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妹から義兄になる人へ

「ではですわね。まずは姿勢から駄目ですわ」

「それから、靴。というか、全体がみすぼらしいです」

「言葉遣いもよろしくありませんわね」

「それと、物言いがダイレクト過ぎましてよ」

「年齢もお姉様とは釣り合ってないのは、まぁどうしようも無いので仕方ありませんけど、その辺も努力すべきでは?」

「それから、貴族社会に入るのならば、社交や教養にダンスは必須です。どうしてもそのようなものを学んできたとは思えません」

「あとは……」

「……まだあるのかよ……」


と、レオは白い灰になりかけていた。


「エディ……。大前提が、私とあなたで違う気がするのだけど……」

「前提ってなんですの?お姉様は、この男とどうしたいんですの?」


そこではたと止まる。

どうしたいと聞かれれば、レオの世界にレオを返してあげたい。

だけど、エディは、レオが貴族社会に入ってくることを前提にしている気がする。

そんなこと、『異世界転移者』である彼に強要して良いものだろうか。


レオをチラッとみる。

するとレオと視線が合う。

レオは頬を赤く染めて、そっぽを向いた。


「キイィ!なんですのお姉様に対するその態度!それも良くはありませんよ!むしろ駄目よ、駄目駄目ですわ!」


と、机を扇子でビシバシ叩いた。


「なんだよ!結局お前も難癖つけて俺を悪者にしたいだけなのか?」


と、レオまでイライラし始めた。


「難癖つけて悪者にしたら、お姉様から手を引きますか?それなら喜んでそうしますわ!」

「じゃあ何が言いたいんだか言ってみろよ!」

「あなたのような男に、お姉様を盗られるのが嫌なのですわ!」

「……は?」

「お姉様はあなたにベタ惚れだと聞きましたからこそあなたに興味がありましたのに!あなたがそんなでは、お姉様を安心して任せることができません!期待することもできませんわ!」

「……ベタ……惚れ?パティが俺に?」

「エディ、ちょっと、やめて!?」

「なんですの?それともあなた、お姉様の気持ちを弄んでいたのですの?」

「俺がパティを弄ぶ?テメェいい加減にしねぇとブッコロスぞ!」



辺りの空気がシーンと静まり返る。

侍女たちは、カタカタと震えて精一杯耐えている。さすが、侯爵家に使える使用人ともなれば洗練された侍女たちだ。

一方で、言われたエディといえば、不気味に笑いながら震えていた。


「ふ、ふふふ。アハハ!」

「な、なんだよ」

「おそるるべからず!異世界転移者!」

「???」

「あなたが如何に愛の言葉を駆使して相手を使役しようとも!異国の血を半分引くわたくしたち姉妹には効き目も半分でしてよ!ねぇ、姉様!!」

「えぇ!?」

「わたくしの胸には、ちっとも響きませんことよ!お姉様もそうでらっしゃるでしょう?」


「……私、言われたことないから……」


と、しょぼんと返事をする。


「あら、そうですの?でも、こんな言葉聞くに耐えませんことでしてよ?」

「ちょ、待て。愛の言葉ってなんだ?」

「まぁ、あなたもそんなことを言いますのね」


なんだかだんだん収拾がつかないカオスへと突入している気がして、私は青空を見つめた。そして、心から思った。(帰りたい)と。




「お姉様のことは、離れ離れになってからも毎日忘れたことはありませんでした。ですので、毎日のお姉様の行動を、報告書に纏めて送らせていましたのよ」


なんてことをサラッと言うのだろう。町に潜む私の護衛。さすがに多いなとは思っていたけど、まさかエディの間諜だったとは。


「マジか。とんでもねぇ執着ストーカーシスコンじゃねぇか」

「レオ、めっ」

「そうしたらある日、お姉様が若い男を拾って、身近に置いていると聞きましたの。どうせ今回も直ぐに出ていく事でしょうと思っていたのに、上がってくる報告書はどれもこれもイチャイチャしたものばかり。わたくしは確信しましたの。この男ならお姉様を幸せにしてくれるのでは、と」


「コホン続けて」

「それで、興味を持ちましたの。どれほどお姉様を慎み深く愛し、大切にする御仁なのだろうと。それが蓋を開ければ彼のような……」

「ストップ。その先の話はエンドレスになるわ」

「はい」

「結局さ。妹ちゃんは、俺に何を求めてるの?」

「文句のつけ所のない男性像ですわ!」

「なんのために?」

「お姉様を不幸にしない為でしてよ!」

「パティが幸せか不幸かって、誰が決めるんだよ」

「わからない男ね。あなたと結婚すれば幸せ。結婚道具となれば不幸せ。に決まっているでしょう?」

「俺と結婚したら、幸せ……?」

「そうですわよ!わたくしたちが恋愛結婚できるだなんて、夢のまた夢ですわ。それを叶えようとしているお姉様を幸せにするのはあなた以外誰がいるというのです!」


恥ずかしすぎて血を吐きそう。


「極論すぎる。妹さんよ。アンタに報告書を送ってたやつがどんなヤツか知らん。が、随分脚色が混じってるか、もしくはアンタが曲解してねぇか?」

「なんですって?」

「あのね。俺はパティにベタ惚れしてんの。だから、毎日毎日パティのために働いて、尽くして、気持ちを伝えてんの。でも、パティから色良い返事を貰ったことなんて一度もねぇんだわ。だから、めっちゃ甘苦い思いをしてんの。分かる?」

「わ、わかりませんわ」

「つまり、妹だからって、パティの気持ちを決めつけんなってこと」

「お姉様の、気持ち?」

「そ。そりゃ、パティが俺の事好きだっつーのなら、めちゃくちゃ嬉しいし、今すぐにでも結婚でも家庭を持つでもドンと来いだ。けど、パティは違うんだよ」

「そうなんですの?お姉様?」


うっ。またこっちに飛び火してきた。

真っ赤になる私の顔をみて


「いえ、確かにお姉様はあなたに好意的ですわ」


って、さらりと言った。

どうしてそーゆー事を言うかなー。ほんともうやめてー。と、血の涙が流れかけた。


「え?パティホントに?」

「……ノーコメント」

「……!!」

「わたくしの前でイチャイチャなさらないでくださいまし!」

「いや、嘘だろ……?」

「なんであなたが困惑なさるのです。それでは困りますのよ!」


おかしい。何か変だ。

エディはこんな人の気持ちを無視して無理やり話を貫こうとする子じゃない。

いくら結婚して大人になったといっても、人間の本質はそんなに変わるものじゃない。


「エディ。少し2人で話をしたいのだけれど……」


というと、今度はレオに貴族の装いを着させると言い出すエディだった。

続きます。

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