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シャッターの向こう側  作者: 双鶴


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第1話 『霧の回廊を歩く』

【SNS投稿】


今日の一冊:『霧の回廊を歩く』


山間の廃寺を巡る写真紀行。

どのページにも、静かに沈殿した“事件の予感”が漂っている。

特に、回廊に差し込む一筋の光は、

まるで真相へ導く手がかりのようだ。


風景そのものが語り始める瞬間を味わいたい人へ。


#DelusionAndDeduction #秘境写真集 #サスペンスの舞台



【コメント欄】


@old_mountain

「この廃寺、若い頃に行きました。夜は本当に何も見えません。」


@jk_mystery

「怖いけど行ってみたいです。友達は絶対ついてきてくれないけど。」


@shadow_reader

「光はいつも真相を照らすとは限らない。」


@local_guide

「この写真、実は加工されてるって噂ありますよ。」



【妄想(Delusion)】


“光はいつも真相を照らすとは限らない。”


その言葉が、閉店後の薄暗い店内に残響のように漂っていた。


もし、この廃寺で事件が起きたとしたら――

光は手がかりではなく、むしろ“犯人が仕掛けた罠”なのかもしれない。


加工された写真。

夜は何も見えない廃寺。

行きたがる女子高生。


バラバラのコメントが、

まるで別々の証言のように、ひとつの物語の輪郭を形づくっていく。


拓哉はノートを開き、静かに書き始めた。


「廃寺の回廊に差し込む光は、真相を隠すための偽装だった――」


妄想は、現実よりも鮮明で、残酷で、そして美しかった。



【日記(Deduction)】


開店初日。客は三人だった。

売れたのは、推理漫画が一冊だけ。


駄菓子屋の名残が残る狭い店内は、思っていた以上に静かだった。

棚に並べた古城の写真集も、毒物の基礎知識書も、

まるで“まだ出番を待つ証拠品”のように沈黙していた。


それでも、SNSのコメント欄は今日も賑やかだった。

現実の店は静かで、SNSの中だけが騒がしい。

そのねじれが、少しだけ可笑しくて、少しだけ胸に刺さる。


でも、コメントの一つひとつが、

僕の中の“妄想”を刺激してくれる。

そして、妄想があるから、店を続けられる気がする。


Delusion and Deduction。

妄想と演繹。

今日もその二つの間で揺れながら、シャッターを下ろした。


――初日の売上は1,100円。

でも、心のどこかで、確かに何かが始まった気がした。


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