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Anniversary〜彼の場合〜《SKY WORLD 番外編》1

SKY WORLD本編終了から10年後のお話。

舞台はグレートルイス、シアンとデイー二人のその後です。

「閉廷」


 ジャッジ・ガベルを振り下ろして裁判官が言い終えた。


 褐色の肌を持つキエスタ人青年デイーはホッとして、軽く息をついた。


 終わった。

 初めて弁護を担当した公判。


 依頼人は、小売店のレジから窃盗を繰り返していた二十二歳の男。

 判決は懲役二年。

 まあ、予想通りだが、それでもやっぱり緊張したし、とにかく無事に終わって良かった。


「お疲れ」


 ウェーブのかかった金髪を後ろでまとめ、赤い縁の眼鏡をかけた女性が弁護人席で立ちつくしたままだったデイーの背中をたたいて声をかけた。デイーは振り向く。


「ありがとう」


 彼女は、ロースクールで同期だった女性だ。今日彼女もここで、仕事があったのだろうか。傍聴席で聞いていてくれたのか。


「初めてにしちゃ、上々だったんじゃない? ……またね」


 彼女はデイーを見上げて微笑むと、背を向けて去った。

 彼女はロースクール時代から、学内唯一のキエスタ人であるデイーになにかと気をかけてくれた。……それは、彼女が自分に気があるせいだとは、デイーには全く気が付かなかった。


 デイーはもう一度安堵のため息をついて、鞄に書類を入れた。――



「よう、おにーさん」


 法廷を出た途端、待ち構えていたかのように背後から声をかけられた。

 振り向くと白いシャツと黒いパンツを着た目を見張るような美女がデイーを見て立っていた。

 黒い短髪に黒曜石のような瞳。雪のように白い肌は彼女が北の国ゼルダ出身だから。


「似合うね。眼鏡とスーツ。……そこまで上手く着こなせるの、キエスタ人でお前くらいのもんじゃねえ? デイー」


 シアンは腕を組んでこちらを見たまま、やわらかく微笑して言った。


「シアン」


 デイーは目を見開いた後、次の瞬間鞄を下に落として、笑顔とともに彼女を抱き上げた。


「来てくれたんだ。俺のこと、見てた?」


 はは、とデイーは彼女を見上げる。


「……ちょっと……こら、恥ずかし―からやめなさい」


 シアンは周囲にいる人の視線を気にして、あわててデイーの肩をたたく。

 デイーは、うれしさのあまり聞こえず、彼女を抱き上げたままその場で回った。

 周囲の人々は、ほほえましそうにその様子を見つめる。

 シアンはあきらめたようにため息をついて、デイーの頭に手を置いて見下ろした。


「なかなか、かっこよかったじゃん。見直したぜ」


 最高のほめ言葉をもらった子犬のように、デイーは顔をほころばせた。―――




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