表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/47

重なるからだ。繋がる心。

 翌朝、寒さで目を覚ますと全裸で驚いた。

 布団がスルリとずり落ち、我ながら豊かな胸がぷるるんと震えた。


 その横で、眠そうなレオが


「おはようパティ」


 とおでこにキスをしてきた。


「ちょ、あなたも全裸なんだけど!?」

「そりゃ裸だよね。あのまま2人で寝ちゃったし。パティ、めっちゃ可愛かった……。くうぅ〜」

「な、な……!」

「覚えてねぇの?」

「覚えて………………る!」


 レオに組み敷かれて、繋がった幸せの夜を思い出す。レオはオスの顔で、夢中で私を貪った。ヒリヒリと痛いお腹は、幸せの残滓で……。

 ぎゃーぎゃー恥ずかしい!


「見て、パティ」


 と指さされた先をみれば血痕がついていた。


「ほら。こっちも!」


 と、嬉しそうに布団の赤黒いシミを探す。


「ああぁ、俺はパティの初めての男になった!」


 とガッツポーズをする。


「やめて!?恥ずかしいから言わないで!?」

「なんでだよ。他に聞いてるやつも居ないのに」

「でも、恥ずかしいよね?!よく覚えてないし」

「ふーん。あんなに俺を求めて抱き合ったのに、パティさんは覚えてないんだ。ふーん」


 と、じとっとした目で私をみる。

 気の所為か、レオのレオも、ムクムクと上を仰ぎはじめた。


「う。だってお酒が……」

「お酒かー。酔ったパティも可愛かったけど、酒のせいで覚えてないんじゃ仕方ないよねー」

「そう、仕方ない」

「うんうん、仕方ないから、もう一度やるしかないよね」

「なんで!?」

「惚れた女がアラレもない姿で煽って来るからじゃん」


 と、力づくで押し倒されて、朝から再び2人きりの世界へと落ちていった。

 体のあちこちが痛くて全身疲労困憊の私と、逆にまだまだ元気なレオ。

 年の差を見せつけられる思いだ。いや、純粋に体力差かもしれない……。化け物級フィジカルめ。


 レオはグッタリとする私をみて、ウズウズと落ち着かない仕草をしたと思えば、全裸のまま外に飛び出し、すっかり積もった雪の上に飛び込んだ。


「うおおおぉー!!パティ好きだあぁ!!愛してるーー!!! パティサイコおおおぉー!!ひゃー。雪冷てぇ!!冷える〜!縮こまる〜!!!」


 ってバタバタ暴れてた。

 騒ぎを聞きつけた護衛兵たちが、なんだなんだと寮から顔をだし、色々悟ったらしく、ニヤニヤと笑った。


「は、恥ずかしすぎて死ぬかもしれない……」


雪の上で暴れて落ち着いたらしいレオは、お風呂を準備してくれた。

 以前は牛乳を入れて花を散らしたオシャレなお風呂だったのに、今回は透き通った普通のお湯だ。浴槽の脇には小さな雪だるまが居た。

 全裸のまま布団にくるまって運ばれた私は、されるがままお湯に浸からせて貰う。

 熱めのお湯は、冷えた私の体をジンジンと温めた。


「ふぅ……」


 とため息をもらせば


「お風呂ってため息ついちゃうよな」


 って、レオが全裸で隠しもせず入ってきた。


「ちょ、レオ、見えっ……!?」

「散々見ただろ?」


 と、苦笑いしてヨイショとお湯に浸かった。

 レオの指先は冷えていたけど、あれほど雪の上で暴れてた体は、ものすごく熱かった。


「体、洗ってやるから」


 と、私の後ろに回り込み、お湯の中で丹念に身体中を擦りながら、


「ゴメンな、俺、浮かれて調子にのってやりすぎた。こんなにパティが疲れるだなんて、思いもしなかった」


 と申し訳なさそうに謝られた。


「んーん。私も初めてだから、こんなにアチコチ痛くなるなんて知らなかったもの」

「そか……。いや正確にはもう2回目だけど」

「何を持って1回とするのか……」

「日をまたいだら、かな?細かく数えたら両手の指超えたよね?」

「何を持って1回と数えたの!?やめて?!カウントしないで?そんな嬉しそうにニコニコしないで!?」


 と慌ててレオの口を塞ぐ。

 その塞いだ指を、ペロリと舐められた。


「ひゃっ!?」

