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シャッターの向こう側  作者: 双鶴


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11/17

第10話 『観察者』

【SNS投稿】


今日の一冊:『静物たちの午後』


人のいない部屋、置きっぱなしの椅子、

読みかけの本、止まった時計。


“動かないもの”だけを題材にした写真集。

しかし、ページをめくるほどに、

そこに“誰かがいた気配”が濃くなっていく。


静物が語る物語を読み取りたい人へ。


#DelusionAndDeduction #静物写真 #気配の本



【コメント欄】


@uni_reader

「昨日の本、友達も気に入ってました!また行きます!」


@film_addict

「この写真集、映画の美術スタッフがよく参考にしてますよ。」


@shadow_reader

「動かないものほど、真実を隠す。」


@anonymous_13

「今日の棚、昨日より“左側”が少し空いていますね。」



【妄想(Delusion)】


“今日の棚、昨日より“左側”が少し空いていますね。”


その一行を見た瞬間、

背筋に冷たいものが走った。


左側の棚――

確かに昨日、大学生の彼女が友人と来たとき、

推理漫画を数冊手に取って戻した。

その時に、棚の並びが少しだけ乱れた。


拓哉は閉店後に直したつもりだったが、

微妙な“空き”が残っていたのかもしれない。


だとしても――

なぜ、それが分かる?


昨日の来店者は四人。

今日の投稿はまだしていない。

店の写真も上げていない。


“見ている”のか?

“知っている”のか?

それとも――“来ていた”のか?


拓哉は、棚の左側を見つめながら、

胸の奥に小さな影が落ちるのを感じた。



【来店】


今日は客が二人だった。


一人は、映画原作棚をよく見に来る男性。

もう一人は、地図の棚で長く立ち止まる女性。


どちらも、普通の客だった。

会話も、視線も、歩き方も。


“観察者”の気配はなかった。


それが逆に、拓哉を落ち着かなくさせた。



【日記(Deduction)】


今日は客が二人だった。

売れたのは二冊。


数字としては悪くない。

でも、心は落ち着かなかった。


@anonymous_13 のコメント。


“棚が少し空いている”


そんな細かい変化、

普通は気づかない。

気づいたとしても、わざわざ書かない。


あの人は、

店を“見ている”のか。

僕を“見ている”のか。

それとも、ただの偶然なのか。


考えすぎだと思いたい。

でも、あの来店者の黒いコートと無言の視線を思い出すと、

胸の奥がざわつく。


光が広がると、影もまた濃くなる。


Delusion and Deduction。

妄想と演繹。

今日もその二つの間で揺れながら、シャッターを下ろした。


――売上は1,540円。数字は普通。でも、心は静かではなかった。


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