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シャッターの向こう側  作者: 双鶴


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13/17

第12話 『雨宿りの告白』

【SNS投稿】


今日の一冊:『夜更けの手紙』


深夜にだけ届く“差出人不明の手紙”をめぐる短編集。

手紙には、誰かの後悔、誰かの秘密、誰かの祈りが綴られている。

読み進めるほどに、

“言葉は届く相手を選ぶ”という事実が胸に刺さる。


静かな夜に読みたい一冊。


#DelusionAndDeduction #深夜の手紙 #静かな物語



【コメント欄】


@uni_reader

「今日、少し話したいことがあります。行ってもいいですか。」


@night_reader

「この本、気になってました。手紙の話って弱いんです。」


@shadow_reader

「言葉は、届くべき相手にだけ届く。」


@anonymous_13

「“話す”ことは、時に危険でもある。」



【妄想(Delusion)】


“話したいことがあります。”


その一行が、胸の奥に小さな緊張を生んだ。


大学生の彼女は、ここ数日ずっと来てくれている。

明るくて、よく笑って、

店の空気を柔らかくしてくれる存在。


でも、今日は違う気配があった。


“話したいこと”

その言葉の重さが、雨雲のように店内に漂っていた。



【来店】


扉のベルが鳴いた。


彼女は、いつもの笑顔ではなかった。

濡れた髪を軽く払って、

静かにレジ前の椅子に座った。


「……ちょっとだけ、いいですか。」


拓哉はうなずいた。


「家に、帰りたくない日があるんです。」


その言葉は、雨音よりも静かで、

それなのに胸に深く落ちた。


「家の空気が重くて。

 誰も怒ってないし、誰も何も言わないんですけど……

 なんか、息がしづらくて。」


拓哉は何も言えなかった。

ただ、彼女の言葉を受け止めるしかなかった。


「ここに来ると、落ち着くんです。

 本の匂いとか、静けさとか……

 なんか、“逃げてもいい場所”って感じがして。」


その言葉に、胸が痛くなるほど嬉しさが混ざった。


拓哉は、ゆっくりと言った。


「……ここは、いつ来てもいい場所ですよ。」


彼女は少しだけ笑った。

その笑顔は、雨上がりの光のように弱くて、でも確かだった。


帰り際、彼女は『夜更けの手紙』を買った。



【日記(Deduction)】


今日は客が一人だった。

売れたのは一冊。


でも、数字以上のものがあった。


彼女の言葉。


「逃げてもいい場所」


僕にとっても、この店はそうだった。

子どもの頃、家に帰りたくなくて、

駄菓子屋の隅で推理漫画を読んだあの日。


あの時の僕と、今日の彼女は、

きっと同じ場所に立っている。


@anonymous_13 のコメント。


“話すことは危険でもある”


確かに、言葉は時に刃になる。

でも、今日の彼女の言葉は、

僕にとっては救いだった。


Delusion and Deduction。

妄想と演繹。

今日もその二つの間で揺れながら、シャッターを下ろした。


――売上は770円。

  でも、今日は“誰かの心が少し軽くなった日”だった。


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