表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/7

プロローグ・運命の出会い

10/22 間違って下書きを単話で書いてしまい、それを消そうとしたら本編を消してしまいました(汗

なろうの投稿システム、むずい(涙

前回の投稿、読んでいただいた方、大変申し訳ありません・・・

七歳の冬、高熱で死の淵を彷徨さまよった。

朦朧もうろうとする意識の中、「前世」の記憶が蘇る。

――薄暗いライブハウス。チープなサイリウムの光。

ステージの上で、笑顔で必死に踊る少女たち。

地下アイドルグループ「プラッチック・エデン」~作り物の、楽園。

プラッチックって関西かよ!

絶望的に売れる見込みのない彼女たちに、それでも俺は……俺だけはと、なけなしの金をつぎ込んでは推し活してた。そんな、けして報われることのないオタク生を送っていたのが、俺だった。


だが、今世の俺は―― 天蓋てんがい付きのベッド。シルクの寝間着。麗しいメイドたちから「アレスター若様」と呼ばれかしずかれている。鏡に映るのは、金髪・碧眼へきがんの美少年。

――ハイゼンベルク公爵家の嫡男、アレスター・フォン・ハイゼンベルグ。

どうやら前世とは比べ物にならない「超勝ち組」の高位貴族に転生してしまったらしい。


それから十年。今年十七歳になった俺は、公爵家嫡男アレスターとして完璧な「勝ち組」人生を歩んできた。頭の作りも勝ち組だったようで、語学から古典文学に数学から帝王学まで、修学を課された学問を完ぺきに修め、周りからも一目置かれる存在になった。そして今では、成人前ではあるが、王宮から宰相補佐に任じられている。要は、帝王学の実地研修(On the Job Training)だ。


だが…それもこれも所詮は、決められたレールの上をただ走っているに過ぎない。更に仕上げとして、三年前に婚約した、顔も見たことのないヴァルデン侯爵家の令嬢エラーラと、来年、十八歳で成人すると同時に結婚する。正真正銘、純度百パーセントの政略結婚だ。

すべては「国」のため、そして何より「家」のため。そこに自由なんて存在しない。

それについては、この身分に生まれたものの責務として、この十年で納得し飲み込めているのだけれど、ふとした時に、前世で燃した、不毛だけれど熱かった情熱を思い出してしまうのだ。


その日も、宰相補佐として王都下町のパン屋ギルドを視察していた。

今年の長雨で小麦の収穫量が減り、穀物ギルドの出し惜しみが始まっていた。その影響が、パン屋ギルドまで出てからでは遅い。

「……小麦の価格安定については、公爵領からも圧力をかけよう」

側近のコンラートに指示を飛ばした、その時だった。


店の奥から、小麦粉で頬を汚した少女が「はい、焼きたてですよ!」と飛び出してきた。アンナ、と名札にある少女が、アレスターの姿に気づき、はにかんで微笑む。


――その瞬間、アレスターの世界から音が消えた。


(う、そだろ……)

その笑顔。少し困ったように垂れる目元、歯並びを悪くしている八重歯。

(う……うさぴょんだ……!)

彼女は、前世の地下アイドルグループ、「プラッチック・エデン」の中で、俺が最推ししていた少女――「うさぴょん」と瓜二つだったのだ。


前世の「うさぴょん」は、お世辞にも華があるとは言えなかった。 平凡なかんばせ。ステージ衣装(という名のペラい布)の上からでも分かる、絶望的に平坦な体つき。 そして、幸薄い系のオーラのなさ。 ライブハウスの物販列に並んでいても、ファンから「スタッフさん、次のチェキ券どこですか?」といつも間違えられていた彼女。


目の前のアンナは、そんな不遇の推しに、瓜二つだった。


この平凡さ、オーラのなさ、この幸の薄さ加減はうさぴょんその者じゃないか!!(おい、俺、ものすごく失礼だな……)


彼女を前にして、俺の魂は打ち震えた。 この幸薄そうな笑顔こそ、俺が守ねばならなかった光だ!


(そうだ。前世の俺は、あの子を幸せにできなかった)

なけなしの金をつぎ込み、イベントに通い詰めたが、結局「うさぴょん」は売れないまま、いつの間にか引退していた。 あの時の後悔。無力感。


だが俺は、今世で「公爵家の嫡男」という圧倒的な「力」を持っている。その目の前に彼女が現れたのはきっと、世界の境界を越えた運命だ!!


この娘と結婚しよう!そしてこの娘を幸せにするんだ。

エラーラ嬢? ヴァルデン侯爵家との契約? 来年迫った結婚?

知ったことか!そんな「家」のための退屈な人生など、この「運命」の前ではちりに同じだ!


前世で果たせなかった誓い。 今世で手に入れた権力。 そのすべてが、この瞬間のためにあった。 アレスターの全身に、前世の「報われなかった」情熱の炎が、凄まじい勢いで蘇った。


(そのためには、まず障害を取り除かねばならない)


アレスターは、パン屋の少女アンナから(未練がましく)視線を剥がし、背後に控える側近を振り返った。 その目は、もはや退屈そうな公爵令息のそれではなく、熱が宿った狂信者のものだった。


「コンラート! 急ぎ屋敷に戻る! 執務室に帰るぞ!」

「は?……どうされましたか?」

コンラートが困惑した目を俺に向けてくる。

「俺は、エラーラ嬢との婚約を破棄する!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