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第7話 陽神教会

 エイミーとロイドは宿屋『水蓮』に辿り着いた時に偶然にもインリーバ村の

教会に似た雰囲気の教会を見つけてしまう。


『教会・・・後で行ってみよう。その前に宿にチェックインだね』


『それが宜しいかと存じます』


タリアがいるので『念話』で会話する二人。彼女に案内されて

『水蓮』に入った。中へ入ると広いエントランス、右を見るとサハール川を臨む

オープンテラスがあり素晴らしい景色を楽しめる宿であった。

奥にある受付へ向かった。


「いらっしゃいませ・・・これはタリアお嬢様」


「こちら私のお客さんだから一番いい部屋に案内してあげて

 代金も私持ちだからヨロシクね」


「畏まりました」


それを聞いて驚くエイミー達。


「そこまでしてくれなくても、普通で十分だから」


「気にしないで、私の気持ちだから。お礼なの」


「それじゃ後は任せたわよライラ」


 そう言うとタリアはこの後用事あるからと帰っていった。

エイミーはタリアから解放されて少しホッとしていた。

ライラという20代の美人な受付嬢に案内されて3階奥にある部屋へ向かう。

この街の受付嬢はみんな美人しかなれないのかと突っ込みを入れたくなる

エイミーであった。


「こちらが当宿一番のスイートルームで御座います。食事もこちらで

 頂けますので時間をご指定下さい」


「じゃ夕方6時にお願いしますね」


「畏まりました」


 そう言ってこの部屋のカギを渡された。ちなみに一般の部屋では

食事をする場合は1階の食堂で頂けるようだ。夕食は午後6時から

朝食は午前6時からの営業。

トイレは各階に男女それぞれに共同トイレが設置されているようだ。

部屋へ入るとそこは川に面した部屋でテラスがありサハール川を見渡せた。

豪華に仕立てられた部屋でトイレに浴室、洗面所完備であった。

ベッドルームにリビングルームと広い造りであった。


「凄いっ!」


それが第一声であった。


「ほんと凄い所に泊めてもらったね。日が暮れるまで時間があるから

 さっきの教会に行ってみようか」


「宿に甘えて教会参りと行きましょう」


「・・・」


 部屋を確認した二人は宿を出て教会へと向かった。

河岸公園を散歩気分で教会へ向かって歩いた。公園には噴水やイスなどがあり

人々がそれぞれに寛いでいた。公園を進み反対側の出口を出て教会の前に

出た二人は違和感を感じていた。その違和感を確かめるために中へと入った。


「こんにちわ」


二人が教会の中へ入ると厳かな礼拝堂が目に入る。ここでも違和感がある。


「ようこそ陽神教の教会へ、礼拝の方ですか?」


教会のシスターに声を掛けられた。とても綺麗な少女であった。


「私たち行商人をやってましてメロアは初めてなんです。

 教会を見つけたので寄付しようかと思いまして、陽神教なのですね」


「それはありがとうございます。メロアは初めてなのですね。

 それでは説明させて頂きます」


 シスターの話によればこの教会はメロア市の西地区にある教会で

メインの教会はサハール川を渡った東地区にある大聖堂なのだそうだ。

メロア市の西地区は商業の中心であり東地区は政治、宗教の中心で

この地を治める領主の宮殿も川を渡った東地区にあるそうだ。

こちらの教会は西地区の住民の為に建てられたそうだ。

街の構成が分かったエイミーは教会に来て良かったと思った。

そして折角教会に来たのだからとシスターに聴いてみた。


「インリーバ村の教会ってここと同じ陽神教かな?」


「えぇそうですね・・・でも今は誰もいないと噂になってます。

 以前大聖堂で仕えていたホワイト司祭も行方不明だそうです」


「そうなんだ・・・変な事聴いてごめんね」


 交易都市メロアへ来てまたも重要な手掛かりを得たエイミーは未だに消えない

違和感の正体を突き止める為教会の礼拝堂を映像に残す事にした。

その間ロイドは何も言わずに二人の会話を見守っていた。

エイミーとロイドは金貨5枚を献金して教会をあとにした。


「一歩前進ね、宿に戻って検証しよう」


「そう致しましょう。違和感の正体も突き止めねばなりません」


二人は『水蓮』に帰り部屋へ入るとエイミーはお風呂に入りたくなった。


「私シャワー浴びてくるからロイドはゆっくりしてて検証作業はその後で」


「畏まりました」


 それから15分くらいしてスッキリしたエイミーが戻って来た。

ロイドは椅子に座って寛ぎ手には単行本を持っていたが

