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ダンジョン探索

 帰宅した俺はカナンが帰ってくるのを待つまで起き。

 そして帰宅したカナンにセブンスオンの一件を話した結果――正座せられた。

「誰に目をつけられてんの⁉」

 カナンが絶叫する。

「よりにもよってセブンスオンに⁉ ああ、最悪。なんでこんなことに?」

 そして天を仰いだカナン。

 その反応に俺は困る。

「セブンスオンはカナンのことを古い友人だと言っていたぞ?」

 あの親愛の表情は偽りではない。

「一方的よ。会うたび会うたびちょっかいかけてきて……うっとおしいったらありゃしない!」

 嫌だと言っていても聞かないのか。

 なるほど、それは厄介だ。

「で、どうする?」

 俺は次を促す。

「もし嫌なら俺に全権を託しても構わんが」

 会うのに躊躇うなら俺が代わりに応えても良い。

「いえ、これは神同士の会話よ。私が行くしかない」

 が、カナンはきっぱりと申し出を拒否する。

「こうなったら一矢報いてやる。ロラン、神の命令よ。全力を出しなさい。それこそ向こうが無力感に襲われるぐらいに」

「良いのか?」

 目立つのは避ける方針だったか。

「遅かれ早かればれるわよ。だったらあいつの腰を抜かせてやるわ」

 フッフッフ。

 と、カナンは肩を上下させて神にあるまじき暗い笑みを浮かべた。

「そういえば気になる点が一つ」

 ハッキリさせておきたいことがある。

「何故ここまで凋落した?」

 長く生き、かつ出会いを司る神ならそれなりの力を蓄えているはず。

 滅亡一歩手前まで弱体化する理由が知りたかった。

「……」

 どうやらカナンは答える気はないらしい。

「まだそこまで信頼関係を築けていないということか」

 心の傷を曝け出さしてくれるにはまだ時間が必要。

 なら、もう少し待つか。

 そう判断した俺は立ち上がる。

「ありがと、何も聞かないでくれて」

 ポツリとカナンがそう呟いた。

「なんだ! その貧相な装備は⁉」

 ダンジョン前、大衆監視の前でミギラスが怒鳴る。

「市販の防具と剣なんてなめきってんじゃねえだろうな⁉ ロラン!」

 そう、ミギラスの怒りは俺の装備に向かっていた。

「そんな怒られてもな」

 俺は頭をかく。

「これが今の俺の限界だし」

 地下ダンジョンは十階以上の浅層で稼ぎが少ないうえそこから更にカナンへの貢物。

 そして諸々の生活費を差し引いた結果、俺が買えたのはちょっと質の高い鎧兜が限界だった。

「そんなのしか揃えられないのなら止めとけ! この貧乏人が!」

 なおもミギラスは叫び続ける。

 状況を確認しよう。

 ここはダンジョンの入り口ゆえ多くの冒険者が集まっている。

 そしてミギラスがいるセブンスオンは誰もが知る超有名ギルド。

「なあ、あいつって」

「最近入った青男だ」

「なんか弱そうだな」

 その結果、俺は周囲から侮蔑と蔑みの視線と噂の的になっていた。

「俺が止める、止めないはミギラスが決めることでないだろう」

 俺は淡々とした口調で。

「神が決めた取り決めだ。不服ならセブンスオンに抗議するんだな」

 決定権がない俺に当たっても意味はないぞ?

