episode 14
「ゾンビのくせに…脳あるんじゃねーの?」
今現在、ビル内部。
人を見つければ襲い掛かるだけしかないと思っていたけど、まさか確実に仕留めに来るなんて…。あんな作戦、人間の脳でもない限りは思いつかないよな…。いや、思考力持ってるのか?
しかし、あの爆発音は…やっぱミサトさんが言ったように、能力を持ったままゾンビになったのか…?
それより、なぜ鉄矢は生きているのか。
鉄矢が、ビルが倒れていることに気付いてから地面に落ちるまでの3秒間。
鉄矢は、窓ガラスを見ていた。ビルの壁は壊せなくてもガラスなら壊せる。
落下地点を予測し、いいタイミングでガラスを壊し、そしてビル内部へと入ったのだ。
「こどもだからってナメてるな。あいつら」
中学生って、まだこども…だよな。
しかし、爆破させたゾンビも馬鹿だよな。今のでたくさんの仲間が巻き添えになったって言うのに。
…ひょこっと別の窓ガラスから顔を出す。当たり前ながら全員が下敷きになっていたため、ゾンビはどこにも見当たらない。
よし、今なら。チャンスと思って全力で走り出す。
「…来ないな」
一方、シェルター前。
帰ってきていないのは、鉄矢、ミサト合わせて5人。
そこに、鉄矢、ミサト以外の2人が帰ってきた。
「ギリギリだな」
汗だくの2人に、かなり前から戻って来た男が話しかける。
「いやぁ、ハァ、張り切りすぎたぁ…」
その言葉に周りが吹き出す。
「しかし、遅いな」
残り2分。
一方鉄矢は、ビルの屋上を飛び移りまくり、ショートカット、最短距離でシェルターに向かっていた。
しかし、それでも間に合わない。
もっと、もっと速く走らないと…。
体制を低くし、脚の回転を早くして目的地まで急ぐ。
頼む、間に合ってくれ…。
ピキンッ
足が…
もつれて…
壮大に転ぶ。そのまま屋上から飛び出る。
足がつった。
「うわッ!!」
向かいのビルの窓ガラスに突っ込む。
こんなに足を早く動かしたのは初めてだった。だからか…。
まだ動ける。早くゲートにつかないと…
『ピピピピピピ!!!』
ゲートが、閉ざされた。それを告げるアラームが、響き渡る。
間に合わなかった。その事実が、身体全体に強い脱力感が襲いかかる。
仰向けになる。背中に小さなガラスの破片が当たって痛い。
これで俺も犠牲者、か。
「はは…はははははは」
無性に笑いがこみ上げる。頭がおかしくなった人の気持ちがわかったような気がした。
さんざん人を殺してきたんだ。喰われてもしょうがないか。あー、気が楽だ。早くゾンビ来ないかな。
「いやーなかなかの速さだこと」
ミサトが鉄矢の顔を覗き込む。
「うわっ!いたんですか?」
「うん。ずっとね。こうなることは予想してたから。いや、わかってたと言ったほうがいいか」
わかってた、か。すげえや。
「いいんですか?ゲートに戻らなくて」
「言ったじゃないか。君を全力でサポートするよって」
言ってたな、そんなこと。
「で、どうだい、すっきりした?」
あ、バカみたいに笑ってたとこ見てたんだ。
「…いつから見てました?」
「やだなぁ、最初からだよ~」
ニヤニヤしながら言う。
恥ずかしぃ…。手で顔を覆い隠す。
「動ける?」
ミサトがそう言う。少しながらは心配してるようだ。
「厳しいっす」
「じゃあ、すぐに冷やそう」
少し離れたところに湖があった。
ひざ下を水に浸かって5分。
「どうだい?」
「痛みが引きました」
驚く程に。普通に走れる。嘘だろ!?
「ここ、回復の湖と呼ばれてね。大体の症状はこの湖に入れば治るんだ」
「へえ、よく見つけましたね」
「まあね。第一発見者私だし」
ドヤ顔でそう言う。うーむ、この人がドヤ顔されるとすごいのかすごくないのか…。
くぅ~と、お腹がなった。うう、そういえば、昼飯抜きで動きっぱなしだったな。
お腹がなったことにミサトがくすくすと笑う。
「なにか食べよっか」
ミサトが提案する。
「…はい」
ある建物の地下に降りた。
ミサトが明かりを付けると、そこは、食料庫だった。
「おお~!!」
「さすがにパンとかおにぎりとかは無理だけど、缶詰は大丈夫。多分ここ缶詰売っていたとこかな。缶詰の量が尋常じゃないね。これじゃ何日かやってけそうだね」
「何日かやってく?」
「うん」
一方、ゲートをくぐった皆様は…
「おほほほ~!!」
某所三ツ星高級ホテル
「ねね聞いた?金額負担するって!この2週間分!!」
「しかも上層階に泊まれるのが1番のありがたさよ。夜景が素晴らしいわよ~」
「おお~!!」
一方
「今夜は君を寝かさないZO☆」
「意味深…」
PM9:00 夜道探索
「前回もこんな感じだったな~。いや~楽しみ!」
電気が通っていない大阪。電灯は点いていない。こんな暗さは恐怖感を増す。時々、ゾンビの「ウァ~…」といううめき声が俺を脅かす。それなのにこんなわくわくしているなんて、どうなったらこんな性格になるんだ…?
朝
「おはようございます。中の人は今どうなっていますか?」
リーダーが管理人に話しかける。中の人とは、鉄矢とミサトともう一人のこと。
「ん」
管理人がリーダーにタブレットを渡した。
「…1人死んだか…」
腕時計はGPS機能も搭載している。また、脈拍も測っており、死ぬ、時計を外すなどすれば測定は0になり、死亡したと発信する仕組みになっている。
「いやあ、気持ちいぃ~」
回復の湖に2人が浸かる。
「冷水なのが残念でしたけどね」
「贅沢言わない」
昨晩、徹夜でゾンビを討伐していた。疲労困憊、でも、この泉につかれば、疲れもあっという間に吹き飛んじゃう!同じ効能の入浴剤があれば買い占めたい。
DAY1終了時点 死者 4名 残り46人 残り期間 13日