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そして少年は成長する。幼虫が蛹になるように

 レオがこちらの世界に来てから、3ヶ月が経とうとしていた。

 季節は秋から冬へと移り変わり、研究所から見える山は、『枯れ木の賑わい』になっていた。


 あんなに心配していた北西国は、私が輿入れを拒否してもなんの動きも見せなかった。

 ついでに領主は本気でレオに惚れてしまったらしく、レオのストーカーのような事をするようになった。

 こんなヤツでも恋のライバル認定をしなきゃなのかしら……。


 レオはと言えば、相変わらず朝は水汲み薪割り魔獣のお世話と毎日の仕事をそつなくこなしていた。

 力仕事を率先してしてやってくれるせいか、以前より筋肉がつき、より逞しくなった気がする。すっかり頼れる男となってしまった。

 あと、彼は『ブッコロス』という言葉は愛の言葉だと知ってから、気軽に口にしなくなった。

 町に出来ていたレオの親衛隊も、いつの間にか解散していた。

 それをレオに聞くと


「だって最愛の女と付き合ってるのに、迷惑じゃん」


 とサラッと言った。

 相当の数の老若男女が泣いたらしいが、頭を下げてハッキリ言われたので、逆にスッキリしたらしいとお食事処のオジサンが教えてくれた。


 そんなレオは相変わらず、遠くから、近くから、真剣な眼差しを私に向けた。

 その視線は私を射殺すように私の心臓をうち、早鐘にした。


 そう。私たちはなんの進展もしてなかった。

 あれほど好き好きアピールしていたレオが、すっかり大人しくなったのだ。

 接触の仕方もガツガツ来ず、実にスマートに触れてくる。いや、絶妙に触れてこない。

 それを聞くと


「だって、止まらなくなるじゃん?」


 と、熱っぽくはにかんで、男の眼差しで見つめられた。




 完全に冬が来たら、この辺りは冬景色へと変わる。その前に薪をあつめるのが毎年の苦労だったんだけど、今年はレオのおかげで沢山貯め込めた。おかげで今年の冬は凍えなくて済むと喜んだら


