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シャッターの向こう側  作者: 双鶴


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17/17

最終話 第16話 『シャッターの向こう側』

【SNS投稿】


今日の一冊:『終わりの先の物語』


物語が終わった後、

登場人物たちはどんな日々を生きるのか。


“終幕のその先”を描いた短編集。

終わりは終わりではなく、

静かな始まりでもある。


#DelusionAndDeduction #終幕の先 #静かな物語



【コメント欄】


@uni_reader

「今日行きます!最後まで応援してます!」


@night_reader

「この本、タイトルだけで泣きそうです。」


@shadow_reader

「終わりは、始まりの影にすぎない。」


@anonymous_13

「今日、行きます。」



【妄想(Delusion)】


“今日、行きます。”


その一行が、

胸の奥に静かに沈んだ。


今日は、店の最終営業日。


家賃は限界で、

SNSの反応も落ち、

常連の彼女も最近は来られない日が続いた。


拓哉は、

静かに、静かに決めた。


――ここで終わりにしよう、と。


棚を拭き、

レジを整え、

最後の投稿を終えた。


扉のベルが鳴くことは、

もうないかもしれないと思いながら。



【来店】


午後三時。

扉のベルが鳴いた。


大学生の彼女だった。


「……今日で終わりなんですか。」


拓哉はうなずいた。


彼女はしばらく棚を見つめ、

一冊の本を手に取った。


『終わりの先の物語』


「これ、買います。

 ……また、あなたの選ぶ本に会いたいです。」


その言葉は、

涙になりそうなほど温かかった。


彼女が帰ったあと、

店内は再び静かになった。


そして――

夕方、扉のベルが鳴いた。



【再会】


黒いコートの男が立っていた。


無言で会釈し、

ゆっくりと店内を歩く。


写真集の棚。

科学本の棚。

映画原作の棚。

推理漫画の棚。

地図の棚。


一つひとつを、

まるで“記憶をなぞるように”見ていく。


そして、

駄菓子屋時代の名残である古い木枠に手を置いた。


指先で、

そっと木目をなぞる。


「……ここ、変わってないな。」


その声は、

懐かしさと後悔が混ざったような響きだった。


レジの前に立ち、

静かに言った。


「……拓哉。」


その瞬間、

拓哉は息を呑んだ。


父だった。


「ずっと、見ていた。」


その言葉は、

これまでの @anonymous_13 のコメントと重なった。


「助けたかった。でも……

 どう助ければいいか、分からなかった。」


父は、

初めて弱い声を出した。


「お前が“経営ヤバいです”って投稿した時、

 来るしかないと思った。」


拓哉は、

何も言えなかった。


ただ、胸の奥が熱くなった。



【日記(Deduction)】


今日は客が二人だった。

売れたのは二冊。


でも、数字はもう関係ない。


父が @anonymous_13 だった。

ずっと、見ていた。

ずっと、気にかけていた。


不器用で、

言葉が少なくて、

どう近づけばいいか分からない父らしいやり方で。


店は今日で終わる。

シャッターを下ろす音が、

妙に大きく響いた。


でも、終わりではない。


父と歩く帰り道、

商店街の灯りが少しだけ温かく見えた。


Delusion and Deduction。

妄想と演繹。


この店の物語は終わった。

でも、僕の物語はまだ続いている。


――シャッターの向こうに、

  まだ続きがある気がした。


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