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ストライク・アタッカー  作者: 蒼のつばさ
第二章 春→夏
13/21

episode 13

 頭から突き出たものが銃弾だと気づいたのは7人。その内、壁に隠れたのは5人。次の襲撃に備えるためにだろう。残りの2人はゲートをぬけ、飛んできた方向に走っていった。その2人がミサトと鉄矢だった。鉄矢はなぜ走り出したのかはわからない。が、走ってる今、こう考えた。あの原因となるものを潰さなければ、あいつらは先に進めないだろう、と。聞き方によっては侮辱しているかのように聞こえる。しかし、実際そうなのだ。鉄矢はゲートが開く前から警戒していた。この作戦に参加した人の90%が帰ってこないのなら、初めから何か仕掛けてくると推測したのだ。多分銃弾が見えた5人も同じ考えを持っていただろう。そう、鉄矢は冷静だった。

 ならしかし、あの時驚いたのか。

 なぜか、一瞬自分を客観的に見たのだ。「ゾーン」と呼ばれるものなのだろうか。こんな経験、初めてだからそうなのかどうかはわからないが。

「この道の突き当たりの建物の中にいるはず」

 ミサトがそう言う。なぜそう言えるのか。多分、飛んできた方向に加え、角度も計算したんだろう。

「逃げませんか?」

「いや、ゾンビだから逃げ足遅いよ」

「なるほど」

 建物内に入り、10階に登ったところで、ライフルを持ったゾンビを発見した。しかし、鉄矢はゾンビを殺すことを躊躇ちゅうちょ)した。ゾンビは、全身がコケが付着したような色の肌をし、片目は取れていて、もう片方は見開いていた。口からは唾液を垂らし、吸い込もうともせず、ぼーっと歩いているだけだった。初めて見るゾンビの姿に恐怖さえ覚えた。にも関わらず、ミサトはそのゾンビの首を素手で切った。

「急所は人間と同じだよ」

 ミサトは、俺がどう殺せばいいか迷っているように見え、優しく教えてくれた。やっぱ頼もしいな、この人は。

「そ、そうですか…」

 でも、そうじゃない。迷ったのではない。

「これよりもひどいのは何十人も見てきたよ」

 ミサトが俺の考えていたことを察したかのように話す。

「片脚がない人。両腕がない人。頭が少し欠けていた人。そんなのが当たり前のように出てくるよ。最初は私だって躊躇したさ。初めて見て驚いたのもあるけど、元は大阪市民なんだよね、皆。当たり前にある明日が急になくなった。ゾンビになった今でもこうして頑張って生きてるんだ。だから、」