「あー、ほらもうこっち向くから全身見えちゃうし……。俺も必死で我慢してるんだから、そーやって誘うのやめてくれない?」

「さ、誘ってないもん」

「ふーん。誘ってないなら煽ってんのか。なんなら、風呂で、もう1回……」

「しません!絶対しません!というか、しばらくしません!!絶対に!!!」

「えぇ〜。そんな無理言う〜?」

「甘えた顔してもダメ!!これ以上されたら私死んじゃうから!」

「腹上死ってヤツか。パティが死ぬなら俺も一緒に死ぬから別にいいぜ」

「真顔で怖いこと言わないで!?」

「だって本気だもん。なぁ、パティ。俺、パティのこと本気で好きで、愛してるって思ってたんだけどさ」

「うん」

「パティを抱いたら、もっともっと好きになった。『愛してる』って、想いが深くなった。深くなった分、表面は落ち着いてるけど、内面じゃメラメラ燃えてるんだ。ねぇパティ。どこまで俺を魅了するの?」


 って、私を抱きしめながらコテンと胸に顔を埋めると、上目遣いで私を見つめた。思わずキュンとしてしまう。

 愛情が深まるって本当だ。


「……。どこまでも、どれほどでも魅了されて。深く愛してくれてありがとう」

「ん」

「私も、前よりもっと、ずっと好き」

「ん……。やべぇ幸せすぎて俺が先に死にそう。あのさ、昨日は俺の誕生日で、どんな卑怯な手を使ってでも、絶対パティを貰うってキメてたんだ」

「あー……。うん」

「けどさ、日付け跨いだ今日はもう、俺の誕生日じゃないじゃん?プレゼントとかの名目じゃないじゃん?それなのに朝からヤラセてくれてさ」

「(力技だったじゃん)」

「あ、恋人だからやらせてくれて当然なんだ。俺たちマジの恋人なんだって、嬉しかった……。俺も初めてだったから、下手くそでごめんな?」

「んーん。大丈夫。私もレオを好きだから全然耐えられたよ。レオが必死に求めてくれるのが幸せだった……」


 と、レオに優しくキスをして、真っ赤な自分を誤魔化した。


「私からも一言いいかな?」

「ん。怒られる覚悟は出来てます」

「怒らないよ。あのね?」

「はい」

「私、もう、レオを元の世界に返したくない……。ごめんなさい」

「パティ……それ逆にご褒美」

「?」

「俺は、もうとっくに帰りたくねぇよ 」

「いいの?」

「ん。愛してるよ、パティ」

「私も」


と、抱きしめあった。複雑だけど、レオが『帰りたくない』って言ってくれて嬉しかった。心から安心した。気がつけばお風呂のお湯はすっかり冷めてた。



 シンシンと外は冷え、時々吹雪いたりもしたけれど、私とレオは穏やかな日々を過ごした。

 時に暖炉の前で一緒に毛布にくるまったり、文字を覚えたり、一応テーブルマナーを教えたり。

 レオは勉強を嫌がったけど、(私と結婚するために)必要なことだと悟ってからは、張り切り頑張って覚えようと努力している。


 寒い冬は、魔獣ですら活動が鈍くなる。

 餌やりも散歩も、ほぼ必要としない。冬眠に入るからだ。

 それでもレオは、毎日必ず厩舎に行き、声を掛けて回った。

 私が一緒について行くと、魔獣たちは私の匂いを嗅いで不思議そうな顔をした。


「俺の匂い、染み付いてた?」


 って、レオが嬉しそうに笑った。




 穏やかだと感じたのは、レオは私が嫌がることは絶対しなかったからかもしれない。

 少し強引なことはあっても、


「襲う時は、相手の合意をとれって言ってたじゃん」


 だって。それから


「恋することは俺1人でも出来るけど、恋愛は2人じゃないと、出来ないじゃん。嫌われたくねぇし」


 って、拗ねた。


「あと、『家庭』ってやつも、2人じゃなきゃ無理じゃん?」


 って、真剣な顔で言われた。

(本当に、レオは私のことが好きなんだね。真面目に私との将来を考えてるんだ)

 と、レオの思いに侵食されていく。

 多分このままでは、押し切られる日も近い。

 私もレオとの将来をうっすらと描くようになった頃、王宮から手紙が届いた。

 それは弟の、戴冠式への招待状だった。

ノーコメントで……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