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旅立ち

「子供がお腹にいます」


 夕食時。

 あたしは席を立ちあがり、テーブルについている皆に言った。


 いきなり告白したあたしに驚き、トーラ先生と兄弟子にいさんたちは食事の手を止め、あんぐりと口を開いていた。


 そうなのよ。

 出来ちゃったのよ。


 アレがこないし、だるくて眠くて仕方がないし、そうしたらだんだんムカついてきて……。


「聖職者が子を孕むなんて、あるまじきことです。あたしを破門にしてください」


 兄さんたちがどよめいた。


「何を言うんだアネッテ! 君のせいじゃない!」


 立ち上がって叫んだのは、あたしと一番近い年の兄さん。


「何もかもギールのせいだ。君が悪いんじゃない。君がここを去る道理はない」


 ありがとう兄さん。

 あたしのためにそう言ってくれるなんて。


「ここに居なさい。その子供は、私たちで育てよう。心配しなくていい」

「ここを出て、一人で育てるなんて無理だ。親子二人で路頭に迷うのか? 」

「君には親族がいない。何処に行こうというんだ」


 口々にあたしに言葉をかけてくれる兄さんたち。

 本当に、いい兄さんたちを持つことが出来てあたし幸せよ。


「アネッテ」


 トーラ先生が言った。


「その子は、神の子供だ。私たちの子供だ。恥じることはない。君が望むなら、末席から君の名を外そう。だが、去ることは許さない。ここに居なさい。私たちと共に」


 トーラ先生。

 あたしは思わず涙が出そうになった。

 兄さんたちは先生の言葉に頷く。

 ありがとうございます。先生、兄さんたち。


 でも。


 あたしはトーラ先生の右隣に座るメイヤ兄さんを見た。

 兄さんは黙ってうつむき、テーブルを見つめていた。


 そうよね。

 罪悪感に苛まれるわよね。

 もしかしたら、自分の子なんじゃないか、て。


 ……100パーセント、兄さんの子、なんだけどさあ。はは。


 ……ごめんなさい、笑いごとじゃないわよね。


 ……参ったわ。


 私もまさかあの一回で出来ちゃうなんて思ってもみなかったし。


 あー、あたしも罪悪感たっぷりよ。


 兄さんに余計な憂いを与えちゃうなんて。

 考えが足りなかったわよね。ごめんなさい。

 兄さんにのせいじゃない。あたしの責任、よ。本当に、やっちゃったわ。

 腹くくんないとね。……


 あたしは背伸びして声を張り上げた。


「ありがとうございます。でも、私にはこの神の家にいることが耐えられそうにありません。どうか」


 あたしは頭を下げた。


「破門にしてください」


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