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空を飛ぶと高速になるんですが。

「レ、レオ!速い!速すぎる!!」

「黙ってしっかり俺に抱きついてろ!じゃないと舌噛むぞ!」


 いやグリフォンが、滅茶苦茶速く飛ぶというのは知っていた。

 それにしてもこれは想定外だ!

 その上、雲の上を飛ぶなんて聞いてない!

 季節はまだ夏なのに、寒い、寒すぎる!!

 あと、正面を向くと風が強すぎて、口の中にビュウビュウ空気が入り込んで苦しい!!口の形か口になって、まったく閉じなくて乾く!

 結果、レオの胸の中に収まって、しがみついて、やっとこ呼吸が出来たのだ。

 すー、はー。


 レオはと言えば、今日はポニーテールにしていて、風で髪をなびかせていた。

 胸にすっぽりおさまりながら、下から見上げるレオの顔は、正面を真っ直ぐ見据えていて、キリリとして格好良かった。

 そんな私の視線に気が付いて


「なに見とれてるの。惚れた?」


 って、ニヤリと笑った。相変わらず生意気な。と、脇腹をつねった。


「あはっ!パティそれくすぐったいから」


って、抱きしめられた。


 体がすっかり冷えきったころ、下降して少しスピードを落とした。


「パティ、確認してくれ。あの建物か?」


 と、風を避けながら優しく正面を向かせてくれた。


「この領地の1番立派な建物だし、間違いないと思う」

「分かった」


 と、いうと、その建物の門の前にグリフォンを降ろした。


 私たちが住んでいるド田舎と違い、ココは侯爵領だ。王都ほどではないとは言え、街も随分と発展している。

 レオも、侯爵城を改めて地上から見上げて、驚いているようだ。


 直ぐに門兵が気が付き、こちらの名前と要件を伝えると、屋敷へと確認に走っていった。

 やっぱり連絡も無しに訪問すれば、そうなりますよねぇ…。騒ぎにしてごめんなさい。と思ったのもつかの間、あっという間に屋敷の中庭にある東屋へと通された。

 もちろん、グリフォンも一緒にだ。


 そこには、慌ただしくアフタヌーンティーの用意をする侍女達がいた。

 ここでも申し訳ない気持ちになったが、もう開き直ることにした。

 レオは見たことないお菓子に目をキラキラさせ、『コレ、食っていいの?』とヨダレを垂らした(ように見えた)


 それから少しすると、妹が現れた。

 胸元を大きく開けたゴテゴテのドレスに赤い髪の毛は派手に装飾され結き上げていた。それから白い鳥の羽をふんだんに使った扇子を広げ口元を隠す様子は、かつての自分を見ているようで恥ずかしかったし、いかにも『お貴族様のご婦人』感満載なのは、あんなに可愛かった妹が少し遠い存在に感じた。でも妹は、粗末な服を着る私に


