episode 12
1週間後 作戦実行日
「2人来てないぞ」
集合時間まで5分前。にも関わらず、鉄矢が来てなかった。そのことに対し、10分前から来ている人たちはイラついていた。
「チャレンジ枠の人、ちゃんと仕事するんだろうな?」
男性A(仮)はミサトに話しかける。
「期待しててくださいよ」
「へえ。そんな奴が遅刻するのか」
「まあ、初めてですから、きっとギリギリまで迷ってるんですよ」
「へえ」
話をしていると、鉄矢が姿を表した。
「おい、遅ぇぞ!!」「何してたんだ!?」
罵倒がすげぇ。
「すみません。道中いろいろあって…」
てか、集合時間前じゃん。何をそんなに怒ってるんだよ。
「…いまから死にに行くようなもんじゃねーか」
男性Aがわざと聞こえるような声でそうつぶやいた。
「…あ?」
「まあまあまあ」
ミサトさんが仲直りしましょうと中に入る。
睨み合った後、男性Aが「チッ」と舌打ちをし、離れていった。
「あんな人ばっかりなんですか?」
ミサトに聞く。
「いや、彼だけだろうね」
ミサトさんがそう言う。
あいつとは仲良くなれないなと思っていたとき、それを察したミサトさんが、
「大丈夫。ああいう奴はすぐに死ぬ」
と言った。フォローなのだろうか。
「でしょうね」
「ん、一人いないようだが…?」
まとめ役が人数確認の際にそう言った。
「ああ、その人事情で遅れるそうです」
ミサトがそう言った。
「ん、そうなのか」
俺より酷い奴いるじゃん…。
「んじゃ、承諾書を回収するぞ。俺のとこに持ってきてくれ」
これか、と紙をリュックから出すと、「私が持ってくよ」と紙を奪われた。
「ああ、ありがとう、ございます」
目的地まではバス移動だった。進むにつれ、人気がなくなってきた。
窓からの景色に必ず入るのは、ど高い壁。ベルリンの壁もあんな感じかな。
バス内の、ピリピリした空気が嫌になって、バスの心地よい揺れに身を任せ、眠りについた。
「着いたよ」
隣にいたミサトさんが寝ていた俺を起こしてくれた。
「あぁ、はぃ…」
バスから降りると、進撃の○人に出てくる壁が目の前にあった。あれ、まだ夢見てるのかな。いやでも、夢の中でこれは夢なのかと思った試しがなかったので、現実だということを痛感した。
「ほい、いくよー」
ミサトさんがそう言って手を掴んで前に進む。
ゲート前には小柄な女性が1人立っていた。
「来たようだね…て、1人いないね」
女性はひと目でそう言った。って待て待て、全員いたとして50人はいるんだぞ。どんな目してんだ。
いやいや、魔法使いがいるんだから、そんな魔法使ったんじゃないの?鉄矢くん。
心の中を読まないでください。ミサトさん。
「事情で遅れるそうです」
代表がそう伝える。
「ふぅん。まあいいや。じゃ、説明するよ」
今回は男子42人女子8人、計50人(今現在1人欠席)の参加。
期間は2週間。
ゲートが開閉するのは朝10時と夜の6時の2回だけ。それ以外はどんなことがあっても開けない。
承諾書のとおり、たとえ死んでもこちらの保証は一切しない。
「今の説明に賛成の人だけ、これ取っていって」
そう言って紙袋を床に置いた。
中には腕時計が入っていた。
「それ、現在時刻と、仲間の居場所、ゲートが次開くまでの時間が表示される。あと、ゲートが開く10分前にアラームが鳴るから。あと、仲間がなくなったらアラーム鳴るから。そーゆー性能ついてるから、それつけていってね」
その説明の後にみんなが付け始める。
「ゲートが開く1分前。皆、前に立って」
みんながゲート前に立つ。
「…空いたと同時にしゃがんで」
ミサトさんが耳元でそう呟いた。
「え?」
「いいから」
3、2、1、
OPEN!!
と、同時に俺とミサトさんと、数名がしゃがむ。
しゃがんだと同時に、前にいた数名が頭を何かで打ち抜かれた。
「…!?」
DAY1 スタート