「この――」

 俺の正論に眼をむき、なおも言い募ろうとしたミギラスだが。

「もう良い、早く潜ろう」

 静かな声音のアイシスがそう留める。

 アイシス達は俺とミギラスの諍いに不干渉、どうなるか様子を見ていた。

 彼女達はこれ以上続けさせても時間の無駄になると判断したらしい。

「けど――」

「ミギラス、貴方が外れても良いんだよ?」

 アイシスが無理矢理終わらせた。

 そして俺に向き直る彼女。

「不愉快だった? けど、ミギラスの言葉は私達の言葉でもあるんだよ?」

突如現れた馬の骨とも分からぬ輩が自分達の領域に踏み込んできた。

なるほど、ミギラスでなくとも不愉快に感じるだろう。

「何なら別行動でも構わんぞ?」

 俺は神から貰った剣を掲げる。

「十階か二十回、節目節目の階層の出口に制限時間までに辿り着くというのはどうだ?」

 これならミギラスも不快に思わず、俺も平穏が保てる。

「……どうする?」

 アイシスが確認を取るのはセブンスオンのメンバー。

「まあ、良いんじゃない? 死んだらそれだけの男だったわけだし」

 概ね肯定的。

 そのまま決まろうかと思いきや。

「けど? それって不味くない? 主にばれたら大目玉を食らいそう」

 メンバーの一人が懸念を示した。

 セブンスオンは俺の活躍を楽しみにしている。

 なのに途中までとはいえ別行動を取ったら良い顔をしないだろう。

「「「……」」」

 そのことに思い当たったのか、全員が黙りこくった。

「じゃあ、私がついていく」

 アイシスが一歩進み出る。

「集合地点は地下十階の出口付近。そこで落ち合おう」

「ちょ、ちょっと待てよアイシス」

 ミギラスが慌てる。

「こんな奴と二人きりで大丈夫かよ? 案外すぐに死ぬかもしれないぜ」

「そこら辺は大丈夫じゃない?」

 擁護したのは団長のジルベッター。

 妖艶な、そこの見えない微笑みを浮かべたスナイパー。

 背中に背負ったミスリル製の弓が光る。

「アイシス程なら十階程度なんて物理だけで問題ないわよ」

「そうなのか?」

 アイシスは見た目華奢な少女。

 とてもじゃないがスモールグールや腐った死体を物理で屠れるとは思えない。

「どうしても危なくなったら無詠唱もあるから」

 呪文なしの速攻魔法か。

 それなら安心だ。

「私とロランは先に行く」

 議論は終わったと判断したアイシスはそう宣言する。

「ジルベッター、トクランス。先に待っている」

「相変わらずなエース様ね」

「ハハハ、生意気な猫みたいだ」

 ジルベッターとトクランスは特に不快を感じていなかった。

「じゃあ、行くか」

 アイシスが先に向かったのに、俺がずっと佇んでいるわけにもいかない。

 剣を腰に回した俺は歩を進める。

「さっさと死ね」

 ミギラスが俺にだけ聞こえるよう怨嗟を吐いてきたのだが、わざわざ反応する必要はないだろうな。

 そして地下に降りる俺とアイシス。

「ロラン、断っておくけど私は一切手助けしないから」

 アイシスの目的はあくまでお目付け役。

 俺に加勢する道理はない。

「でも、道中魔石とアイテムは拾ってあげる」

「それは助かる、ありがとう」

 アイシスの申し出は素直に嬉しかったので俺は礼を述べた。


 さて、ダンジョンにおける十階までは最浅層と呼ばれ、登場する魔物はほとんどが小型。致命傷を負うことが少ないため、日の浅い冒険者といった初心者がダンジョンのコツを掴む練習場となっている。