本を仕舞い素早く立ち上がり主人を待つ執事。


「あー良かった!日本で入って以来だったね。レンカもお風呂入れたかな?」


日本のシャンプー、ソープでスッキリしたエイミーはレンカを気に掛ける。

彼女に渡したマジックバッグにも同じものが入れてあった。


「コーヒー牛乳飲みながら検証しよう。まずは違和感の正体探し」


『姿を現せ、貴械精霊カーミア』


エイミーが念話で呼びかけると部屋のテーブルに突如として

身長15センチメートルのブロンド髪の美人なカメラマン精霊が姿を現した。

彼女は普段エイミー達の冒険を撮影している。戦闘でのデータ収集も仕事だ。

何台ものカメラを同時に扱い必要な情報を収集していた。

同じ精霊でもマーラとは違い絶対不可視の存在でエルフの眼にも映らない

存在であった。エイミーだけは視えずともいる事は分かるのだった。


「姿をお見せするのは久しぶりで御座いますね、我がマスター。

 全て観て存じておりますので闇の帳をお願い致します」


「闇の宝珠『闇の帳』」


エイミーが宝珠を取り出し『闇の帳』と命じると部屋は闇に包まれた。

それを待っていたかのようにカーミアが2つの映像を映し出す。

ひとつはインリーバ村の教会、もうひとつはメロア西地区の教会内映像が

映画の様に流れ出す。それを観た二人は違和感の正体に気付いたのだった。


「そういう事だったのね」


「これはこれは」


二人が気付いたのは祭壇に掲げられた紋章の違いだった。

その他祭壇の飾り方も微妙に違うのだが一番の違いは

金色に輝く光輪の紋章は二つの教会共同じなのだがインリーバ村の

教会の方だけ中心にある円の中に『Z』とも『砂時計』ともどちらにも

取れる様なマークが刻まれていた。


「一歩前進ね、これが何なのか調べないと」


「大きな一歩で御座いますな」


「カーミアありがとう、仕事に戻ってね」


「また何かあればお呼び下さい我がマスター」


 そう言うとカーミアの姿は搔き消えて見えなくなってしまった。

二人は今日はここまでにして明日動く事にした。

夕食はスイートルームに配膳された豪華なコース料理を堪能した。

それに満足したエイミーは早目に就寝する事にした。


 翌朝目覚めた二人は朝の準備を済ませると早速受付へ向かい今日も

宿泊する事にした。タリアの計らいで引き続きスイートルームに泊まる事に。

その時滞在許可証も受け取った。無事宿を確保したエイミー達は

商人ギルドへ向かった。


「ねぇロイド、ギルドでお金受け取ったらレキシーさん達

 訪ねてみない。あの紋章見てもらおうと思ってるの」


「それも宜しいかと、聞いて損はありません」


 通りは朝から人の行き来が多く賑やかであった。特に冒険者を多く見かけた。

これから依頼や採取などに出掛けるのだろう。


「紋章の件が済んだらさ落ち着いて街回ってみようよ。

 ヒイロンに行かずとも手に入る衛星ドローンの素材あるかもだしヒイロンの

 情報もここで得られるかもね」


「そうで御座いますな。私めも街ブラしたいと思っていたところで御座いました」


 二人でこの先の予定など話し合いながら途中露店で食事を楽しんだ二人は

商人ギルドへと入り受付へと向かった。


「おはようございます。昨日の方ですね。代金の受け取りですか」


「はいお願いします」


そう言うと昨日と同じ様に裏の買取所へ案内されガタイの良い

シーマさんが出て来た。


「査定は終わってるぜ。解体費用を差し引いて金貨39枚だ。

 それで良ければこれにサインしてくれ」


エイミーは預かり証を渡し書類にサインして売却代金を受け取った。

あのマーダークラブが大金に化けてホクホクな彼女であった。


「シーマさん『水面の月』って宿の場所分かる?知り合いが

 泊まってるらしいのだけど場所が分からなくて」


「それなら『水蓮』とは逆へ向かえばいい。河岸通りを北へ行けば

 道の左側あるはずだ」


「親切にありがとうございます」


「また売りに来てくれればそれで良い。上客は大事にするもんさ」


ニカっと笑うシーマさんに別れを告げ二人は『水面の月』へ向かった。

言われた通りに河岸通りを北へ進んで行くと目的の宿が見つかり

中へ入り受付へと向かう。『水蓮』とは違ってエスニックな感じを

漂わせる宿だった。


「いらっしゃいませにゃ」


 受付は猫獣人の可愛い少女であった。この娘がいるから泊まりたいと

思わせる宿だった。エイミーも危なくやられるところだったが気を

取り直し尋ねてみた。


「ここに『砂漠の牙』というパーティーが泊まってると聞いたのですが

