【計画案その四】『近親婚発覚・法廷闘争ルート』
「ま、待て……今度こそ本物だ! ラノベ知識じゃない、ちゃんとした『歴史知識』だ!」
コンラートは「ラノベ」という言葉にやっぱり首をかしげるが、俺は構わず話を続ける。
今度はラノベじゃない、前世で聞きかじった中世ヨーロッパの豆知識を思い出して考えた策だ。
震える手で四枚目を掲げた。
「コンラート! 【計画案その四】! 『近親婚発覚・法廷闘争ルート』だ!」
「……」
「いいか? 教会は血縁の近い結婚を厳しく禁じているはずだ! (前世の)王家ですら、離婚(婚姻無効)のためにこれを使った歴史がある!」
俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「エラーラ嬢と俺の血筋を徹底的に洗え! どこかで絶対に繋がっているはずだ! それを教会裁判所に突きつければ『婚姻はそもそも無効であった』と宣言させられる!」
これぞ、この世界の抜け道を突く、完璧な法的ハッキングだ!
俺が最後の希望に満ちた目で訴えると、コンラートは(今日初めて)わずかに目を伏せ、同情するような、あるいは呆れるような溜息を漏らした。
「……殿下。それは、我々が五年前に通った道でございます」
「……は? どういうことだ?」
「殿下とエラーラ様は、六親等の血縁にございます。当然、教会法では婚姻禁止です」
「だろ!?やった! やはり俺の知識は――」
俺の顔が輝いた瞬間、コンラートの冷徹な言葉がそれを打ち砕いた。
「ですので、婚約締結に先立ち、殿下のお父上であられる公爵様とヴァルデン侯爵は、莫大な献金と共に教皇庁へ『婚姻の特免』を申請されました」
「……と、特免?」
「はい。『我々は近親婚ですが、両家の結束のために特別に許可をください』と。二年の折衝を経て裁可が下りました。そうして三年前に婚約が成約したのです」
「な……」
コンラートは、絶句する俺にとどめを刺した。
「つまり、殿下の婚姻は『我々は近親婚です』と教会が公認した上で成立しております。今さらそれを理由に無効を訴えるのは不可能です」
(親父ぃぃぃぃぃ!! 抜け道、塞ぐどころか金払ってアスファルト舗装してやがる!!!)
アレスターは膝から崩れ落ちそうになった。 金もダメ、世論もダメ、権力(冤罪)も法(近親婚)もダメ。 もう、まともな(?)手段は残っていない。
「う……まだだ……まだ五枚目が……」 俺は、最後の、最後の羊皮紙に、震える手を伸ばした。