 が、安心すること無かれここは魔物と生死を争う決闘場。

 不遇によって帰らぬ人となる冒険者が多いのも事実。

 特に五階から七階までの死傷率。

 全体の内七割がこの三階に集結していた。

 その一端を担う魔物が地面から手だけ伸びた魔物『死者の手』。

 防御力も弱く、攻撃手段も掴んでくるだけなのでそれ単体なら怖くない。

 こいつの恐ろしさは別の魔物と同時に現れた場合。

 足を掴まれて身動きできない状態での戦闘。

 腐った死体やミニオーガの攻撃をその身で受けなければならないのである。

 まあ、恐ろしいと言えば恐ろしいだろう。

 だがな。

「めんどくさい」

 もう何十回目の掴まれた感触。

 また死者の手が俺の足首を掴んだか。

 最初は剣で斬っていたが、こう何度も続くと剣が先に痛むのでもう成り行きに任せていた。

 ここで言う成り行きとは――

「引き千切るなんて……凄い力ね」

 掴まれても気にせずそのまま足を前に出すことである。

 俺の力が強いので地面から生えた死者の手は手首から先がなくなっていた。

「相手にする時間と労力が勿体なかったからな」

 剣を振るうまでもない相手だ。

「ちょっと待って、魔石が落ちている」

 律儀にもアイシスは地面に残された魔石を拾っていた。


 危険な魔物その二――キラービー。

 鳥ほどの大きさを持つ蜂の魔物。

 素早い動きで空中を動き、隙あらば尻尾に生えた針で刺してくる。

 こいつは死者の手よりも厄介。

 キラービーの追加効果、状態異常。

 黄色は毒、赤色は麻痺、そして黒色は二度刺しで即死なのだから恐ろしい。

 ただでさえ空を飛んでいるので攻撃が当たりにくいのに、集団で来られたらどうなるか。

 五~六匹以上だと一、二回は刺されることを覚悟すべきだろう。

 加えてキラービーは確認する限りどの階にも出現するらしい。

 なお、下層に近づくほど黒いキラービーの出現頻度が高くなるとのこと。

 ナイフや短刀、または魔法を扱う冒険者が必須である。

 まあ、俺にかかれば。

「蝿たたきで十分だ」

 雑貨屋で買った質の良い蝿たたき。

 これにスナップを効かせて叩く、叩く、叩き潰す。

 黒色ビーが何十匹いようが相手にならなかった。

「蝿たたきでキラービーを追い払う人なんて初めて見た」

「ならこれを流行らせば良い。凄く楽だぞ」

「あのね、普通の冒険者がそれをやったら怒らせて仲間を呼ばれるのがオチなの。それになんで腐った死体とかジャイアントアントもそれで一撃なの?」

 珍しくアイシスが怒った口調で抗議する。

「小型の魔物はこれが一番良いんだよ」

 十階までの魔物には剣よりも蝿たたきが効果的だ。


 危険な魔物その三――ゴーレム。

 石でできた魔物で身長は二mと大きい。

 相当固く、ただのナイフでは傷付けることすらできない。

 力、防御と共に十階までにおいて文句なしに最強だろう。

 が、素早さはそれほどでもないので逃げるのが無難。

 しかし、挟み撃ちにされる、死者の手に掴まれていると危険な匂いが漂う。

 で、こいつはどう対応しているかというと。

「銭投げならぬ魔石投げだ」

 魔石は先が尖りかつ結構硬い。

 投げるには絶好の代物だ。

「た、たった一発で……」

 アイシスが絶句しているのは爪の先ほどの魔石がゴーレムの胸を貫通し、崩れ去る場面を目撃したから。

 魔石を投げてダメージを与える戦法など初めて見たのだろう。

「投擲は普通に行われているはずだが」

