〜Desire〜
…俺の存在に…気付いてくれ…
『こんにちは!!』
明るい少女の声が店内に響き渡る
『あら、久々ね!!』
…どうやら常連客らしい…
…どうせ俺には気付かないよな…
静かだった店内は少女の存在によって一気に華やいだ
『結婚式が多い季節でしょう?手を休めて話せなくてゴメンなさいね?』
『いいんです。造花のブーケって需要が高いんですね、初めて知りました。』
…ブライダルブーケ…
…本当は、俺だってそうなる筈だったんだ…
約30分後、店内を物色していた少女は何か注文する為にマスターの傍に近づく
『あれ?マスター、こんな所に赤いバラが…』
そう言って、俺を拾いあげてくれた
『綺麗〜、マスター、商売品を粗雑に扱ったらダメですよ〜。』
……気付いて、くれた………
『あの人も…よくバラを贈ってくれたっけ…』
憂いを含んだ微笑みで俺を見つめる少女
『ね、キミ、ウチにおいでよ。マスター、これ下さい。大切にしますから』
『あら、床に落ちていたのよ?いいの?』
『バラには変りませんし、一目惚れしたから。お幾らです?あ、すみません、このバラ、ラッピングして下さい!!今まで床にいたなら、綺麗に飾られたかったでしょうし。』
……これは、夢………?
……俺で、いいのか……?
『マスター、綺麗にラッピングして頂いてありがとうございました』
『いいのよ。こちらこそゴメンなさいね?次回から管理に気を付けるわ』
『じゃ、また来ますから。失礼します。』
少女は元気よく店を出てから、微笑みつつこう言った
『キミも今日から私の家族だよ!!宜しくね?』
……ありがとう、気付いてくれて……
……俺…今日から一生お前の為だけに咲き誇るから……
……命別つ時まで、永遠に……
〜了〜
HPで評判の良かった作品です。感想頂けたら幸いです。