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シャッターの向こう側  作者: 双鶴


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16/17

第15話 『交差点』

【SNS投稿】


今日の一冊:『微光の地図』


夜の街を歩きながら、

“かすかな光”だけを頼りに描かれたエッセイ集。

街灯の下、コンビニの前、

誰かの部屋の窓から漏れる光。


弱い光が、

人の心の輪郭をそっと照らす。


#DelusionAndDeduction #微光 #夜の街



【コメント欄】


@uni_reader

「今日、友達連れて行きます!みんな気になってて!」


@night_reader

「この本、タイトルだけで好きです。」


@shadow_reader

「微光は、闇の中でこそ意味を持つ。」


@anonymous_13

「あなたの店は、まだ“真相”に触れていない。」



【妄想(Delusion)】


“真相”


その一語が、

今日の店内の空気を一瞬で変えた。


真相とは何のことだろう。

店のことか。

僕のことか。

過去のことか。

それとも、まだ見えていない“何か”のことか。


胸の奥に、

小さな針のような不安が刺さった。


でも、今日はそれを考える暇もなかった。



【来店】


扉のベルが鳴り続けた。


大学生の彼女が友人を二人連れてきた。

映画原作棚の男性も来た。

さらに、SNSを見たという女性が一人。


店内に“人の気配”が満ちる。

笑い声、ページをめくる音、

本を手に取る指先の動き。


拓哉は、

この光景をずっと見たかったのだと気づいた。


結局、今日は五冊売れた。


『微光の地図』

『夜更けの手紙』

『湖畔の残響(原作版)』

『名探偵ミナトくん(第1巻)』

『静物たちの午後』


レジの数字が、

久しぶりに“現実の希望”として胸に響いた。



【日記(Deduction)】


今日は客が五人だった。

売れたのは五冊。


開店以来、

こんなに人が来た日はなかった。


大学生の彼女が友人を連れてきてくれた。

みんな楽しそうに本を選んでいた。


店が“誰かの場所”になっている。

その事実が、胸の奥を温かくした。


でも――

@anonymous_13 のコメント。


“あなたの店は、まだ真相に触れていない。”


あの言葉だけが、

今日の光の中で異様に濃い影を落としている。


真相とは何だろう。

僕が見落としているものがあるのか。

それとも、これから訪れる“何か”の予告なのか。


光と影が、

今日、はっきりと交差した。


Delusion and Deduction。

妄想と演繹。

今日もその二つの間で揺れながら、シャッターを下ろした。


――売上は4,290円。

  光は確かにあった。

  でも、影はそれ以上に深かった。


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