円団
ひと騒動あって、王宮内は落ち着きなくざわめいていた。
元国王夫妻の暗殺未遂だ。自殺未遂だ。
騒ぎにならないわけが無い。
夏場は各貴族は各々の領地に戻っているため、集まった貴族が少ないのが幸いだった。
父は病に倒れたことにし、一時的に王政から退き、弟が引き継ぐと、宣言を出した。
対策が早かったおかげで、異議申し立てなどはなく、早急に騒ぎをおさめることが出来た。
父は目を覚ますと、繋いだ手を見た。
そしてその相手を確認すると、大きくため息をついた。
「長い、長い夢から覚めた気分だ……」
それだけ言うと、義母の髪をなで、頬にキスをした。
義母はまだ目を覚ましていなかったが、目には涙を浮かべていた。
そんな2人の様子をへルムフリートは満足そうに眺めていた。
「つまり、どういうことですの?」
「羽根の取れた妖精サンのお仲間がさ、みんなでお礼をしたいって言ってたんだよね」
椅子に座っても、ソファに座っても、立っていても、レオは私にピッタリとくっついてきた。というか、大きなぬいぐるみを抱きしめるかのように、ずーっと私を抱きしめていた。
「妖精は幻覚を見せると言われているのよ。それが、幸せなものか、悪いものかは、その人次第らしいけど」
「妖精なんて、初めて見ました!僕」
「魔獣までなら実態があるから分かるけど、妖精までだなんて……」
と、エディは頭を抱えた。
「それと、心を癒すとも言われてるわね。だから、お父様も……」
「とは言えよ、俺は一発は殴らないと気が済まないんだけど……」
「あぁ。殴ってもらって構わない」
「「「!!」」」
「お。親父さん、目が覚めたかよ」
「ああ。覚めたよ。色々と。エドガルド。へルムフリート。済まなかった。私は良い父では、なかったな」
そういうと、腰を曲げて手を広げた。
「父上!」
と、素直に飛びつくへルムフリート。
「私はこんなことでは誤魔化されませんことよ」
と言いながらも父に抱きしめられるエディ。
「キミも来るかね?」
と、ニッコリとレオの方を向いた。
「は?は?バッカ。俺にはパティがいるから、オッサンになんて抱きしめられたくないからな!」
「そうか」
というと、私ごとレオを抱きしめた。
「何すんだよ!キモっ!離せよ!」
「うふふ。レオ。顔が真っ赤よ」
「ああ。離してやろう。一言だけ言わせてもらったらな」
そういうと、私とレオの肩をポンと叩いた。
「私の愛する娘を、よろしく頼むよ。どうか、私のような過ちを犯さず、必ず幸せにしておくれ」
それだけいうと、父は周りに控えていた人たちに指示を出し始めた。
そんな父の背中をみて、レオがポツリともらした。
「『お嬢さんを僕にください。』って言うのが夢だったのに……」
「先に許可貰っちゃったね」
と、2人で苦笑いした。
レオは実父を知らないので、無意識で父親に憧れがあります。
パティの父親は、多分、国王としてのカリスマ性を持ち合わせていて、そこにレオも惹かれていたのだと思います。
それを表現出来てたかな…(>_<)
お話もう少し続きます。
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