第11話 『駄菓子屋の記憶』
【SNS投稿】
今日の一冊:『少年探偵の午後』
昭和の商店街を舞台にした短編集。
駄菓子屋、文房具屋、古い喫茶店。
どれも今は少なくなった場所で、
少年たちが小さな“謎”を解いていく。
懐かしさと切なさが同居する一冊。
#DelusionAndDeduction #昭和の商店街 #少年探偵
【コメント欄】
@uni_reader
「商店街の話、好きです。今日も寄ります!」
@night_reader
「こういう“日常の謎”って落ち着きますね。」
@shadow_reader
「過去は、いつも静かに現在を照らす。」
@anonymous_13
「あなたの店も、昔は“別の顔”をしていましたね。」
【妄想(Delusion)】
“あなたの店も、昔は“別の顔”をしていましたね。”
その一行が、胸の奥に深く沈んだ。
この店は、もともと駄菓子屋だった。
拓哉が子どもの頃、
学校帰りに毎日のように通った場所。
店主のおばあさんは優しくて、
いつも「今日はどれにする?」と笑ってくれた。
そして、あの日――
家の空気が重くて、帰りたくなくて、
駄菓子屋の隅で一冊の推理漫画を読んだ。
「名探偵ミナトくん(初版本)」
それが、拓哉が“サスペンスに救われた瞬間”だった。
ページをめくるたびに、
家の重さが少しずつ薄れていった。
その駄菓子屋が閉店したとき、
拓哉は泣いた。
そして今、
その場所で自分が店をやっている。
“別の顔”
その言葉が、妙に胸に刺さった。
【来店】
大学生の彼女が今日も来た。
「この店、落ち着きますね。なんか、懐かしい感じがします。」
拓哉は少し迷ってから、
店が昔は駄菓子屋だったことを話した。
彼女は目を丸くして笑った。
「だからか。なんか“帰ってきた感じ”がするんですよね。」
その言葉に、胸が少し痛くなるほど嬉しかった。
【日記(Deduction)】
今日は客が三人だった。
売れたのは二冊。
数字は小さい。
でも、今日は数字よりも“記憶”が大きかった。
@anonymous_13 のコメント。
“昔は別の顔をしていましたね”
どうして知っているのか。
あの人は、何を見ているのか。
でも、今日はその不安よりも、
大学生の彼女の言葉が心に残った。
「帰ってきた感じがする」
僕にとっても、この店は“帰ってきた場所”だ。
駄菓子屋で読んだ推理漫画。
あの時の救い。
あの時の光。
Delusion and Deduction。
妄想と演繹。
今日もその二つの間で揺れながら、シャッターを下ろした。
――売上は1,540円。
でも、今日は“原点”に触れた日だった。




