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ロストデウス〜神去りし地にて〜  作者: 北乃ロバ
第2章 金の魔導士
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エピローグ

 アエルニタス大陸北中部に位置するセプトアストルム帝国の帝都フルゲンステッラは、大陸南西部に位置するファリーナと比べて随分と気温が低く、冬の訪れも早い都市だった。

 暦はまだ10月に入ったばかりで秋の範疇ではあるため、まだ雪が降るといった事はない。だが、かなり気温が下がってきており、道行く帝都の人々の服装はだいぶ厚手の物に切り替わっている。

 そんな帝都の中心地、ドラングルム城の主であるクルムレクス帝は執務室でいつもの様に執務に励んでいた。


「へ、陛下。少し宜しいでしょうか。」

 そこに、恐る恐るといった様子で年若い近侍が声をかけてくる。クルムレクス帝の執務を中断してまで声が掛けられる事は殆どない。

 何故ならば帝国において絶対権力者であるクルムレクス帝の機嫌を損ねれば即処刑という事も有り得るし、過去実際にそういった事例があるからだ。近侍が怖がるのも無理はないだろう。


「なんだ?余が忙しいのが見て分からぬのか?」

「も、申し訳ありません。ですが、今デノデラ男爵から至急陛下に取り次いで欲しいと陳情があっておりまして。・・・いかがなさいますか?」

 不幸にしてクルムレクス帝の機嫌はあまり良好なものでは無かったらしい。

 だが、面会の陳情をしてきたのは帝国内でも名の知れた狂人であったため、近侍としても顔を引き攣らせながらも尋ねないわけにもいかなかった。

「デノデラが?よかろう通すがよい。」

 一時の機嫌の悪さよりも、尋ねてきた人物に興味が向いたらしい。年若い近侍は無事に取り継ぐことが出来て、密かに胸を撫で下ろしたのだった。


「お久しぶりです、陛下。ご機嫌麗しゅう。」

「心にも無い挨拶など不要だ。デノデラ。貴様、フォディーナ王国に行っておったのだろう?彼の国では何やら騒ぎが起きたようだが。」

「お言葉通りに思う存分に素材を調達させていただき、研究も捗りましたとも。」

 不機嫌そうに睨みつける最高権力者に全く臆すること無くデノデラは飄々と答える。


「・・・ふん。それで、その研究とやらはどの程度すすんだのだ?」

「人種の意思をなくし、思うがままに操る研究は大成功です。素材を少々()()に使いましたが、ある程度の再現性は確認されております。」

「それは何よりだ。何か問題点はあるのか?」

 クルムレクス帝の質問にデノデラは顎をさすりながら思案する。

「二つほど。まず、被験対象が小人族ばかりであったため、他種族での検証が済んでおりませぬ。より完全を目指すなら全種族での実験が必要かと。つきましては、少しで構いませんので陛下に小人族以外の素材の調達をお願いしたいのですが。」

「厚かましい奴め。まあ、よかろう。手配はしておく。貴様は研究の完成に集中するがよい。二つ目はなんだ?」

「次に傀儡薬の原材料が不足しているので、補充をお願いしたいのですが。」

「傀儡薬だと?」

「今回の研究の成果物を我輩はクグツと呼んでおりまして。それを生み出す薬物ですから、傀儡薬と名付けたのです。」

 デノデラの回答を聴きながらクルムレクス帝は一口紅茶を啜ったが、執務に集中している間に冷めてしまったらしく、その渋い味に顔をしかめた。


「傀儡薬は数種類の麻薬と主に進化薬を調合して作るのですよ。進化薬の原材料は血魔石でしょう?他の材料はともかく、血魔石は吾輩では用意ができませんので。どうせ研究が完成したら、傀儡薬を大量生産するのではないですかな。」

「分かった。それも認めよう。だが、デノデラよ。貴様は役に立つ男だから多少は目を瞑るが、あまり血魔石を私的に流用しないことだ。個人的な研究に使っているであろう?余はいつでも貴様のことを見ているぞ。」

「何のことでしょうか。吾輩はいつでも陛下の忠実なしもべですが?」

 鋭い目つきでクルムレクス帝はデノデラを威圧するが、デノデラはそれを平然と受け流す。むしろ、デノデラよりも遠くにいる出入り口付近の近侍の方が威圧に当てられて顔を青くしている。


「・・・ふん。相変わらずつまらぬ奴め。もう良い。下がれ。」

 思ったような反応が無かったからか、つまらなそうにクルムレクス帝が呟いて退室を促す。だが、デノデラは動かなかった。

「・・・なんだ。まだ何かあるのか?」

「ええ。一つだけご報告がありまして。フォディーナ王国に立つ前に、出来損ないの話をしたことを覚えておりますかな?」

「覚えているが、それがどうかしたのか?」

「実は、フォディーナ王国で吾輩が実験場にしていた坑道を調査に来たハンター達の中に、例のグリフォントゥルスを倒した2人が紛れていましてな。」


「ほほう。リコ・キサラギの弟子とかいう人族もか。」

 興味をそそられたらしく、クルムレクス帝が尋ねる。

「ノールとかいう少年ですな。彼も強かったが、吾輩が1番興味をそそられたのは、出来損ないの方ですよ。いえ、今はミク・シロガネと名乗っているのでしたか。」

「普通の耳長族並に肉体的に脆弱で、魔法も使えなかったと記憶しているが。」

「それがですね。体内の魔力の流れからいって魔力による身体能力強化を使っていないはず。なのに、吾輩の人形とクグツとの戦いを見る限りアダマンタイトランクなみの身体能力を発揮していた!はは、素晴らしい。どうしたら、そのようになるのでしょう。何かのギフトに目覚めた?それとも、体内の血魔石によって耳長族とは別種の生物に進化した??・・・あぁ。身体の隅から隅まで調べたい(解剖したい)!!くく。やはり今からでも行って、捕獲するべきですかな?」


 捲し立てるように喋るデノデラに、薄気味悪いものを見るかのような目を向けるクルムレクス帝。

「相変わらず気持ち悪い奴め。貴様が出来損ないをどうしようと余が関知するところではないが、傀儡薬と進化薬を完成させてからにせよ。分かったらここから出て行くがよい。」

「はっ!吾輩としたことが失礼いたしました。傀儡薬や進化薬の研究もなかなか楽しいですからな。それでは、陛下。ご命令通り吾輩はこの辺でお暇させていただきます。」

 そう言うが早いか、軽く一礼したデノデラはもうここには用はないとばかりに勢いよく執務室を出ていく。


「・・・ミク・シロガネと言ったか。あのような狂人に目をつけられるとは、大変なことよな。」

 そう呟いたクルムレクス帝であったが、もとより然程興味があるわけではない。執務を再開してしばらくすると、元実験体の名前など頭の中から完全に忘れ去ってしまう。

 かの皇帝が彼女の名前を思い出すのは今しばらく後のことになるのだが、そのことは誰も知るよしも無かった。

これにて第2章本編は終了です。

前から書いてるように、今後は幕間を数話更新する予定です。これについては予定の全てが出来上がっているわけではなく、今書いてる途中なんですよね。

基本的にノールやミク以外の人の視点でお話を書くのですが、この作品を読んでいる人で、◯◯視点の話が読みたい!とかあるんですかね?

もしコメント等でお知らせ頂けたら頑張って書くかもしれません(*´Д`*)

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