出る釘は引っこ抜いてバキバキに折る。
父が目覚めた後、正式に王位をへルムフリートに譲り、戴冠式を行うことを発表した。
とはいえ、式の準備には時間がかかる。
早くても3ヶ月は掛かるだろう。
エディはそれだけ見届けると、降嫁先の侯爵領に戻って行った。
次はちゃんと正式に遊びにくると、へルムフリートと約束を交わして。
レオと言えば
「それってさ、俺たちの結婚式とどっちが早い?」
なんて言い出した。
結婚の前に、婚約、結納、などなど、手順は沢山あるのだと教えると
「うーん、パティは婚前交渉はNG?」
とか真顔で聞いてきた。
気持ちは伝えあったけど、まだ付き合ってすらいないと言えば
「親の了解得てるんだから、お付き合い飛び越して婚約済みってことだろ?」
とサラッと言った。
私たちはまだ、王宮に留まっている。
弟のへルムフリートが心配だったからだ。
王宮に留まり続けるなら、レオにも食事のマナーやルールなどを教え込まないとイケナイなと思っているのだけど
「あ、俺箸で」
と、あっさりマナーをクリアした。
いつの間に用意したの、そんなカトラリー。
たった2本の棒なのに、彼は器用に使いこなし、魚を綺麗に食べ、骨のみを残した。
「箸の使い方には、厳しかったからな。バーちゃん」
って、ニコニコ笑った。
不思議だ。
あんなに窮屈だと感じていた王宮が、レオがいるだけで世界がクリアになる。
父が、義母が、へルムフリートが、召使い達が、柔らかい空気を醸し出して笑ってる。
これが彼の持つ『テイマー』のチカラなのだろうか。
「で、この後どうすんの?」
「どうするというと?」
「いつまでココに居るの?」
「うーん。研究所に一度は戻りたいけど……」
「いつ戻る?」
「レオはどうしたいの?」
「俺は、パティと早くイチャイチャしたい」
「えっ」
「もう、ずっと限界だったの知ってるっしょ。ココは人が多すぎて、いちいち邪魔が入るじゃん」
「だから、早く研究所に入りたいの?」
「……うん」
と、レオは擦り寄るように抱きしめてきた。
レオはすっかり甘えん坊さんになっちゃって、見てると『キュン』としてしまう。
レオの好きなように体を預けてしまいそうで、身の危険を感じた。
それに、そこまで聞くと、研究所に戻ると「OKサイン」を出したって事になりそうで。うー。
「それもあるんだけどさ早く北西国を潰しに行きたいんだよね」
「まだ言ってたの?」
「あのね、俺、しつこいの。1度決めたら絶対やるの」
と、静かに怒っていた。
「私が嫁に行かないって言えば、潰しに行かない?」
「北西国残しとくと、またパティが『嫁に行く』とか言い出しそうだからね。コテンパンに叩き潰しといた方が吉っしょ」
と、鬼のような悪魔のような表情をして、メラメラと怒りの炎を燃やしていた。
「だ、ダメよ!?」
「は?なんでだよ」
レオは見るからに不機嫌そうに眉根を寄せた。
「なんでもなにも……」
「理由がねぇなら俺はやる。パティになんかあってからじゃ遅いだろ。俺は後悔したくねぇ」
指をパキパキ音を鳴らしながら、ヤル気満々のレオを見ながら、ため息をひとつこぼした。
「うん、それじゃあ、ダメな理由を言うから聞いてくれる?」
「ちっ。聞く」
「まずね、理由もなしに相手に暴力を振ることが倫理的にダメ。それから、レオはマクスウェル国王の私の庇護にいるのから、レオが先に手を出した場合、こちらに非があることになるの。勝敗に関わらず、後々の賠償問題を考えると手を出した方が負けなのよ。それから、レオの驚異的能力を広く知らしめる結果になれば隣国の……あと……それから……で、魔獣たちの……」
懇々と理由を述べ続ける私に対して、だんだんと引きつっていくレオは、冷や汗をかきはじめた。
「ま、待った!分かった!す、ストップ!!」
「まだ半分も理由を伝えてないわ」
「は、半分!?」
「続けるわけね」
「わかった!とりあえずパティに迷惑がかかるのはわかった!俺も我慢するからそれくらいで勘弁して」
「そう?分かってくれたのならいいわ」
私がにっこり微笑むと、レオは一瞬目線をそらし、ほっぺたをポリポリかいた。
「俺の彼女はしっかりしてらぁ。このまま尻にひかれるのかな俺」
と、満更でもなさそうな顔をした。