 投げナイフとか手槍とか専用の武器が売っていた記憶がある。

「それの応用だ」

 費用対効果を考えると魔石投げの方が遥かに経済的だ。

「もう良い……何も言わない」

 何かを悟ったのかアイシスは軽く嘆息した後、ゴーレムから生まれた魔石を回収した。


 十階、二十階といった節目の階にはボスモンスターがいるらしい。

 次の階に進むにはそいつを倒さなければならない。

 運が良ければ前の冒険者が倒し、復活するまでの間なら何もしなくとも通れるとのこと。

 俺としては大分ゆっくりと進んだ。

 あわよくば先に進んだセブンスオンのパーティが倒してくれているだろうと期待していたのだが無残にも打ち砕かれた。

「十階ボス――クイーンアントよ」

 体長三m、その内二mが卵の培養器官なクイーンアント。

 女王蟻の戦闘力は皆無に等しい。

 が、女王蟻を護るジャイアントアントの集団を倒さなければ近づくことすら叶わなかった。

 固い殻を持つジャイアントアントに手間取っていれば女王蟻はどんどんジャイアントアントを生み出す。

 攻略の肝は、いかに女王蟻を速やかに倒すかである。

 ――秒殺だったけどな。

「たった二回で……」

 魔石投げ二回で女王蟻撃破。

 後は蝿たたきでジャイアントアントを駆逐すれば十階クリア。

「簡単だったな」

 カナンがあれほど止めるからどれだけ危険なのかと身構えていたが、ふたを開けてみれば拍子抜け。

 案ずるだけ疲れた。

「それは貴方だけよ」

 アイシスが疲れた様子でそう呟いたのが印象的だった。


 目的地で待つこと十数分。

 多くの足音が響いたので俺は顔を上げる。

「大分遅かったな」

「ふん、何えらそうに」

 セブンスオンのパーティであるミギラスが面白くなさそうに唾を吐く。

「大方アイシスに助けてもらったんだろう? 彼女はこう見えて優しいからな、窮地に陥った時、咄嗟に魔法を唱えてもらった光景が想像できるぜ」

 ……出来るのか?

 あの程度の魔物で窮地に陥る場面を想像できないんだが。

「お前は運が良いから女王蟻と戦わなかったんだろうがな、あいつは結構厄介なんだぜ? アイシスの様な魔法使いがいなけりゃ平気で戦闘時間が一時間超えるからな?」

 ふーん。

 俺は一分も越えなかったけどな。

「お疲れ様、アイシス」

 団長のジルベッターがアイシスに声をかける。

「どうでした? やはりロランに手助けしたの?」

 俺を信用していないな。

 一瞬ムカッと来るが、ポッと出の俺と長年共にいたミギラスと信頼関係を比較する方がおかしい。

 まあ、その誤解はアイシスが解いてもらおうか。

 俺はアイシスの言葉を待つ。

 するとアイシスはゆっくりと口を開いて説明を始める。

「……何を言っているのか分からないと思うけど、ロランは死者の手を引き千切った、蝿たたきで魔物を全滅させた、ゴーレムは一回、女王蟻は二回の魔石投げで終わらせた」

「ごめんなさい、本当に何を言っているのか分からないわ」

 ジルベッターは綺麗な顔を困らせて微笑んだ。

「断っておくが俺はアイシスの手を一切煩わせていないぞ?」

 ここ重要。

 彼女の助けはいらなかったと明言しておかねば。

「ふん、十階をソロ攻略など少し腕が良かったら誰も出来る」

 ミギラスは不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「次は二十階だ、そこまで一人で辿り着けないと話にならない」