「薪、捨ててくるわ。寒い夜は温め合うのがベストだろ」


 とか本気でやろうとするから必死で止めた。


「そういやさ、俺冬生まれなんだよね」


  とレオが呟いた。


「12月25日が誕生日なんだけど、ウチはクリスマスのケーキすらなかったな。あれ、憧れだったんだ」

「誕生日には、ケーキを食べるの?そういえば甘いものって、エディのお茶会で食べたくらいで、全然口にしてなかったね」

「ん。町にお菓子屋さんなんてなかったし。てっきり甘いものがない世界なんだと思ってたわ。俺」

「そしたら、エディが出してくれたから、あんなにキラキラした目をしてたんだね」

「うわ、俺そんな顔してた?はずっ」


 って照れだした。


「パティにさ、少しでも惚れて欲しいから、イイトコ見せたいんだけどさ。これがまたなかなか難しいんだわ。ダセェな俺」

「これ以上好きになったら、どうなっちゃうのか怖いよ」


 って笑ったら


「俺に溺れて」


 って、引き寄せられた。

 そのレオの体温が暖かくて、抱きしめ返しながら服の隙間の胸元にキスしたら


「パティのエッチ」


 って隠された。 なんだろ、割に合わないわ……。


「ねぇレオ!12月25日がさ。こっちのカレンダーと同じ日か分からないけど、何かお祝いしようか」

「マジか。いいの?」


 と嬉しそうにキラキラ顔を輝かせた。


「うん。私もお祝いしたいし。誰を呼ぶ?それとも王宮でみんなで賑やかにお祝いする?」


 って聞いたら、レオってば少し拗ねて


「2人きりがいい」


 と言った。


「はいはい。2人でお祝いしようね。何か欲しいものはある?」

「なんでもいいの?」

「私があげられるものなら」

「それなら、パティが欲しい」

「え?」

「むしろパティ以外要らないから。俺」

「いやそれは……」

「ねぇ、パティ。俺、誕生日が来たら16歳になるから」

「うん」

「そしたら、俺と結婚できる?こっちの法律では、何歳から結婚出来るの?」


 と、真剣な顔をして言い放った。


「パティのそばに居られりゃさ、ぶっちゃけなんだっていいんだけど。やっぱり戸籍で夫婦になるって別物じゃん?内縁の妻とか夫とか、ふわっとしてて不確かじゃん」

「そうなんだ」

「お袋は、それで苦労してたし。あと、恋人って響きもいいんだけどさ。もっとパティを縛り付けたいんだよね、俺に」

「レオの愛は重いね?」

「やっぱり重いよな。でも、早く結婚して、子供が欲しいんだよ」

「子供!?」

「そ。なかなか結婚しない奴らはデキ婚に限るってバーちゃんテレビ見ながら言ってた」

「そ、そうなんだ」

「子供が出来たらさ、パティとの絆が永遠になる気がすんだよね」

「永遠……」

「あ、いや、もちろんパティが子供嫌い、産むのヤダって言うならそれでいいよ!?俺はパティさえ居てくれればそれでいいからさ」

「ん?」

「いやほら、『私子供いらないから、産んでくれる人探して』とか言われて捨てられるくらいだったら、俺もいらないよ」


レオは慌てて手と頭をブンブンさせて否定してた。


「……私は子供、好きだよ」

「だよな。パティの子なら、絶対可愛いぜ。俺溺愛」

「レオってば。気が早いよ」

「ん。まぁ俺みたいに父親の顔も知らないガキもいるけどさ。だけど俺は、ちゃんと結婚して、子供を一緒に育てたい。俺がして欲しかったことをしてやるんだ」

「うん」

「だから、パティを俺にもっと溺れさせたいの」

「充分溺れてるよ」

「いんや、足りないね。俺がパティを見てるのと、パティが俺を見てるのじゃ、どっちが多いか知ってる?もっと、もっと、ドロドロになりそうなくらい溺れさせたいの。どうしたら、そうできるかな?」

「私は遠慮願いたいわ……」

「ほら、そう言って逃げるじゃん」

「逃げてないよ。でもね、いつか歳を取ったら、私よりお似合いな素敵な人と出会うかもじゃない?その時捨てられるのは、私だよ。そんなの惨めすぎるよ」


 言っていて情けなくなった。

 きっと私は捨てられるのが怖くて、1歩引いていたのだろう。

 それをレオは感じとっていたに違いない。


「なんで俺がパティを捨てるんなんて思うんだよ」

「私は、もう適齢期過ぎてるから」

「結婚適齢期ってやつ?」

「うん。あと、出産も」

「あー……。俺の世界じゃ、40代でも子供産んでたけど、パティって今何才なんだっけ?」

「……さすがに40代まではまだまだあるわ……」


 というと、レオはくくっと笑った。


「俺、バーちゃん子だったから、多分パティが50代でも愛せる自信があるぜ」


 なんて言うから、開いた口が塞がらなかった。

「パティが50代で……ぶはっ!」


「ちょ、なんて所で笑うのよレオ!」

「ごめんごめん。逆に、パティが1桁でも愛せるわとか想像したら、俺変態じゃんって思ったら笑っちゃってさ」

「15歳のレオが、5歳とかの私と恋愛するの?」

「そ。ちょっと想像してみて?」

「うーん」

「うーん」

「…はっ!レオ変態じゃない!」

「だろ?そーぞーしたらおかしくてよ」

「うん。その想像はやめて、Take2やろうね」




「パティが50代でも……ブハッ」

「またぁ?やっぱり15歳が50代でもって無理あるんじゃない?」

「いやいや、俺パティが70代でもヤレると思ったら笑っちまって」

「ちょ!?さすがにそれは……」

「アンタがアンタでいてくれれば、俺は何歳でもいいんだよ。俺の好き、伝わった?」

「ぐううぅ……(赤面) はやくTake3やろう……」



意味の無い小話でした。

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