 そう言いかけると、殺したゾンビに向かって手を合わせた。

「同じ人間。殺したらいつもこうしてるよ」

 ミサトがとった行動は、追悼。

 鉄矢が、SAMの依頼で、いつも殺さないのは、ミサトが言ったことと同じ理由だった。だから、鉄矢もミサトと同じ行動をとった。

 追悼を終えると、ミサトは話した。

「なんで90%もここから帰って来ないのか、話してあげよう」




 適当な部屋を見つけ、窓を開けた。

 空は青く、地面のコンクリートは、所々ヒビが入っていた。植物も生え放題だった。

「なぜ成功できないのかわかる?」

 ミサトが問いかける。

 あの弱さなら普通5人くらいでなんとかなりそうだよな…。

「…数の差ですか?」

「半分正解」

 そう言って指でバツを作った。

「半分?」

「三角と言うべきかな…。まあ、正解は兵力の差なんだよね」

「兵力?」

 鉄矢がそれでも理解出来てないことにミサトはくすくすと笑った。

「それじゃあ、最初の作戦から話そう」



 第1回は、自衛隊が参加したんだよ。

 途中まで順調だったんだけど、1、2人が油断してやられた。ゾンビ感染知ってると気づかず全員やられ、自衛隊が持ってきた武力が、根刮ぎ持っていかれた。

 それからは、まさか武装してるとは思わないと油断してやられた。

 しかし厄介になったのはそれからだったんだ。

 魔法使いがゾンビ化しても能力が使えてね、威力は小さくなってるらしいけど、かなり苦戦するらしい。



「わかった?」

「はい、だいたいは」

「よろしい」

 にっこり笑ってそう話す。

 外からはドーンと爆発音が遠くから聞こえた。

「そろそろ行きますか」

 ミサトがそう言って立ち上がる。

「はい」



 しばらく歩くと、商店街が見えてきた。

「あの商店街は、多くの人で、埋め尽くされてたんだけどね…今じゃ何も残ってないや」

 その商店街には数体ゾンビが歩いていた。

「大阪出身ですか?」

「いや。観光に何度かここを訪れただけ。さあ、いくよ!」



「本当に、何もありませんね」

 ゾンビを全て殺してそう言った。

「自由に動いていいすか?」

「ん、構わないけど、時間になったら帰ってきてよ?」

 心配そうにそう言う。

「大丈夫です」

 そう言って歩き出す。



 100年後、いや、1000年後にタイムスリップしたかのような気分だ。地球が侵略されたように誰一人として「人」がいなかった。大阪なのに。「人」の形をした生物ならうじゃうじゃ沸いてるけど。

 随分とほったらかしにしているせいか、またはゾンビが住み着くようになったからかはわからないが、見たこともない植物が生い茂っていた。

 風も吹いていないのにゆらゆら動く植物。7色の花びらをもつ花。まるで倍速で見ているかのように成長している草。とても幻想的だった。

 記念にと1本の花を摘んだ。その花からは、砂糖、はちみつ、ジャムなどなど、いろんな甘い匂いがした。

 しばらくここで休憩をとることにしよう。ここまで来るのに何人成敗したか…。成敗って言い方も変だな。殺したをオブラートに包んで言ったけど意味が…。

「ころ~し~たぁ~♪」

 いやいや、確かにオブラートに包んだけど。そうやって気分を落ち着かせる。

 ここに来る前、ゾンビを討伐…これがいいな。討伐した他に血がついた財布を1つ拾ったのだ。その中に、この財布の所有者であろう人物(女)と男が腕組みして笑ってる写真、プリクラが入っていた。道端に落ちてるということはきっと、襲われたのだろう。

 ふと、ミサトさんの言葉を思い出した。

「当たり前にある明日が急になくなった、か」

 まだ「人」として生きている時にやりたいことたくさんあっただろうに…。

「君たちの墓場はここが、似合ってるよ」

 そう言って、綺麗な(そして奇妙な)花がたくさん咲いているそばに、その写真を置いた。

 いい仕事したなと立ち上がる。

 ふと後ろを振り向くとゾンビの大群が…。

 数えて30強?

「マジすか…」




 先ほどまでは幻想的な場所が一瞬で残酷な場所に変わってしまった。

 色とりどりの花に赤色が多く加わった。

「やっぱここは向いてないな」

 そう言って写真を取る。

「もっといいとこ探そうな」




 しばらく歩いた。奥のほうなら先ほどと同等、またはそれ以上の場所があるのではと、なんの確信もないのに歩き続ける。しかし、先ほどの場所がまるで市が運営する公園かのようにあの場所と似たような場所が見当たらなかった。

 日も暗くなってきた。そろそろやばいと腕時計を見ようとしたとき、

『ピピピピピピピピピピ!!!』

「なッ!?」

 もう10分前!?もっと時間を気にしていればよかった…


「時間になったら帰ってきてよ?」


 う~、ミサトさんに確実に怒られるなぁ…。

 方角は…南の方か。ダッシュで行けばギリギリ行ける…か?

「いや、考えてる時間なんてねーぞー」

 そう自分に言い聞かせて走り出す。

 当然、普通に走っても、スピード・体力が持たない。なので、赤目の力を借りる。

 


 いやーやっぱ赤目すげーわ。ボ○ト選手なんて敵じゃねぇな。ハッハッハ。

 そう思いながら左に曲がる。300m程の一本道。先にはT字路。

 が、向こうの方からゾンビの群れが…100…200?200!?

 待てまてマテ、あの数じゃ一人じゃ無理だって!

 後ろへ方向転換すると、そちらの方からもゾンビの大群が…ハサまれたァァ!!!

 どうするどうする?

 焦っている時、後方から爆発音がした。

 振り向くと、50階はあるであろう高さのビルがこちらに倒れてきていた。

 横幅はちょうど道と同じ幅。逃げようにもゾンビで挟まれている。

 どうすれば…!?



 ビルが地面に倒れた。

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