シトラスの香り
某ラジオ番組に投稿しましたが、採用ならずでした。
高校生の部活終わりが舞台です。
放課後の学校、部活終わり
顧問:・・・以上が今回のレギュラー。それから、補欠として・・・
アキ:(うそ、レギュラーどころか、補欠にも入ってない。)
菜々美:なんか、ごめん、アキ。アキだって頑張ってたのに…
アキ:ダイジョブ、ダイジョブ。下手なのが悪いよ。次回頑張る。
それより菜々美、レギュラー入りおめでとう!
奈々美が選ばれて、私嬉しいよ。良かったね。
菜々美:ありがとう。アキの分まで頑張るからね。
アキ:うん、ガンバレ!
下校
アキ:あ、ごめん。忘れ物した。取ってくるから、先に帰ってて。
アキ、一人踵を返して、学校へ戻る
校庭にある水道場
アキ、タオルで口を押さえながら号泣
アキ:う、う、うぅ…。練習は裏切らないなんて、ウソじゃん!
私、誰より練習したのに。なんで、上手くなんないの!?
3年生男子:これでも囓って元気出せよ。
アキ、ぎょっとして顔を上げる
アキ:誰っ!? あ、3年生の先輩…?
3年男子、レモンを差し出す
アキ:あの。貰う理由ないですから!
先輩:大丈夫だよ、国産レモンで、無農薬。丸ごと齧っても、腹壊したりしねぇから。
アキ:や、そう言う問題じゃなく。
先輩:ま、いいから、いいから。齧ってみな。甘いから。
アキ:そんな、レモンが甘いわけ… 甘い…
先輩:だろ?レモンてな、究極まで疲れると甘く感じるんだよ。知らなかったろ?
二人、レモンを囓る
先輩:メンバー落ち、残念だったな。
アキ:何で知っ…
先輩:何で知ってるかって言うと、ずっと見てたんだよ。好みの子だなーって。
アキ:え…
先輩:大抵どこのクラブにもいるんだよね。俺好みの子って。
俺さ、ドンくさいのに頑張るやつって好きなんだよ。いるだろ?どこのクラブにも。
報われないことのほうが多いのに無駄な努力するやつ。
アキ:ムダって!!
先輩:レモンが甘く感じるほど頑張るやつってさ、応援したくなるんだよな。
俺が前にそうだったから。こう見えても、俺、サッカー部なんだ。
もっとも、怪我してからサッカーはもう出来ないんだけどな。
だから、今度は、がむしゃらにやってるやつを応援してやろうって決めたんだ。
で、出来ないくせにサッカー部に残ってる。
アキ:そう…なんですね
先輩:さっき、どのクラブにも好みの子がいるなんて言ったけど、
実は、女の子を応援するのは、これが初めてなんだ。
アキ:え? えぇっ!?
先輩:お前さ、諦めんなよ!諦めなければ、メンバーに残れなくても、
自分の中には、絶対何か残るからさ。
先輩、夕焼けを背に笑いかける
アキ:(やばい。立ちこめるレモンの香りの魔法で、私、恋に落ちたかも…)