空中戦
「僕が行くからアティマはまだ休んで置きなって」
「ずっと部屋の中でイライラが溜まっていたのよ。いつもいつも疲れて帰ってくるアスラを見ているだけなのは嫌なのよ」
「それにしたって一か月位は安静にしておいた方が」
「早くしないと起きちゃうかもしれないでしょ」
手を振り払って補助具も無しに飛び立ってしまう。
既に音速の壁を突破し、少し遅れて引き裂かれるような音が混じった奇妙な爆発音が聞こえる。
ナターシャがいたとしても音速を超えたことがない僕では追いつくことは出来ない。
一刻もしないうちに戻ってくる姿に驚かされる。
「まだ起きてないわよね」
「もう倒したのか?」
「当たり前よ、心配なんだもの」
そこからは、押されていたのが嘘みたいに戦線を押し上げていく。
僕らがするのはアティマが来るまでの時間稼ぎ、子供が起きている時間に来ると寝るまでの間を持ちこたえる必要がありしんどいものの、これまでと比べれば格段に楽になった。
子供が起きたかどうかもその膨大な魔力故に感じることが出来、起きた時を目指して攻められ、寝た時を目途に帰っていく。
彼方も此方も損耗が減り、命を賭けた戦いであるはずなのに弛緩した穏やかな物に変わってしまっている。
プロペラ機と人の時間制限付き鬼にごっこ、何方もがどうにも穏やかに戦争をしてしまっている。
拠点にも城が建った。
稲の国に滞在している間は見れないのが残念な点で、一時間も最高速を維持して飛べば着くんだが何かない限り難しいだろう。
その何かがあるのが現実で、しかも悪い方向に起こるのが常だ。
子供が風邪を引いて、それを看病していたアティマも風邪を引いた。
それに伴って放出される魔力量が不安定になった。
そしてそれが見逃される訳もなかった。
最近墜とせていなかった事も相いまって数百のプロペラ機が空を埋める。
魔力からそう感じただけだが。
「支度しろ、アスラ。拠点に戻るぞ」
「稲の国はどうするんだヴィクトル?守ることが稲の国が降伏する条件だったろう」
「それは俺も聞いたが、食料不足は魔力を込めた作物で解消したし、今の敵の狙いは俺たちへ移っていてここに残っていた方が危うい事は前から話し合っていたそうだ。アルテアが産まれて流石に魔力を感じ始めていたのもあったらしい」
「なるほどな、撤退の場所は?」
「上陸地点。船で下がりながら削れる機体を削るのが作戦だそうだ」
アティマとアルテアを連れて船に乗る。
数隻の船を連れて出港すれば、空を飛ぶ魔力の塊が進路を変えたのに気付く。
「数は、どのくらいだ?この距離で、俺でも感じるぞ」
ヴィクトルの苦々しい声が甲板上に抜けていく。
周りには防衛に参加していた多くの人が集まっている。
多くといっても百人に満たず、ほぼ二人一組で動くために敵の数には引き離されている。
「愚痴っていても仕方ないだろ。止めないと爆撃されて終わりだし」
「俺が飛べないからな。肉弾戦だったら負ける気はしないんだが」
自慢の筋肉を見せつけられても飛ぶようには出来ない。
後からナターシャが何かを咀嚼しながら近づいてくる。
「おんあなあうお」
「食べている時に口を開けないのは良いから、食べ終えてから口を開けて話してくれ」
しっかり右手に持っていた煎餅も腹に納めてから話し出す。
「ヴィクトルはエレナさんと飛ぶんだからそんなこと言ってたら失礼」
「正論だな。もう言わない。所でアスラもナターシャなんでエレナだけさん付けで話すんだ?他のやつには特に付けてないだろ」
「私はアスラがさん付けだったから」
二人の視線が僕に向く。
