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サイアン様の思惑

姫様との授業が終わり、サイアン様の部屋へ向かった。


サイアン様はソファーに座って書類の作成をされているところだった。私に向かいの席に座るよう指示し、自身は書類を机の端に置く。

「アフィ様のために催しを開くことになって、音楽家たちに手紙を書いてたんです。」

「サイアン様、どうして私なんかを世話役に。」

生徒ではあるが雇い主の1人である彼には職務外の仕事を押し付けられた文句は言わせてもらう。

「ごめんってリード先生。だって俺が身元保証人するには誰か成人してる世話役が必要だったんですよ。次期王子を預かるなんて大役絶対他の王子たちに任せたくなかったし。アフィ様と年が近くて信頼できる貴族ってリード先生しか思いつかなくて。」

多少罪悪感はあるようだが、表情を見るに反省はしていなさそうだ。

「父上も、リード先生の名前出したらすぐに認めてくれてさ。噂でリード先生のこと知ってたみたいで。」

「国王様がですか?」

「父上からリード先生への密命を預かってるんですよ。」

「え?」

(国王様が私に?)

サイアン様は一度、身体を正し

「この国に現在も神獣がいるとアフィディ王子に信じさせてから帰国させるように。とのことです。」

とおっしゃった。

姫様との関係を疑われてしまうリスクの高いことをしたくないと思う反面、私が選ばれたことに納得してしまった。

ユラーベットは現在アフィ殿下の働きにより勢いが高まっており、国境を広げ続けている。

ここ数百年は神獣様の存在を信じてか我が国ルリシアとは戦争をしておらず現在は同盟を結んでいる両国である。しかし、ここ150年神獣様が現れていないのは地続きであるユラーベットには当然伝わっているはずだ。

神獣様が出現しない今、姫様とアフィ殿下の結婚自体、他国に今勢いがあるユラーベットとの同盟関係は強いと示すという思惑がありサイアン様の提案を国王様も認めたのだろう。そんな中、姫様を嫁に出した状態でユラーベットに同盟を反故をされてしまったら、ルリシアとしては溜まったものではない。

そのため、国王様は現在も神獣様という脅威が今もこの国にあるとユラーベットの次期国王と言われるアフィ殿下に思わせたいのだ。それが目的なら確かに私を上回る適任者はいないだろう。神獣様の研究をしているのはこの国に私しかいないのだから。

「かしこまりました。努力してみます。」

自分が選ばれた理由に納得してしまったため、受け入れるしかなかった。この先、ユラーベットと諍いが起きるとしたら、結婚という約束を反故にさせた私と姫様のせいだ。罪滅ぼしには到底及ばないが、少しでもこの国のためにできることをしようとそう思った。

「そして、俺からもリード先生に頼みたいことがあります。」

「なんでしょうか?」

「これは王家の恥にもなるので、これも内密にお願いしたいのです。実はアフィ様の結婚相手が姉上に決まった今でさえ、自分がアフィ様と結婚したいと主張するじゃじゃ馬のような王女がこの国にいるんです。」

(つまり、自分の姉の結婚相手を奪い取ろうとしている王女がいると?)

サイアン様は私の戸惑いに気づきつつ、「恥ずかしい話ですが本当なんです」と言い困った顔をした。

「あのじゃじゃ馬は確実にアフィ様に接触しに行くでしょう。それ自体は避けられないと思っています。今更結婚相手が変わるということはないとはないと思いますが、リード先生にはアフィ様と他の王女との間に間違いがおきそうになったらアフィ様を諭してほしいのです。」

「かしこまりました。しかし、相手は王族。私に止められるかどうか…。」

「指摘されたらアフィ様なら冷静になってくれるでしょう。アフィ様に女性との浮いた話はないし、姉上だけを愛してくれると良いんですけど。」

「そうですね。」

私は心にも思わないことを同意した。

サイアン様には悪いがそうなってしまった方が姫様の自殺に説得力が増すのではないか?

しかし、腹違いとはいえ実の妹に婚約者を奪われたとなれば姫様は傷ついてしまうかもしれない。姫様が傷つくことだけは避けたいと思うのだった。


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