「ミギラス、それは酷過ぎない?」

「アイシス、それぐらいしないと駄目だ。何せ俺達は誉れ高きセブンスオンギルドの主力。生半可な障害で根を上げるような輩に務まるはずがねえ」

「……」

アイシスは何か言いたそうだったが、ミギラスの怨念じみた気迫に閉口する。

「俺は別に構わんぞ」

 何故ミギラスが俺をそんなに目の敵にするか気になるところだが、今詮索しても仕方ない。

「で、アイシスと共にダンジョンを進めば良いのか?」

 とりあえず先に進めよう。

「待ちな。それは駄目だ。これから先の魔物はアイシスの魔法が必要になる」

 十階以降は魔物の性質が大きく変わる。

 シルバーデビル、アークデーモン、ギガンテスといった全長二~五mクラスの大型魔物が頻発する。

 これから先に必要なのは火力。

 すなわち大型武器や魔法を扱える冒険者である。

「俺一人で進もうか?」

「それは駄目よ。そんなことをしたらマスターに怒られちゃう。だから――」

 ジルベッターは少し考えた後。

「私とトクランスがロランと共に進むわ」

 そんな提案をした。

「良いのか?」

 俺は懸念を口にする。

 七人パーティの内二人が抜ける。

 それは無視できない損害だろうと俺は考えるが。

「大丈夫よ。これから先必要なのは火力。私は弓矢でトクランスはナイフ。戦闘には不向きよ」

「まあ、そこまで言い切るのであれば」

 俺が留める理由はない。

「初めまして、トクランス=リンドよ」

 緑色の髪をショートカットに纏めた女性。

 票のようにしなやかなスレンダーな体型を持つ彼女。

 細身の肢体には無駄な脂肪や筋肉が一切なく、見るからに身軽そうだった。

「私の武器はこのナイフ。小さいけど切れ味は抜群よ」

 そう翳して見せたナイフの刀身から淡い光が放っている。

「これ、カザランス工房の特注品。買うとすれば百万Gではきかないわよ」

 おおう、それはそれは。

 大の大人一人ぐらいなら一生遊んで暮らせるな。

「フフフ、三十階にまで到達すればこのナイフの切れ味をお見せしてあげるわよ」

 トクランスは猫の様ないたずらっぽい微笑を浮かべた。

「では、行きましょう」

 ジルベッターが号令をかける。

「私達は先に行くけど、遠慮なく抜いちゃって構わないわよ?」

 彼女はアイシスとミギラスがいるパーティにそう笑いかけた。

 くどいようだが十階以降に登場する魔物は皆大型。

 十階までの戦法は通用しない。

 だから蝿たたきは封印する。

 魔石投げはまだ需要があるだろう。

 俺は蝿たたきを仕舞い、先へと進んでいった。


 十階以降の大型魔物でも気を付けなければならない種類がある。

 己の頭を鉄球に見立て、中距離から攻撃をしてくるアイアンヘッド。

 大きな斧を振り回してくるミノタウルス。

 そして数ある大型の中で最大の巨大さを誇るサイクロプス。

 当たり所が悪ければ一発でお陀仏という可能性があった。

 ここでのエンカウント率は上とほぼ変わらない。

 が、俺達は一体の魔物すら会うことなく二十階前まで辿り着いてしまった。

「一番驚いたのは、ここら辺の魔物は己の分を弁えていたことだ」

 俺は素直に褒める。

 エンカウントしなかったというのは語弊がある。

 正確には遭遇しても向こうが逃げ出したので戦いようがなかったのだ。

 戦いがない分、こちらの方が楽である。

 ちなみにジルベッターとトクランスの感想というと。

「こんなの初めてよ……」

「規格外という言葉が一番似合うわ」

 どんな顔をして良いのか分からず、終始顔を引き攣らせていた。


 で、ボスがいる階層へ。

 大型魔物が出現するだけあって各フロアは端が見えないぐらい巨大な間取りだったが、このフロアはそれを上回る。

 中央付近にまで辿り着くのに十数分かかるぐらい広い。

 そしてこのフロアの真ん中に佇む魔物。

 二十階ボス――ゴアサイクロプス。

 指の一本一本が俺と同じ身長と太さ。

 ここまで来ると魔物というより巨神兵である。

 ゴアサイクロプスは上空と地中から伸びた鉄鎖で封じられているが、恐ろしいのが全身を鎧で覆われていることと、近くに巨大な釘付き棍棒が落ちてある点。

 これ、十中八九ゴアサイクロプスが使うな。

「どうせなら俺が使うか」

 試しに持ってみる――うん、大丈夫。

 俺は巨大な釘付き棍棒を肩に担ぎ、魔物へ近づく。

「……クルル」

 すると俺の気配に気づいたのかゴアサイクロプスが鎖を鳴らし始める。

 この調子ならすぐに鎖を外して襲い掛かってくるだろう。

 しかし、それを馬鹿正直に待つ俺ではない。

 俺は助走をつけて飛び上がり、得物をゴアサイクロプスの頭へ落とす。

 グシャ!