「別に大した理由じゃないが、最初のエレナさんって人見知りで壊れてしまいそうな儚さがあっただろう?緩衝材みたいな意味を込めてさん付けしてたのが取れなくなった。後は魔法もちょっと教えて貰ったのも関係してるかな」
「今の姿からは想像つきにくいか」
「ヴィクトルだってそうだろ。角とか羽はないけど見た目的には一番変わったと思うぞ」
「何それ聞いてみたい」
「帰ってからな」
レオが話し始めてのをみて切り上げる。
主に話しているのは撤退時の注意事項で、怪我を負ったら拠点に直接飛んで行っても良いらしい事や時間稼ぎが主な事、魔力が尽きる前に戻って来て欲しい事など。
説明が終わればいよいよ出発だ。
ナターシャを持ち上げて近づいてくる魔力の方向へと飛び立つ。
魔力の節約に滑空状態で向かったが、直ぐにその姿を拝むことになる。
晴れた青空の筈なのにその一角だけは菱形の黒い雲が広がっている。
雲にしては薄く綺麗な形を取るそれは敵の塊で、彼方も此方を認識して幾つかの機体が分れ向かってくる。
僕らもそのうちの一群に相対する。
何時もの様な鬼にごっこではなく、燃料消費を気にしない全速力を出され、且つ五、六機からの射撃には僕らも速度を出すしかない。
「アスラ、速度落して」
「蜂の巣にされるぞ」
「大丈夫」
やけに自信を持って言うナターシャの手には小型アンテナとは違った筒が。
「死んだら恨むからな」
信じて速度を落す。
ナターシャが空気制御にまわす魔力を切ったから落さざる得ないのが実際の所である。
筒が構えられ魔力が流されると、筒から豆より小さそうな球体がそこそこの速度で飛んで行く。
敵のプロペラ機は一瞬速度を落した様に見えたが、速度を上げてくる。
嘲笑された様に思え、ナターシャを非難してやろうとした瞬間、空に花が咲く。
放した球体が其々爆発して敵機を巻き込んでいる。
中心にいた機体は爆散し、他も翼やプロペラが損壊し、高度を落していく。
「ナニアレ?」
「ナオに貰ってきた。魔力を圧縮して放し衝撃が加わると爆発するんだって。ソラが加わっているから一応安全らしいよ」
「怖、まあ今は必要か。よし、次も頼む」
撃破されたのを見て本隊から先程の倍位が此方に向かってきている。
「もう一回は撃てるけど、あれで本当に良い?」
よくよく感じれば魔力量が大きく減っている。
「燃費の悪い武器だな。本隊を叩いた方が良いか」
接近する小隊を反転し、無理矢理速度を上げることで引き離す。
無茶な転回に視界が黒く染まるが回復したから問題ない。
そのままの勢いで弾幕を掻い潜り敵の鼻先まで近づく。
「ナターシャ」
「うん」
異変を感じた機体は離脱してしまうが多くの機体を巻き込み花を咲かせる。
鳥肌が立つほどの視線に射抜かれるが、追っ手が現れる前に離脱する。
「その武器って他の人らにも配られているのか?」
「多分無。渡された時に横にいたソラが変な顔してたから」
それって、安全じゃなかったって事じゃないか?言葉をグッと飲み込み、別の言葉を紡ぐ。
「まだ魔力が残っている人に渡しに行こう。後、使用するときの注意となかった?」
「絶対に後に撃ってと言われたかも?速度減衰が早いからか、空気の壁で起爆することがあるとか無いとか?」
「それ次の人にも伝えろよ」
さっきの攻撃で多くを巻き込めた様に思えたが、本隊の菱形が一回り小さくなった程度にしか思えない。
小隊に苦戦しながらも魔力がありそうな人を捕まえ、武器を渡し攻撃してもらうが相手の反応も良くなっている。
武器だけは失わぬように戦うが、持ち堪えられるのか。
戦闘場面書けないっス
どうしよう