 取り次いでもらえませんか。エイミーが来たと」


「少し待つのにゃ、呼んでくるにゃ」


そう言って受付から出て行くと一人女性を連れて戻って来た。


「エイミーちゃん来てくれたんだ嬉しい!」


思い切り抱きしめて来たのはレキシーだった。他のメンバーは外出中で

今一人らしい。外出しなかった私偉いとか言ってる彼女。猫獣人の名は

ファラと言うらしいがファラにもこの感動を分けてあげたいとか一人で

盛り上がっていた。そしてやっと落ち着いたレキシーに話があると言うと

宿のロビーで話す事にした。


「何かな、メロアの街ならいくらでも案内するよ」


「そうじゃなくて、これ見てほしい」


インリーバ村の教会にあった紋章を紙に写したものを見せた。


「これがどうしたの?陽神教のシンボルでしょう」


「一見そう見えるけど、ここ見て下さい」


エイミーはそう言って真ん中の文字にもマークにも見えるそれを指差した。


「こんなのあったかな。私詳しくないしね・・・

 あっ、私の幼馴染がメロアの大聖堂にいるけど会ってみない」


「会いたいです!」


「これ貸しね」と不敵に笑うレキシーを伴ってエイミーとロイドは

メロア市東地区にある大聖堂へと向かった。なぜかレキシーはエイミーの

手を引いていた。港大通りへ出て通りを東へ向かうと巨大な橋が見えて来た。

川幅1キロメートルを越える場所に架かる道幅20メートルの長大な橋であった。


「これがメロアの観光名所、ロンド巨神橋よ。大昔ロンド神が

 自ら産み出した巨神をサハール川に眠らせて橋にしたらしいの。

 そう言う伝説の残る橋なの」


三人で橋を渡りながらエイミーはロイドに念話する。


『私こんな橋架けた覚えないよ』


『どう言う事で御座いましょう』


 エイミーの説明によると今渡ってる橋は本来ゴーレム橋と言って何体もの

巨大なゴーレムを使って土台を築き橋を架け最終的に全てのゴーレムが

合体しひとつになって橋が完成する錬金建築だそうだ。昔の弟子が

複数人で造ったのだろうと言う話だった。


『そう言う事でございましたか。流石はお嬢様です』


「ここから見る景色は最高でしょう」


 二人が念話してるなど知る由もないレキシーが話し掛けて来た。

彼女の言う通り橋から眺める川の流れ、その背景に浮かぶ街並みや港、

停泊する美しい豪華客船に橋の上から多くの人々が目を留めていた。

今も橋を多くの人や馬車が行き交い橋の下を見れば船が行き交っていた。

長い橋を渡り終えると目の前に巨大な広場がありその先に目的の場所があった。


「あれが大聖堂よ」


 半円形の高さ50メートルくらいの建物の両端と中央に高さ80メートルくらいの

3つの尖塔のある大きな大聖堂だった。

大聖堂に入りレキシーの後を付いて行くと聖堂内のアトリウムにある

受付へ連れて行かれた。


「ここで呼んでもらうから待ってて」


受付の人と話しをするレキシー。受付の人が奥へ向かいしばらくして

レキシーと同い歳くらいの一人の女性を連れて来た。


「あらレキシー急にどうしたの?」


「ナオミあなたに会ってもらいたい人がいてね。こちらエイミーちゃん。

 あなたに見てもらいたいものがあるの。あなたなら分かるかもって」


「これなんですけど、これが何か分かります?」


エイミーは例の紋章の描かれた紙をナオミに見せると彼女の顔は

驚愕に染まっていた。


「これどうしたの、何であなたがこんなもの持ってるの、何で知ってるの」


ナオミが矢継ぎ早に質問して来る。彼女に強く腕を掴まれ揺すられ

困惑してると今まで静かに見守っていたロイドが割って入ってきた。


「落ち着かれよナオミ殿、この紋章は我らがインリーバ村へ立ち寄った際に

 教会にて見たものだ」


ロイドがそう告げるとナオミの表情はさらに驚愕の色を増し慌てて

大聖堂の奥へと駆けていった。ひとつの呟きを残して。


「あの異端者共め!」


それを見ていたエイミーとロイドは突然の展開に驚いていたが

異端者という言葉を聞き逃さなかった。


「異端者か・・・」


「またひとつ前進しましたな」


 大聖堂に来て謎がまたひとつ解けて満足そうな二人と

何が起こったのか理解出来ないレキシーをアトリウムから覗く

大聖堂の祭壇に輝く光輪が三人を讃えるように見守っていた。

エイミー達は一歩ずつ謎に迫りますがここで小休止。

次回は「レンカと冒険者ギルド」です。久しぶりにレンカの登場です。


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