チカラ試し
1度研究所に戻った俺は、頭を冷やすために井戸水で行水をしていた。
(パティが、他の男に嫁入りする?いやいや、あのパティに限って……。でも、あのパティだからこそ、ココや国民を守るために犠牲になるってマジっぽい)
(てか、じゃあいつ帰ってくんの)
(クッソ。早くパティに会いたい。会って真相を確かめたい。パティの口から、本当の事を聞きたい)
(だから妹ちゃんは俺と結婚結婚って言ってたのか。北西国のジジイより、俺のがマシって思ってくれてたのか)
(あぁ……。最後にみたパティのドレス姿、マジお姫様でキレイだったな……。あの時抱きしめときゃよかった。クソ)
(北西国と戦争……。戦争ってどんなかな。大砲とか戦車とかあんのかな。それとも、魔法があるって言ってたから、魔法で戦うのかな?なんにしても上等だ。やってやんよ)
と、どれだけ水を浴び続けても、頭がぐちゃぐちゃでイライラした。北西国の国王とやらに殺意が増すだけだ。
とにかく、このまま悩んでても仕方ねぇ。
惚れた女は奪ってでも手に入れろってバーちゃんも言ってた。
とはいえ、今いるのは親父さんのところなんだよなぁ〜。クソ。親子水入らず、羨ましすぎて泣きそう。
だけど、親父さんも男なんだよなっ。って思うと、なんでか妬けた。
そういや親父さん、パティの事メッチャハグしてたよな。
俺だって正面から堂々と抱きしめたことないのに。
って思い出したら嫉妬した。
どーしようもないほどイライラが募り、俺はふと思った。
(そういや、この国のヤツらと本気でケンカした事ねぇなあ。)
と。
横を見りゃあ、今日も訓練に明け暮れる護衛兵サンたち。
俺は指をバキバキ、肩をゴキゴキしながらヤツらに近づいた。
「なぁ、ちょーっと俺の肩ならしに、ご協力イタダケマセンカ?」
と。
実戦経験に勝るものはなし。と、早速実戦稽古のプログラムが組まれた。
説明はウケたが小難しくてよく分からんから聞き流した。
ようは、一対多数、何でもアリのケンカだろ。ホントにコイツらにパティを守れるのかと疑ってたし、チカラ試せるならちょうどいい。
「それでは!武闘派隊前へ!開始!」
と号令が鳴った。
相手は4人。サッと周りを囲まれた。
イイネ、イイネ!こういうヒリつく感覚待ってたぜ!武闘派なら、空手で対抗してやるぜ!
結果3分持たずにKOをとった。
倒れた兵は、別の兵が救護した。その撤退の速さは訓練のタマモノなんだろう。
「次!剣術部隊、前へ!開始!」
次は剣を構えた男ら5人だった。
武器がある分リーチで不利だ。
もちろんあちらは有利だと思ってるんだろう。俺に傷付けないようにと若干腰が引けてる
だから先手!とばかりにボクシングよろしくヒットアンドアウェイで剣をはたきおとし、つかず離れずで距離をとり、これまた5分かからずKOをとった。
「次、魔導部隊、前へ!開始!」
と、同時に俺の横を火の玉がかすってった。
前までの戦い方に、遠慮はいらないと悟ったのだろう。
火の玉、氷のつぶて、イナズマなどが、ガンガン飛ぶ飛ぶ!
んが、ヒョイヒョイと避けた。当たれば痛そうだけど、当たらなきゃノーダメージだね。攻撃を交わしながら、至近距離に一気に詰め寄りKOをとった。10分くらいかかった。
「最後!魔法剣士部隊前へ!開始」
お?
今度は6人ほどの割とがっしり体型の随分としっかり剣を構えたヤツらだった。それぞれが手に持つ剣にはそれぞれの魔法が宿っていた。
メラメラと燃える剣。ビリっと時々電気が飛び散る剣。この暑い中でもドライアイスのような煙を出す剣。
とはいえ、剣術部隊とどう違うのか。コイツらの攻撃は単調過ぎて、威力がちょいと上がったくらいじゃ攻略法は変わらないヨンと、割とあっさりKOをとった。
「いやいや、レオン殿はお強いな」
「いや……。アンタらが弱すぎ……。ホントにパティ守れんの?」
「これは1本取られましたな。いやはや、お恥ずかしい」
と、俺はヤツらから1目置かれたけど、俺は逆に不安になった。
こんなヤツらが戦争すんの?
いやいや、戦力にならないでしょ。
そりゃパティもあんなに不安になるわけだ。
「護衛兵サンたちの実力が分かってよかったよ」
「はは、実力ですか」
「おう。ヤッパ俺、自分でパティを守りてぇ」
「これはこれは心強いですな」
「……。アンタらのためじゃねぇ。俺が俺自身のために、パティを守りてぇんだ」
「そんじゃアンタらは、パティのやりたいようにやらせて満足したら力づくで連れ帰れって命令しか受けてねぇの?」
「その通りだ。パトリシア王女殿下は、国王のご寵愛を一身に受ける方。本当は手元に置いておきたくて仕方ないのだ」
「寵愛ってどーゆー意味?」
「特別に愛する、ということだ」
「それって娘としてだろ?」
「そうだと思う」
「でもよ、パティには弟も妹も要るのに、なんでパティが『ちょうあい』を独り占めしてんの?」
「それは……。前王妃の忘れ形見だからだろう。国王は前王妃と、それはそれは仲睦まじく」
「じゃあ、今の王妃さんは?」
「それは……」
「パティのお袋サンの妹サンなんだろ?」
「そこまで知っていたか」
「パティはお袋サンの喪が明けたら即結婚した、って、だから自分は不要だって言ってた。なんか変じゃね?」
「王女殿下はそのような事を……。いやはや真実とはわからないものだ。現王妃様は、言わば跡取りを作るためだけの政略結婚と囁かれている。最も下々の我らには真相など分からんが」
「跡継ぎのためだけ……」
「おいたわしや。王妃様は心を病んでおられるとか。大望の王太子殿下も優しすぎる気質でな。歳の差もあって、やはり次の王位はパティ様がって勢力もあがってきてる」
「次の?」
「パトリシア王女は国民想いだから国民の人気も高いからな」
「あー。それ分かる気がするわ〜」
「はは、そうだな。レオン殿はパトリシア王女の身近で人となりをよく知ってるものな」
「あぁ、俺の知ってるパティは、優しくて面倒見が良くて、王女としての責任と義務を一身に背負った、かっこよくて可愛いいいい女だよ」
「いい女なんて軽々しく言えるのは、きっとキミぐらいだ」
「ライバルが居ないならありがてぇ。俺はマジでパティに惚れてっから」
「それは見ていれば分かるよ。いっつもイチャイチャを見せつけられて、目のやり場に困らせてたよ」
と、くくっと苦笑いされた。
少し暴れて頭がクリアになった俺は立ち上がり、草のついたケツをパンパンと叩いた。
「うっし。悩んでるのはしょうに合わねぇ。いっちょ動くわ!ココのヤツらの面倒を、しばらく頼んだ!」
というと、グリちゃんの背中に乗って飛び立った。
戦闘への切り替えが下手くそ過ぎて吹きました。
チカラブソクガイナメナイ……。
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