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わがまま


昨晩神獣様が最後に言ったことがずっと気になっている。

私はサイアン様の授業をしながらも神獣様の思惑を図りかねていた。

もしや、今日姫様がそこで死のうとしていて、それを止めたくて神獣様は私を呼んだのだろうか。

行ってみて何もなければそれでいい。もし本当に姫様が現れたら絶対に止める。私はあの笑顔をもう少し見ていたい。あの優しいお方が一人で苦しい思いをして死ぬなんていやだ。

何か別のものを神獣様は私に見せたい可能性もある。そうだと信じて今日は向かおう。



サイアン様の授業後で、早速先日の話題が上がった。

城の資料室で文献を探し、それを持ってサイアン様の元に来ていた。

私は昨日の神獣様と打ち合わせ通り、神獣様は酒を好んでいること、神獣祭では酒が減っていることを伝えた上で酒に毒を入れることを提案した。

「王になってから毎年酒に毒を入れていればいつかは殺せると言うことか。確かにもし神獣が現れても上手くあしらって毒の入った酒を飲ませるのもいいな。毒で死にきらなかったとしても弱りはすると思うし、そこで殺せば良いか。一度殺せば100年近くは出て来ないみたいだし。」

と、サイアン様は一応納得してくれた。13歳の少年としてはいささか物騒だが、国のトップを目指すものならこんなものだろうか。

一体陛下はどんな風にサイアン様達に神獣について伝えたのだろうか。

「今は建国後693年。それまでに神獣が現れたのが初代を含めて5回。前回現れているのが150年前の英雄王の時代。そろそろ、神獣出てきそうなんだよな。」

サイアン様はこめかみに手を当てながら「ほんとやっかい」と続けた。

こうも王族と貴族では神獣様に対する意識が違うのか。

私の周りの大人達は、神獣は存在しない、伝説だと否定するもの達ばかりだった。他の王族は知らないが姫様もサイアン様も神獣を信じている。伝説の神獣を崇めたりすることはあったとしてもサイアン様のように警戒し、殺害を考えているものはいなかった。神獣様信者の私にとってサイアン様はとても異質な存在だ。

他の王子達もこのような考えなのだろうか。

そんな中、神獣様のチャームを大事にしている姫様を助けたいと神獣様は思ってくれたのだろうか。そうだったら心強い。

「何か他にも神獣を殺す方法とか思いついたり良い情報を見つけたら教えてくれ。働き次第では俺が王になったらリード先生に侯爵の位と広い領地を授けるよ。」

「ありがたき、幸せでございます。思いつきましたらお伝えさせて頂きます。」

私はそう言ってサイアン様の部屋から出たのだった。家族は喜ぶだろうが身分なんてどうでも良い。まず、姫様が嫁がれたらサイアン様の家庭教師を続けているかもわからない。姫様のそばにいるために教師になったのに姫様がいないのでは教師を続ける意味がない。教えることは好きだが、姫様が去った屋敷に通うことなんて辛くてできないと思う。

それに姫様が死んでしまうなら、私が生きる意味なんてないのではないか。

本当はこの屋敷の上の階にいる姫様に今夜あの橋に行こうとしているのか、今夜死のうとしているのではないかと聞きたい。

もちろん授業がない日に姫様に会うことなんてできないし、神獣様にも止められているからそんなこと聞けない。


でも自殺を止めたところで私に何ができるのだろうか。連れ出してあげることもできない、見送ることしかできない私に止める権利なんてあるのだろうか。


死なせてあげることが姫様のためになるのかもしれない。自殺を止めるのは私のわがままなのかもしれない。でもまだ姫様の笑顔が見たい。あの方を失いたくない。私をおいてこの世界からいなくならないでほしい。姫様がいない世界なんて私にとって無意味なのだから。


生きて欲しい。もし姫様が今夜あの橋に来てしまったら、それだけでも伝えよう。


私は深夜に指定された橋に向かうため、急いで仮眠をとろうと寮に向かった。少し早咲きのバラの匂いが早足で向かう私の鼻を掠めたのだった。

姫様の庭の花たちは今日も綺麗だった。


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