宝物
「姫様、昨日は申し訳ございませんでした。姫様の静止もきかず、嫌な話をしてしまって。」
会って早々に私は姫様に頭をさげた。
授業を受けてくれるのかと、心配だったが姫様の屋敷に着くといつも通り侍女が部屋まで案内をしてくれた。
神獣の言う通りに諦めなくてよかった。
また姫様が会ってくれる、それだけで嬉しかった。
頭を下げていると、姫様の足元が近づく。
そばに来てくれたようだ。
「顔を上げてこちらこそ昨日は取り乱してごめんなさい。」
顔を上げると姫様のお目元はメイクで隠してはいるが少し赤かった。
「あなたがもう来てくれないんじゃないかって不安だったの。あんな最後でもう会えなかったらって。よかった、来てくれて。」
顔を上げると姫様は安心したように笑顔を向けてくれた。
(不安だったのは私だけではなかったのか。)
姫様が拒否をしたら会えない関係と私は考えていたが、それ以前に私が会いに行かないと会えない。会いにいくのが当たり前になっていたので姫様がそう思っていたことに驚いた。
双方の気持ちが合わさってないと会えない、そんな危うい関係であることを改めて実感した。
私が姫様のことをずっと考えていたように、姫様が不安な期間は私のことを考えてくれていたと思うとすごく嬉しい。
「私も姫様とあれが最後で2度と会えなかったらと思ったらものすごく怖かったです。」
姫様を勉強机までエスコートする。
「ふふ、似たもの同士ね。」
姫様は嬉しそうに微笑んだ。
椅子に座ると教科書の上に懐かしいチャームが置かれているのに気がついた。
「懐かしいですね。」
私のはお茶会のたびにつけていたから金具のところが取れてしまい部屋で大事に保管している。
「いつもは宝物入れにしまっているんだけど、ハイロンが来てくれるか不安で。あなたが来るまでずっと握っていたの。
、、なんだか、子どもみたいで恥ずかしいわ。」
そういって姫様は顔を赤くした。耳まで赤くなっている。
暑いわと言って顔を手で煽ぐ姿が愛おしい。
宝物入れにしまっているという子どもらしいところも可愛らしい。私との思い出を宝物と言ってくれているみたいで嬉しかった。