De-Intellectualization (知性化解体) シリーズ
ユニファイド・ビー
2015-Feb-21: 極小版を、後ろにつけました。単独だと短すぎてここには投稿できないのです。
職場に来ると、私はビーに仕事に必要な知識とスキルをダウンロードする。計算機を起動すると、ソースコードやテストの結果などがディスプレイに表示される。仕事中には、ビーが私にささやく。「プランを立てた。そのプランに従って、キーボードの”A”を押せ」と。
ネットは広大で、あらゆる知識と、そしてスキルがアップロードされている。いつでもそれらを参照できる。職業的アップローダが日々膨大なbit数のデータをアップロードしている。
この数年、新しいwebページは書かれていないと言ってもいいだろう。blogなどはもちろん書かれている。ショートメッセージなどももちろんつぶやかれている。画像や動画ももちろんアップロードされている。いや、webページも、企業など団体のものはいくらでも書かれている。そもそも本だって膨大な数が発行されている。だが、例えばwikipediaだ。どの項目を見ても、最終編集日時は数年前だ。
計算機、スマートフォン、タブレット、ウェアラブル、ビーと機器は進歩してきた。サービスも検索エンジン、アシスタント、エージェント、ビーと進歩してきた。ある人が言っていた。「サービスは、Sync Me、See Me、Know Me、そしてBe Meに至る」と。確かにそのとおりだった。
ある日、ある人が叫んだ。「覚えることは無用だ」と。ある日、ある人が叫んだ。「著作権を尊重せよ。剽窃、翻案、インスパイア、オマージュ、パロディは悪だ」と。ある日、ある人が叫んだ。「ウェアラブルは時代遅れだ。時代はユニファイだ」と。
終業の時間になり、私は職場を離れる。ふと、「今日は何をしていたのか?」と思う。ビーがささやく、「仕事をしていた」と。そうだ、仕事をしていた。
家に帰り、一息つく。ビーがささやく。「この本を読もう」と。面白い本だ。ふとデジャ・ヴュにとらわれる。「この本は以前、読んだことがなかったか?」 ビーがささやく。「はじめて読んだ本だ」と。あぁ、そうだ。はじめて読んだ本だ。面白い本だ。ビーがささやく。「これは面白い本だとショートメッセージを書こうか?」 だが私の良識がささやく。「やめておこう」と。
気が付くと、部屋の入口に人が立っている。「誰だろう?」 ビーがささやく。「妻だ」と。そうだっただろうか? ビーが彼女との出会いから今までの記録をささやく。あぁ、そうだ。
翌日、目を覚ますと妻がとなりに寝ていた。「妻?」 ビーが彼女との出会いから今までの記録をささやく。あぁ、そうだ。
職場に向かい、作業服に着替えると作業に必要な知識とスキルをビーにダウンロードする。持ち場につくとビーが私にささやく。「プランを受信した。そのプランに従って、操作盤の黄色いボタンを押せ」と。
昨日は違う仕事をしていたように思う。ビーが、就職活動の頃から今までの仕事の記録をささやく。あぁ、そうだ。
休憩時間にビーを通してwikipediaのビーについての項目を読む。ビーが新たに編集された部分を示す。「今日は何日だっただろう?」 ビーがささやく。そして昨日編集された部分だとわかる。
「今日、帰宅したら何をしようか?」 独身だと、夜の時間をどう過ごすかも意外に面倒だ。ビーがささやく。「プランは立ててある。」
--- 極小版 ---
You never need to learn anything.
I download knowledge and skills to me, your unified-be, at anytime and anywhere.
When you left your location, you forget what you forget.
I whisper “I identify/define who you are.”
--- 具象小説の試み --- [1] (added: May 02, 2016)
他にもいろいろな形があると思います。
「サービスは、Sync Me、See Me、Know Me、そしてBe Meに至る」とは、Gartner, Inc. による言葉です。こちらのページを参照してください。
http://www.gartner.com/newsroom/id/2621915
*1: https://docs.google.com/spreadsheets/d/1X9rEPPguIfo6j2O_W8ELxYEiFXGXP7f2YFohQ46ucmk/edit#gid=0