 俺の力が強すぎたのだろう。

 ゴアサイクロプスの頭は兜ごと胴体に埋まり、そして数秒後に魔物の姿が爆散した。

「「……」」

 二人が呆気に取られているが気にしない。

 自分の剣を使うより効率的だと信じている。

「さて、行こうか」

 俺は背後に控えた二人に声をかけ、待ち合わせ場所へと向かった。


「何を言っているのか分からないと思うけど」

「魔物がロランにビビって出会わなかった。そしてボスのゴアサイクロプスが使う獲物を利用して一撃で頭部を粉砕したのよ」

 ジルベッターとトクランスの説明にアイシス以外「何言ってるんだ? こいつら?」微妙な表情をした。

「偶然だ偶然!」

 ミギラスがなおも俺を認めない。

 ここまで来るともう感心してしまう。

 何が俺を気に入らないのか。

「ミギラスの感情はともかく、ようやく剣を振るえそうだ」

 俺は鋼の剣を出し入れする。

「ジルベッター曰く、ここからが本番らしいからな」

 二十階から大型の魔物が姿を消し、代わりに人間大の大きさが現れる。

 リザードマン、ゾンビリーダー、オーガの戦闘兵といった中型魔物。

 彼らと以前との違いは徒党を組む点。

 単独行動はなく、最低でも二人一組、五人で組んでいることもざら。

 さらに直接攻撃だけじゃなく、弓や魔法をも併用してくる。

 いわば組織戦。

 個人戦は通用しない階層である。

「まあ、俺からすれば関係ないけどな」

 この程度の魔物、一撃で葬り去ってくれる。

 今までのフラストレーションも溜まり、俺は結構乗り気だったのだが。

「ごめんなさい、今回はここまでにさせて下さい」

「え?」

 団長のジルベッターが中止を宣言した。

「私達はまだまだ余裕があるけど、アイシス達がいるパーティが限界みたいなのよ」

「ミノタウルスの群れに襲われた」

 しかも出会い頭。

 近すぎるため大型魔法を発動できず、乱戦になってしまったとのこと。

 何とか撃退したが全員傷を負い、これ以上地下に潜るのは危険だった。

「……」

 俺としては不満爆発だったが、俺の立場は客分。

 本家が決定を下したのならそれに従わなければならない。

「分かった」

 俺は渋々剣を鞘に納めた。

「ごめんなさい、ロラン」

 アイシスが申し訳なさそうに謝る。

「私達が足を引っ張った」

「気にするな、勝負は時の運だ」

 ダンジョン探索は運に大きく左右される。

 もしアイシス達が出会い頭にミノタウルスの群れと遭遇しなければ問題なかっただろう。

「仕方ない仕方ない」

 俺は自分に言い聞かせるように何度も頷いた。


 後日談。

「うちのメンバーが何を言ってんのか分からんねんけど?」

 アイシス、ジルベッター、トクランスがありのまま話した結果がそれ。

 規格外すぎて説明できなかったらしい。

「だったらもう一度潜るか?」

 と、俺が希望を伝えたところ。

「ん~ちょっと待ってえな」

 余りに俺が強すぎるので、自分達の居場所を奪われまいとミギラス達四人が強硬に反対。

 そいつらの説得するまでしばらく時間が欲しいとのこと。

「ロラン、やり過ぎよ! もっと目に見える形で強さを見せつけなさい!」

 ……あれ以上どうやって見せつけろと?

 一度も剣を抜かず、代用品で二十階まで辿り着いたこと自体が凄いことだと思うのだが。

 遠征によって莫大な額が入り、ギルド内部の調度品について頭を悩ませているカナンを見ながら俺は溜息を吐いた。

少し休みます。

再開は未定です。

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