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領主

※2023.12.12にぜんわを二つに分けました

「んで、次はドコ行くんだ?」

「うん、この町の領主にね。挨拶かな?」


 お食事処を出て、土がむき出しの町の中を2人で並んで歩いていた。

昨日あれだけ騒ぎを起こしたのだ。町人がレオに気が付いてザワザワしている。

 そんな人の視線なんて、全く気にしないレオ。随分と余裕があるというか、度胸が良いと言うべきか……。


「領主?」

「そう。領主。男爵なんだけどね。この土地の本当の持ち主の侯爵から、管理を任されて領主に収まっている男よ。この町では、彼が1番偉い人って事になるわね」

「ふーん?」

「えっとね、レオは自覚無いかもしれないけど、昨日大騒ぎを起こしちゃったでしょ?」

「あー……。まぁ」

「だから、その被害への補償やら充填やら謝罪やらと、今後ウチに身を置く事の許可を取りにね」

「うげ。そんな事が必要なのかよ」

「まぁ、一応ね。ケジメというか。スジというか。この町を管理している以上、報告も無しに勝手なことされたら誰だって嫌でしょう?」

「うーん……。つまり、職員室呼び出しとか、校長面談みたいなもんか?」

「ショクインシツ?コウチョウメンダン?」

「エライ奴とのタイマンってコトだろ?」

「……た、多分そうだと思う」


 ちょっとだけ不安を覚えた私の勘は正しかった。


 既に面会の許可を得ていた私たちが領主の屋敷に着くと、直ぐに謁見室に通された。

 正直、この町は人口も少なくあまり栄えているわけじゃない。収入のほとんどが、王国研究所の場所代として支払われる謝礼金だ。

 その全てをこのセンスがない調度品などに使ってしまっているのだろう。

 貧相な謁見の間に、派手な調度品。アンバランスにも程がある。

 せめてむき出しの木の床に、絨毯ぐらい引こうよ……、もしくは石材に変えようよ……。とゲンナリしていると、領主が2匹の犬を連れてやってきた。小太りの領主はこれまたセンス悪く、ゴタゴタと装飾品を身につけ、長いマントを引きずって歩きづらそうだ。


「これはこれはパトリシア嬢。良くおいでくださいました。そちらが下手人の男ですかな?随分態度の大きい男ですな。反省の色すら見えないように思えますが?」


 レオは、衣装のボタンを全て開け、両手をポケットに突っ込んで領主を睨みつけていた。


「コホン。既に報告したとは思いますが、彼は罪人ではありません。下手人なんて呼び方はお止め下さい」

「……パティ……」


 レオはキョトンとした顔で、私を見た。


「ふむ。ですが私のこの領地で、派手に暴れたと聞いておりますぞ。死にかけたものもいたと。これは穏やかではありませんな?」

「ええ。それほど彼は偉大なチカラを持っていると証明された訳です。それに、その場に立ち会わせた私は全員の無事を確認しています。なにか問題が?」

「問題ばかりじゃ!ワシの知らんところで、バカ騒ぎをおこしたのだ!即刻打首死刑が妥当であろう」


 レオがより険しい顔でギロリと領主をにらみつけた。


「ハァ?」

「ヒィッ!」

「ふぅ。では領主殿は、死者すら出ていない、個人間での恋愛事情だけで彼を死罪にするのが妥当だと?」

「そそそ、その通りでしょう!?こんな無礼者、生かしておく方が問題であろう!!」

「それはいささか早計すぎます」

「そんなわけなかろう!相手を殺して食うのは国の決めた禁忌じゃ!即刻死刑が許されておる!!」

「彼は誰も殺していませんし、食べてもおりません」

「そんなわけあるか!町中であの言葉を叫んでいいようにしていたと聞いておるぞ!」

「もう一度いいますが、それは個人間でのことでしょう。たとえ彼が一度に複数を相手にしていようと、結局は1人対1人の恋愛事情に変わりありません。領主殿は、そんな個人事情まで取り締まるのですか?夫婦喧嘩や痴話喧嘩まで取り締まると?」

