博多美人
たつやは春の嵐が吹き荒れる夜の博多のビジネスホテルのフロントである女を目撃していた。
午後11時30分頃。彼が祖母の介護のため前日から博多入りしていた父と手配してくれていたホテルのフロント横のテーブルでブルーベリーティーを飲んでいるのを後悔している時だった。目の前でニヤけながら指を差す父。何事かと後ろを振り返ると制服姿のCAが5人ほどいたのだ。彼女らはスーツケースを転がし、チェックインを終えると嬉しそうにアメニティを取り出した。そしてエレベーターへと消えて行った。この時、彼女たちの裸を見てみたいと思った。
「この眼鏡をかけて大浴場に入ってスマホに送信してくれるか?」と突然、父が娘のリカに言う。
血は争えない。
考えていることが同じなのだから。
何もしゃべらずとも父が代弁してくれる。
テレパシーにも似たようなものだった。
そして何も表情を変えずに眼鏡を受け取るリカ。
黒縁の眼鏡だ。
「こんな眼鏡かけて入ってたら明らかにおかしいよな」と他人事のように父が笑う。
それに反応せず彼女は大浴場へと向かった。
ほどなくしてスマートフォンに大浴場の様子が映し出された。期待を裏切らないつるつるのお尻にふわふわの乳房。そこに陰毛がひっそりと添えられていた。
目の前の父はニヤニヤしながら画面を指先で拡大させたり画面を明るくしたりしながら釘付けになっている。「プリップリやなあ」
そう言っているとリカが戻ってきた。
父が1万円札を手渡す。
たつやは部屋に入ると、ベッドの上で盗撮したCAの裸が映し出された録画の画面に向かって勢いよく射精した。
「オナニーしてきたんか?」
フロントに戻ると父がティーバッグを指先で上下に揺らしながら紙カップの中を覗きこむようにしていた。
「もし弁護士になったらCAと結婚できるかな?」
「そりゃ弁護士なったらお尻振って寄ってくるんちゃう?」
そう言い、顔のシワを伸ばしながら笑う。
「今、CA部屋で何してると思う?」
「オナニーか?」
想定していた通りの答えに思わず頬が緩む。
すると紙コップに入っている液体を覗き込みながら父が突然笑い出した。
ヒッヒッヒッと、しゃっくりにも似たような笑い方をする父。
「そういえば、お父さん自分のおしっこ飲んどったなあ」
「おしっこ飲むのが健康にいい言うて、、、」
梅雨が明けて夏が来た。
もうすぐ父から博多への誘いを受けるだろう。
そして今回は太宰府天満宮にでも行ってみたいとたつやは思った。




