないので、自分で探しに来たのですよ!」


 迷子の子供はそう自慢げに言い張っている。



「いやいや、妖精さん。危ないから、一人で行動しないで」


「平気なのですよ」


「いや、でも……」


「狐さんは過保護なのです。私だって、狐さんと会うまではしばらく一人でいたのですよっ!」


「……あそこから、ずっとカラスが、妖精さんを狙ってるけど」


「ふみゃーっ!!!」



 慌てて俺の背中の後ろに隠れる妖精さん、可愛い。


 それにしても危ない所だった。

 気配を探るだけで、カラスが五匹、イタチが二匹、キツネが一匹集まってきている。あと、数分遅れていたら、妖精さんはきっとどれかの胃袋の中だっただろう。


 妖精種はなぜか、常に甘い花のような香りを強く出している。そりゃもう、強くだ。俺のような似非狐獣人でも辿って来れるんだから、そりゃあ本職の獣さん達は嬉々として辿ってくるだろう。

 本当、よく一人で行動している時、捕食されずに生き残ったものだ。妖精さんは、よほど幸運なのに違いない。最終的には、俺とも出会えるという幸運もあったわけだしね! ……誰だ! 今、「それは全ての幸運を打ち消す不幸だ」って言った奴は!?


 と、まあ、ともかくも、妖精さんは無事に保護できたし、妖精さんが見つけたりんごも大量に確保できた。その上、妖精さんを狙っていたカラスや、キツネ、イタチなどという肉も皆確保できたのだから、しばらくは食べ物の心配はしなくても大丈夫そうだ。

 うむ。妖精さんさまさまである。


 ちなみに、俺は狐獣人だけど、普通にキツネも食べる。共食いではない。獣人種はそれだけで独立した種族だから、野生動物とは別物なのである。獣人種の生態系における枝分かれは、全ての人種の祖を始まりとしており、遺伝子的にも獣人種は動物よりも人種に近い生き物なのである。


 それにしても――



「――いざという時は、妖精さんを餌にすればいっぱい獲物が取れるかも……」


「ふみゃーーっ! 狐さんが非人道的なことを言っているのですよっ!」



 ――俺の冗談に怒って、頭をぺちぺち叩いてくる妖精さんはとても可愛かったです。

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