「ぐっ!」


 あぁ、この男と話すと疲れる。

 一方的に罪人にされ、怒鳴られて、人権を無視されているようで、こんな所に連れてきてしまってレオには申し訳く思った。


 だが、レオは我慢してくれているようだ。

 怒り狂う燃える目で、領主を睨みつけても、昨日のように喚き散らしたりしないでいる。


「ほら、そのいかにも人を殺しそうな目!そやつを生かしておいてもなんの得にもなりませんぞ!百害あって一利なしじゃ!悪いのはどうせその男じゃ!取り押さえよ!!」


 と、領主はすぐそばにいた護衛兵に怒鳴り散らした。


「先入観で決めつけないで!やめなさい!!彼に触らないで!」

「パティ!ちょっと黙ってろ!」


 と言うと、彼は領主の犬に向かって叫んだ。


「そのオッサンをヤレ!」


 と同時に、2匹の犬は領主に飛びかかった。


「ぎゃああ!ワシじゃ!ワシが分からんか!あんなに可愛がってやったのに、やめ、やめよ!」


 まさに飼い犬に噛まれる状態だ。

 そしてレオはいつの間にか護衛兵をぶっ倒していた。2人もいたのに。

 そのままツカツカと領主のところに行くと領主の胸倉を掴んで引っ張りあげた。


「なぁオッサン。俺の事をどうするって?」

「ヒィィィィ」

「このまま、愛しいワンチャンたちに、食い殺されてぇ?」

「かかか、勘弁してくだされ」

「あぁ?勘弁して欲しいのか。ならパティに謝れよ」

「い、嫌じゃ!わしは悪くな」

「あぁ、オッサン命が惜しくねぇんだな。上等だ」


 そういうと、掴んでいた手を離し、拳をパキパキ鳴らした。


「おぅ、おっさん。ケンカ売ってきたのはそっちだからな!買ってやんよ、『ブッコロス』!!」

「ヒィィィィん」


 その瞬間、領主は背後から薔薇の花びらを吹き出し、頬を染めて醜くヨダレを垂らした。


「だだだ、ダーリンに死なれたらイヤン」

「はぁ?」

「死罪なんて滅相もない!だからワシと愛し」


 と、最後まで聞かずにレオは正面から一発領主に良い拳をくれた。


「……キモチワルっ。こいつも変態かよ」


 いや、相手を変態化させてるのはレオなんですけどね……。

 いつか、私もレオに『ブッコロス』なんて言われたら、あんな風になっちゃうのかなぁと心底引いた。


「よし、お前らもありがとな!」


 と、レオは領主の飼い犬2匹とじゃれあっていた。

 2匹の犬も、何事も無かったように大喜びでレオにシッポを振って飛びついている。

ため息をつきながら、ダウンしている護衛兵の横に座り込んで話しかけた。


「あー……。えっと、護衛兵さん。さっきの領主の言葉を聞いていましたね?あなたがたが証人です。彼の生存は許可されましたので、とりあえずは私が身元保証人として彼を預かります」

「ですが、彼は領主に手を」

「えーっと……。それは2人の愛情表現という事で……。多分、領主も喜んでいることでしょう」


 そう。領主は倒れているものの、悦に浸った顔で、ピクピクと幸せそうにしていた。


「あと、犬に噛まれたのは、彼の躾の問題ですから、レオとは無関係です」

「かしこまりました。姫の仰る通りに……」


それだけ言うと護衛兵たちも、パタリと意識を失った。


 と、その時、謁見室の扉が勢いよく開き、大勢の老若男女が飛び込んできた。


「居たわ!愛の伝道師様はアソコよ!!!」

「「「キャー!!」」」


 あの面々は間違いない。昨日口説かれていた人々だ。その人々が、ドドドっ!!とドアを壊さんばかりに押し合いへし合いなだれ込んできたのだ。踏みつけられる領主と護衛兵、怯える犬たち。

 逆にレオは、やんのかコラ?とばかりに身構えて、嬉しそうにニヤついている。

 あ、ダメだこれ。次の被害者が出る。

 慌てて彼の手首を掴み、


「こっちよ!」


 と私は彼を引きずるように領主邸から逃げだしたのだった。

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