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真相(前編)

昨晩私たちは想いを伝え合った。

喜ばしいことに姫様も私のことを思ってくれていた。

しかし、2ヶ月半後の婚姻予定は消えないし、なぜ姫様が死のうと考えていたのかもまだ聞けていない。

あれは私を落ち着かせるために言ったのであって、私と別れたあとあの場所に戻って身を投げてしまったのではないか、この世にもういないのではないかと考えてしまう。

朝からそんなことを考えて続けていたせいで姫様のお屋敷にいつもよりだいぶ早くに寮を出発してしまった。


遠目に見える屋敷の兵たちが特にその慌てる様子はなくいつも通りの日常を送っているようでそれだけで安心する。


屋敷につくといつもよりだいぶ早い到着にも侍女たちは慌てることなく、待合室に案内してくれた。

待合室には先客がおり、白髪混じりの長い髭を綺麗に整えられている音楽教室のステイン先生が紅茶を嗜んでいた。


「ステイン先生こんにちは。」

「リード先生こんにちは。これからサイアン様の授業ですか?」


ステイン先生は姫様やサイアン様以外の王子や王女の授業を持っており、王宮に長く勤めるベテラン教師だ。授業をたくさん持っておられるので授業と授業の間に待合室でお茶をさせてもらっていると以前話されていた。


「ええ。これからサイアン様の。サリャーナ様の授業はあと2ヶ月と思うと寂しいですね」

「そうですね。」

姫様の授業は婚姻2週間に準備やら挨拶やらのため終了となる。姫様の成人を祝うパーティには我々も参加予定であとは婚姻の前日に姫様を見送るだけになる。

(実質2人で話せるのは2ヶ月ってことだよな。両想いだったとわかったのに…。)


「リード先生にとっては初めての生徒ですからね。生徒の旅立ちは寂しいものですよ。私は何度か経験しましたが、最近はもう歳で涙脆くてね。」


ステイン先生は姫様が幼い頃から担当していたそうで、ステイン先生から習った曲を姫様はよくお茶会で演奏されていた。

普段は頑張って大人っぽく振る舞っていた姫様も演奏をするように言われているお茶会ではとても緊張していて、遠くで見守る私も毎回ハラハラとしていた。私は何度も心の中で頑張れと応援していた。

近くで応援することも演奏を直接褒めることもできる立場ではなかったが、演奏後目が合うと姫様が微笑んでくれてその度に私も頑張ろうと力をもらえた。

ステイン先生も長く関わってきた姫様がご結婚で国を離れるのが寂しいのだろう、話しながら目元を抑えている。


「笑顔で見送れるように頑張ります。」

ただの生徒の婚姻であったらどんなに良かっただろうか。両想いとわかった今、笑顔で見送るのなんて出来るだろうか。


すると扉をノックする音が聞こえ

「ステイン先生、王子の準備ができました。ご案内いたします。」

と、侍女に呼ばれるとステイン先生は残りの紅茶を一口飲み、授業に向かわれた。


姫様は教師からも侍女や兵士たちからも慕われている。そんな姫様を連れ去って、私と共に反逆者とさせるなんてできない…。


(だが私が姫様に、死なずに隣国に嫁ぐようにと説得するのか?それは昨日見せてくれた笑顔を裏切ることになるのではないか?姫様が生きるということはそういうことだ。)


答えが出ない。


姫様に会う前に自分の考えをまとめたいと昨夜から思っていたが、定まらない。

そうこう考えているうちに私も姫様の授業に呼ばれたのだった。


侍女の後を追い、姫様の部屋に向かう。

いつも以上に緊張し、カバンを持つ手に力が入る。姫様はどんな表情をしているだろうか。


姫様の部屋の扉が侍女によって開かれる。

「おはようございます。」

「おはよう。」


姫様はいつものように扉の近くまできてくれており、その表情は少し固い気もするが優しい微笑みをしてくれていた。少し気恥ずかしそうに挨拶をしてくれたのをみて昨日のことを夢じゃなかったと安心した。


「では机まで。」

扉から距離のあるいつもの勉強机までエスコートし、いつもの定位置に座る。


椅子に座ると姫様と目が合う。

すると昨夜の口付けが鮮明に思い起こされる。昨夜の姫様の表情、唇の感触、息遣い。自分の頬が熱くなっていくのがわかる。それは姫様も同じようで姫様の頬も紅く染まる。

先に沈黙を破ったのは姫様だった。


「先に一つだけ聞いてもいい?」

「もちろん。」

「昨日、どうしてあそこにいたの?」


聞かれると思っていた質問だった。そのため、この答えは決めていた。

「あるお方からあの場所にいくように指示されました。しかし、その方についてはお答えする許可を頂いてないためお答えすることはできません。」

恩があるため、神獣様に誰にも言うなと言われたことを破ることはできない。しかし、姫様に嘘は言いたくない。考えた結果こう答えると決めた。

姫様は目を見開き固まった。

(きっと偶然と私が答えることを期待していたのだろう。)


「その方は姫様に害をなそうとはしておりません。」

姫様は私の言葉を答えを読み解くように頬に手を当て考え込む。私の前だから気が抜けているのか、表情を取り繕うことなく深刻そうな表情をしている。

(姫様が誰かに橋に行くことを話していたのを神獣様は聞いたのだろうか。それとも紙にかいたりしていたとか?)

神獣様に心を読んだり考えを読む能力がないことはサイアン様の考えを知らなかった時点で確信している。

「どうしよう。」

姫様はポツリと視線を彷徨わせなぎら呟く。

答えたくても答えられなくて申し訳ない。すると姫様の視線が床の一点を見つめたまま止まる。何か落ちていたのかと視線を追ったが何も落ちていない。再び姫様を見てみるが、その一点を見つめたまま動かない。まるで私には見えない何かを見ているかのように。


それは一瞬のことだった。


その場所に聞いたことのある声と一緒に白い獣が現れたのは。

「サリー、そう心配するな。私がハイロンに伝えた。」

なるべく早く続き更新します!

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