表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

第3話【宮本亜門のように開き直れない】

 小学6年生にもなって自転車に乗ることができない━━この強烈に恥ずかしい現実に懊悩をくり返す俊作。それに周囲も友達たちも気づきはじめ、俊作は八方ふさがりの羞恥心地獄にうちのめされるようになっていた。


 


 

 しかし、家が貧乏なために自転車は買ってもらえない。そのため影でこっそり練習もできない。


 


 

 親の自転車で練習すればいいのではないのか?と思われるかもしれない。たしかに親は自転車を持ってはいるが、たとえ親の自転車で練習して乗れるようになったとしても、学校から帰って『さあ、遊びに行くか』というときには、母がきまって自転車を使っているのである。どうやら夜の仕事らしく、母は毎晩自転車に乗って駅に向かい、そこから徒歩で仕事場に向かっているようだった。


 


 

 自転車は買ってもらえない。親の自転車で練習もできない━━どうすることもできないつらい現実に俊作は深いため息をもらすばかりだった。  


 


 

 そんなある日、テレビに演出家の宮本亜門という人が出ていた。なんと彼は子供の頃だけでなく、40歳を過ぎた現在も自転車に乗ることができないのだという。


 


 

 『いやぁ、誰も教えてくれなくて。ハハハハハ』━━テレビの中の宮本亜門は爽やかに笑いながらいった。そんな宮本亜門の神経が俊作には到底理解ができなかった。


 


 

 ━━外を歩けば自然と視界の中に入る自転車という乗り物。なぜ、こんなものが地球上に存在するのだろうか?いったい誰が、なんのためにこんなものをつくったのだろうか?自転車さえなければ自分はこんなみじめでつらい思いをしなくて済んだというのに……ここから俊作の生きる道はきまっていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