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ロストデウス〜神去りし地にて〜  作者: 北乃ロバ
第2章 金の魔導士
25/106

プロローグ

 本日から本作ロストデウスの「第2章 金の魔導士」の更新を開始致します。

 別作を書くのに思ったより時間が掛かってしまった関係で、第1章の時ほどストックが出来てません。なので、更新頻度は1週間に2回以上を目安に行なっていきたいと思います。また、更新の時間は20時を基本とします。

 更新をお休みしている間に、どなたかが本作を評価していただいたみたいで、物凄く嬉しいです。おかげさまでワタクシのやる気はぐーんと上がりました。


 なお、「第1章 銀の少女」において、1話分の話を抜かしてUPしていた事に最近気づきました。

 第1章の「第6話 大切な弟子」と「第8話(旧第7話) 英雄の贈り物」の間に、「第7話 人為的な異常種」を追加していますので、まだご覧になっていない方は是非ご覧ください。

 というか、長い間気付かずに申し訳ありませんでした。

 アエルニタス大陸北中部に位置するセプトアストルム帝国の帝都フルゲンステッラ。

 帝国の象徴とも言われるドラングルム城の主であるクルムレクス帝は執務室で生命科学研究所の所長であるデノデラ男爵と面会していた。


「陛下。ご命令頂きました進化薬の開発ですが、普通の動物や低ランクの魔物であれば、ほぼ100%に近い確率で進化させる事に成功しています。」

「素晴らしいな。では、ゴールドランク以上の魔物はどうだ?」

「残念ながら、そちら成功率1割を切っております。どうやらランクが高くなる程に進化をさせるのは難しくなる様でして。」

 両手を上げてやれやれと首を振る姿は、とても最高権力者の前とは思えない程に横柄な態度だった。


「余は成功率を上げる様にと言ったはずだが?」

 白金の髪から覗く冷徹な瞳がデノデラ男爵を射抜く。普通なら縮み上がる程の迫力を宿したその視線に貫かれても、デノデラ男爵は少しも慌てることはなく、その黒い髪を撫で付けながら応じる。

「研究素材が少なすぎて試行回数を稼げないからですよ。それにゴールドランク以上はちょっと前まで全く進化に至っていなかったのですから、コレでも進歩しております。」

「・・・ふん。まあ、いい。それでは、例の実験はどうなっておる?」

 不満気に尋ねた皇帝に対しデノデラ男爵は眼鏡を押し上げながら答える。


「ある程度、形にはなってきましたが、こちらは被験体の方が不足しておりまして。つきましては新たな被験体を調達していただきたいのですが・・・。」

「余に要求ばかりするのは貴様くらいだぞ?・・・よかろう。そんなに被験体が欲しいのであれば自分で調達しに行くがよい。もっとも、帝国内の集落はあらかた狩り尽くしているがな。」

「と、いいますと?」

 怪訝な顔のデノデラ男爵に対して、クルムレクス帝は薄っすらと笑いながら答える。


隣国(となり)にたくさん居るでは無いか?薄汚い亜人共がな。」

「おや。よろしいので?吾輩の好き勝手にさせていただきますよ?」

 何処のことを指しているのかを理解したデノデラ男爵の眼鏡の奥に隠れた瞳に、怪しい光が灯る。

「構わん。亜人共の国がどうなろうと、余の知ったことでは無い。ふふ。彼奴らも我が帝国の糧となるのだ。存外喜んで命を差し出すかもしれんぞ?」

 自分達を排斥している国に為に命を捨てる馬鹿は居ないだろう。だが、クルムレクス帝の悪趣味な冗談に異議を唱える者はこの場には誰も居ない。


「畏まりました。被験体が大量に手に入れば、研究が捗りそうで胸が高鳴りますな。・・・そう言えば、陛下はファリーナの件の報告を受けましたかな?」

「ああ。見事にアダマンタイトランクまで魔物は進化したが、結局は損害らしい損害を与える事もできずに討伐されたと聞いている。・・・リコ・キサラギ。忌々しい女だ。」

 手にしたカップの中身を飲みながら、クルムレクス帝は吐き捨てる様に言い放つ。


「世界最強とも言われた耳長族ですか。是非とも解剖してみたいところです。しかし、今回グリフォントゥルスを討伐したのはリコでは無いようですよ?」

「何だと?」

「リコの弟子で、ノールとかいう人族の男らしいです。ですが、もう一人功労者が居るらしいのです。グリフォントゥルスの角を斬り落としたという銀髪の耳長族がね。」

「何が言いたいというのだ?」

 クルムレクス帝が眉間に皺を寄せながら尋ねる。


「初期の研究で大量の血魔石を埋め込んだものの、何ら変化が無かった個体がいたのを覚えておれますか?」

「ああ。覚えておるぞ。アレは期待外れであった。」

「量を増やせば、凶暴性や死亡確率はともかく、身体能力は大幅に上がる想定だったのですがね。あの出来損ないは生命力が異常に高いだけの貧弱な耳長族の身体のままでしたからな。アレも銀髪でした。」

 デノデラ男爵は淡々と話を続ける。


「更にその耳長族は胸に大穴があいても死なずに生きていたらしいですよ?生命力が弱い普通の耳長族ではありえません。グリフォントゥルスの角を斬り落としたのは間違いなく吾輩が出来損ないと呼んでいた識別番号無し(ネームレス)です。」

「1年前の亜人共の研究所襲撃の際に逃げ出したのだったか。」

「その通りです!研究所にいた時はそんな事は出来なかったはずなのに、何故そんな事が出来るようになったのだ?あれから1年以上経っているが凶暴性は増してないのか?・・・あぁ、解剖したい!!」

 恍惚とした表情でデノデラ男爵にクルムレクス帝はウンザリした表情になる。


「そんな事はどうでも良いから、さっさと執務室を出て行くがよい。気持ち悪い。」

「おや?吾輩とした事が、これは失礼しました。それでは、小人族の国、フォディーナ王国へ行って参ります。ふふ。思う存分研究できますな。陛下、それでは失礼します。」

 そう言って優雅に一礼をしたデノデラ男爵は、その優雅さが幻だったかのような勢いで執務室を飛び出して行った。


「やれやれ。焚き付けた余が言う事では無いが、あんな狂人に目を付けられるとは、彼の国も災難であるな。」

 カップに残った紅茶を啜りながらそう呟いたクルムレクス帝であったが、元々関心が無い国のことであったため、数分後にはフォディーナ王国のことなど忘れ去ってしまう。

 こうして小人族の国に未だかつて無い危機が迫る事になるのだが、今はまだ誰も気付いていなかった。

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