「お姉様!ようこそおいでくださいました!エドガルドはお姉様にお久しぶりにお会いできて、嬉しゅうございます」


 と、嬉しそうに駆け寄ってきた。


「エディ。私もよ。さぁ、顔をよく見せて」

「はい。お姉様!お姉様はお変わりありませんか?」

「ええ。あなたはまた一段と美しくなったわね。嬉しいわ」

「お姉様にお褒め頂けるのが1番嬉しいです。あぁ、お姉様、花のような良い香りがほんのりしてきて素敵です」

「あぁ、それはね、このレオが用意してくれてね。紹介するわね」

「豪血寺獅音だ。夜露死苦」

「……そうですの。あなたが……」


 と、エディはレオを頭から足までじとっと見定めると、レオと私の間に入って腕を組んできた。


「わたくし、お姉様の話を聞きたいですわ!最近はどのような研究をなさってますの?」

「えっ。そうね、巨大なモグラの穴掘り実験とかは非常に役にたつ研究だったわ」

「まぁ!それは素晴らしいですわ。お茶を飲みながらぜひお話を聞かせてくださいませ」


 と、やはり貴族のマナーたっぷりに椅子に腰をおろし、紅茶に口をつけた。

 紅茶なんて、久しぶりだ。普段は白湯かお茶で充分だ。

 レオはレオで、出し惜しみなく開かれたエディの胸元をじーっと見ていたかと思うと、今度は私の胸元に視線を移し、グッと親指を立てた。

 なんだそりゃ。


 それから、私とエディはレオそっちのけで会話を楽しんでしまった。

 レオはそれを邪魔することなく、時々お菓子に手を伸ばしたり、紅茶を飲んだりしながら黙って聞いていたように思う。


「そうだわお姉様!せっかくですので久しぶりにドレスをまといませんか?」


 と、エディが嬉しそうに手を叩いた。


「ううん、私は今のこの格好でじゅう」

「さぁ、侍女たち!お姉様の身支度をなさい!」


 とセンスをパタンと閉じると、私はあっという間に拉致られた。

 貴族というのは、身支度に時間がたっぷりかかる。その間、エディとレオはどんな話をしているのか。

 さっきの親指の意味もわからない。レオがエディに手を出すのでは。いやまさか人妻に。いやでも超ナンパ師のレオだから、と、頭をグルグルさせたのだった。


 小2時間ほどたっただろうか。完璧に王女時代の装いに戻されてしまった。

 あ、未婚のため、胸元はそれほど空いていないものでホッとした。


 急いで2人の元に戻ると、なにやら口論をしていたようだった。

 が、レオが私に気がつくと、あんぐりと口を開けた。

 ちょっと、どういう反応よ。


「オホホ!これだからアナタは駄目ですのよ!レディを目の前にしてエスコートもしようとしないなんて!」


 と、エディが私に腕組みをしようと近づいてきた。

 が、そのエディを押しのけて、レオがひざまつき、手を伸ばしてきた。


「俺、エスコートなんてわかんないけど」


 なんて言うから思わず笑ってしまった。


「なんなんだよ姉妹して!俺だってぴっしりやりたいわ!」


 と半泣きな表情を見せるから


「ごめんなさい、違うの。照れくさかっただけよ」


 と、突き出された手に私の手を添えた。


「ふむ。心意気だけは認めましょう」


 とエディも満更では無さそうだ。

 改めて着席すると、新しい紅茶が出された。それを1口含み、喉を潤した。


「それで、2人はどんな話をしていたの?」


 と聞くと、2人は睨み合った。


「お姉様!この男は認められません!粗暴すぎてお姉様には釣り合いません!」

「あんだとこら。コッチはパティの傍で付きっきりで面倒みて、旦那ポジションゲットしてんだよ!」

「旦那ポジションってなんですの?話を聞いた限り、ただの家政夫ですわ!住み込みで働いている程度で図々しいにも程がありましてよ!」

「ぐっ。その通りなのは認めるけどよ。俺たちはちゃんと」

「ちゃんと、なんですの?両思いだとか言いますの?」

「ぐぅ。違ぇけど」

「ほら、違うのに両思い気取りで恥ずかしい!」

「いや、今は俺の一方的な片思いだけどよ、必ず両思いになっからな。その日も案外近いだろーけど、オマエなんて結婚式には招待してやらねーから悔しがってろこのシスコン!」

「きいぃ!誰と誰が結婚するですって!?お姉様があなたなんかを相手にする訳がありませんことよ!」

「うっせ、うっせぇ!俺とパティが結婚するんだよバーカ!」

「バ、バカですって!?なんて口の悪い……!」


 エディはプルプル打ち震えて、真っ赤な顔をして扇子を握りしめた。

 全く話についていけない私は、大人しく紅茶を飲んでいたのだけど、2人が同時に


「こんな男のどこがいいんですの!」

「こんな女のどこがかわいいんだよ!」


 と、私に飛び火してきたから、お茶を吹き出した。

 私からしてみれば、2人とも良いところが沢山あるんだけどなぁ。


「まったく。これだから男は嫌なんですわ!」

「あんだと?テメェは括りが広すぎんだろ!男、女で分けたら、人口の半分が嫌いっつー事か!」

「そうですわよ!少なくとも私が見てきた男は、だいだい嫌いでしてよ!」

「よーく言ったな!じゃあテメェの弟も嫌いだっつーのかよ!」

「ええ!アレがこの世で1番嫌いですわ!」


 とエディが叫ぶから


「そこまでになさい!」


 と、私も大きな声を上げてしまった。


「ご、ごめんなさいお姉様」

「なりませんよ、エディ。この国の王太子を悪く言っては、いくら姉とは言え降嫁したあなたでは不敬罪になるわ」

「……はい。すみませんお姉様……」


 と、あまりにシュンと反省するものだから、レオもビックリして落ち着いたようだ。


「それじゃあエディ。レオの駄目だと思ったところを教えてくれる?彼もきっと、直して行きたいと思っているだろうから」

「……かしこまりましたわ、お姉様。彼が望むならですけど」


 とレオをチラッと見る。


「俺?俺はこのままでも……。いや、パティの親父さんやお袋さんにも認められなきゃだもんな。教えてくれるなら助かるぜ。よろしくお願いします!」


 と頭を下げた。

兄弟喧嘩〜。

こういう時、ピッシリまとめる長子は凄いですね。

弟や妹から尊敬されてるって感じがします。


イイネ頂けると喜びます。

感想なんて頂けたら飛び上がって喜びます。


応援よろしくお願いしますm(_ _)m

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