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シャッターの向こう側  作者: 双鶴


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第6話 『告白の投稿』

【SNS投稿】


今日の一冊:『夜の観察者たち』


都会の片隅で起きた“誰にも気づかれない事件”を描く短編集。

犯人も被害者も、通りすがりの人々も、

誰も自分が“物語の中心”だとは思っていない。


静かな街の影に潜む、ささやかな違和感。

その違和感が、やがて真相へとつながっていく。


日常の中の“見落とし”を拾いたい人へ。


#DelusionAndDeduction #短編集 #静かなサスペンス



【コメント欄】


@night_reader

「この本、前から気になってました。買いに行けるかな。」


@city_shadow

「“気づかれない事件”って、現実にも多いですよね。」


@shadow_reader

「見落としは、時に最大の手がかりになる。」


@anonymous_13

「この短編集、最後の話だけ“視点”が違います。」



【妄想(Delusion)】


“最後の話だけ“視点”が違います。”


そのコメントが、今日の店内の静けさに妙な重さを落とした。


視点が違う。

語り手が違う。

同じ事件でも、見る角度が変われば真相も変わる。


もし、最後の話だけが――

“犯人の視点”だったとしたら。


拓哉はノートを開き、書き始めた。


「語り手が変わる瞬間、物語は静かに裏返る――」


文字が、店内の薄暗さに吸い込まれていくようだった。



【日記(Deduction)】


今日は客がゼロだった。

売上もゼロ。


数字は残酷だ。

昨日のゼロが、今日もゼロで、明日もゼロかもしれない。


棚に並べた本たちは、まるで“誰にも発見されない証拠品”のように沈黙している。

SNSだけが騒がしくて、現実の店は静かすぎる。


閉店後、スマホを見つめながら、ふと思った。


――もう、隠す必要はないのかもしれない。


僕は深呼吸して、投稿画面を開いた。


【SNS投稿(追加)】


正直に言います。

経営ヤバいです。

是非、店にも来てください。

本当に、来てほしいです。


投稿ボタンを押した瞬間、心臓が跳ねた。

恥ずかしさと、情けなさと、少しの期待が混ざった。


数秒後、通知が鳴り始めた。


@night_reader

「行きます。近いうちに必ず。」


@comic_collector

「正直でいいと思います。応援してます。」


@shadow_reader

「弱さを見せることは、強さの一部だ。」


そして――


@anonymous_13

「明日、行きます。」


その一行だけが、他のどのコメントよりも重く響いた。


Delusion and Deduction。

妄想と演繹。

今日もその二つの間で揺れながら、シャッターを下ろした。


――売上ゼロ。でも、明日は誰かが来るかもしれない。


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