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ヘルムフリート3

 予定通りに医師団が到着すると、兄上は酷く怒りました。


「な、なんで男ばったりなんだよ」


 と。

 マクスウェル国では、かつての北西国と比べれば女性の地位は低くないとはいえ、家庭におさまり家を守ります。だから、外で働く女性なんてあまりいないのです。

 義兄上の世界では、女性が働くのが当然かのようにおっしゃいますが、僕はそれがとても不思議でした。


「レオ、折角のマクスウェル国王のご好意を、そんな風に言っては良くないわ」

「それは分かってる!分かってるんだよ。けどよ!アイツら男なんだぜ!?触診とかすんだろ!?妊婦のパティのどこを見て何を触るの!?俺がそれを許せると思う!?」

「出産時でもなければ、健康診断くらいのものよ?脈測ったり、血色確認したり?」

「それ触るじゃん!!」

「手首と顔くらいよ……」

「顔って……。めっちゃ至近距離じゃんか!それ医者絶対パティに惚れるじゃん!!」

「そんな簡単に人は他人に惚れないわよ……」

「俺は一目惚れしたよ!!」

「……」


 あ。姉上が照れちゃいました。

 義兄上はプンプンのカンカンに怒って大興奮です。


「義兄上、僕が男性の医師団を連れてきてしまってごめんなさい」

「本当だよ!?俺、ヘリーが来てくれただけでも嬉しいんだぜ?」

「コラ、レオ!」

「とはいえ義兄上、あまり姉上を困らせると体調に響いてしまいませんか?」

「ぐっ」

「それにレオ?お腹の子もあなたの声を聞いているのよ。あなたのお父様は、心が狭いですね〜」


 と、姉上はお腹をさすった。


「くうぅ、告げ口しないでくれ……。けど、けどよおおぉ」


 涙目になりながら、義兄上は姉上に抱きつきました。


「やっぱり他の男にパティを触れさせたくねえぇぇぇ!!!」


 と、諦めの悪い義兄上。

 僕と姉上は目を合わせ、ため息をつきました。


「ではレオ、こうしましょう。出産時には、予定通りお産婆さんと、一流のシャーマンたちに頼みましょう。」

「……全員女?」

「女の人を厳選しましょうね」

「……うん」

「でもね、レオ。せっかく来てくれた医師団に、何もさせずに帰らせるわけには行かないわ」

「……」

「健康診断くらいは、いいでしょう?ね、レオ」


 兄上は、下を向いて唇を噛んで、握りこぶしを作りました。


「……やっぱヤダ」

「レオ!」

「産婆に、俺とパティの子を先に触られるのもヤダ!!」

「義兄上!?」

「医者でもパティに触れさせるのは、ヤーーーダーー!!!!だめだめだめだ!!」

「えーーー」


 あまりの駄々っ子に、空いた口が塞がりません。

 あの方、昨日あれほど立派に臣下をまとめて指示を出していた方と同一人物なのでしょうか。

 戸惑いが生じます。これには流石に姉上も飽きれるのでは?と姉上を見ると、姉上は義兄上がどうしたら納得してくれるだろうと真剣に悩まれています。

 そうか、姉上がこうやって義兄上を受け止めてくれると理解した上で、義兄上は駄々を捏ねているのですね。ちょっと幼い態度な気がしますが、こうやって甘えながら距離感をはかっているのでしょうか。


「うん、わかった。レオは出産ブルーになってるんだね」

「……俺が?」

「そう。出産時期が近くなると、警戒心が強くなってるんだわ。だから他の人を近寄らせたくないのよね?分かってあげられなくてごめんね、レオ」


 今度は義兄上と僕が目を見合わせたのでした。


「そ、そうなんだよ、パティ!だから、男の医師団は断ろうぜ!」

「それはダメよ。来て貰った以上、キチンと仕事をしてもらわないと」

「仕事って!じゃあパティはアイツらに触られたいのかよ!」

「触ら……。違うわ。でもね、レオ。あなたは出産の難しさを知ってる?出産時にどれだけの命が落ちてしまうか、知ってるの?不測の事態に頼れるのは、彼らよ。残念だけど、彼らの高い技術力は、まだ北西国には無いわ」

「……うん」

「考えて、レオ。レオが私を好きでヤキモチ妬いてくれるのは嬉しい。でも、それって私と私の子の命が危機だとしても、ヤキモチ妬いてる場合かな?」

「命の……」

「レオ、私、実は初産なの」

「そ、それはさすがに知ってる」

「だから、不安がいっぱいなの」

「パティが、不安なの?」

「そう。出産の知識があっても、体験がないし、危険もいっぱい知ってる分、怖いのよ」

「……ごめん、気が付かなかった。俺は、パティに何をしてやれる?」

「今まで通り、一緒に居てくれればそれで」

「うん。一緒にいる。他には?」

「この子に、父親の良いところを見せてあげて」

「お、おう」

「それと、医師団の滞在許可と、私の健康診断を」

「許可はいいけど触るのはダメ!!至近距離で見るのもヤダ!!」

「義兄上……」

「ヘリー!お前も大好きな女が出来りゃあ分かるよ!俺のこの独占欲!!」

「こ、恋とは恐ろしいものですね」

「ううん、ヘリー。レオはちょっと人より独占欲多めよ」

「安心しました」

「なんとでも言え!!」

「レオ……」

「わかった!わかったよ!!じゃあ、健康診断許可するよ!」

「レオ!」

「ただし、俺のな!」

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