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第5話 水底に潜むもの

 エイミーとロイドはインリーバ村で一夜を過ごした。

二人は朝食を済ますと教会へ向かう事にした。

昨日の調査で殺害されたのは持ち物からホワイト神父であると判明し

殺害された神父と関係ある場所として再度調査するためであった。

村の北にある教会に着くともう一度中を見て回る。

やはり変わった所はないようだが今回は念のため血痕の調査と

教会内を映像に残すことにした。万能測定器を取り出し

エイミーが調べていると血痕の反応が強く出る場所があった。


「ここが犯行現場かー、科学捜査最強!」


教会の神父の部屋を見回す二人。犯人が拭き取ったのだろうが

科学捜査の前では無意味だった。


「これでOKかな、ロイド出るよ」


 教会を出た二人は村をしばし眺めていた。


「これ以上は何も出ないかな、十分とは言えないけど成果もあったしね。

 消えた村民と殺害された神父、謎のミステリーサークル。何かありそう」


「怪しさしかありませんな」


「寄り道はここまでにして北へ向かおう、交易都市メロアへ」


エイミーは村を離れる事にして、取り敢えず北のメロアへ向かう事にした。


「交易都市メロアへは船で行こう、錬金術の出番だね、錬金術」


村の広場に錬成機器を次から次にアイテムボックスから取り出しセットしていく。

スナサソリの外殻も必要なだけ取り出し準備が終えたエイミーは機器を起動した。


「錬成機器始動、各錬成陣起動、素材投入、魔船錬成開始、小型船舶錬成」


まるで3Dプリンターの様に船が錬成台に構成されていき錬成が終わると

いくつもの魔方陣が刻まれていく。最後に錬成台が光に包まれると

そこには全長15メートルの魔動船が出来上がっていた。


「流石はお嬢様!それで船の名は何と呼べば?」


「まぁこんなもの普通よ、船の名はねー『レンレン号』」


「なんとなく伝わりますな・・・」


 エイミーは船を執事に預け錬成機器の片付けを終えると村の船着場へ移動した。

船着場では既にロイドが『レンレン号』に乗り込みエイミーを待っていた。

彼女が船に乗ると謎深きインリーバ村に別れを告げ北へ向かって出航した。


 サハール川を北へと下る旅は快適に進んでいた。二人は水面を吹き抜ける風に

身を任せ船旅を楽しんでいた。『レンレン号』は魔石の魔力を動力源に快調に川を

下っていく。川の流れも味方にして。


「レンカと再会したらこういう船旅もいいなー」


エイミーは未だ訪れぬレンカとの再会に想いを馳せていた。

川を下って20分くらい経っただろうか快適な船旅は突如として終わりを告げた。


「お嬢様、何か来ますご注意を!」


「分かってる、衝撃に備え『念動』の準備ね」


それまで穏やかな流れを維持して来たサハール川を荒らすように水中から

迷惑なそいつは浮上して来た。それを見た二人は驚愕する。


「えっ!土偶ゴーレム・・・しかも3体」


「これは戦い甲斐がありますな」


突然水中から現れた3体のゴーレムによって川は荒れ船は波に飲まれる筈が

ロイドの『念動』により抑えられていた。

一方エイミーは『念動』により船をゴーレム3体の囲みを抜けるように

下流へ飛ばして十分な距離を取る事に成功していた。


「ロイドは迎撃ね、私は船を守るから」


「彼奴らすぐ沈めて参ります」


「舞刀両断『水上舞刀会』」


執事は華麗に船から飛び出すと上流から迫る敵に水上を闊歩して

斬り込んでいく。エイミーも遅れずに呪文を唱えた。


「装具召喚『節状鞭オーベンカ』、散開せよオーベンカ」


「6条反射防壁3面展開、6条は攻性雷光刃にて敵を討て」


船を守るように3面の幅5メートル正六角形の6条反射防壁が展開する。

そして6条の光の剣、攻性雷光刃が3条づつ左右に分かれ

空中にて敵を迎い討つ。


「舞刀両断、一踏斬」


ロイドは水上をホバリングしながら迫る先頭のゴーレムに一撃を加えるが

腕で防御される。表面に傷が付いた程度であった。


「やはり守りが固い!スナサソリの柔さとは違いますな。

 分かっていた事とは言えやる事はひとつ」


敵3体が交互に腕を伸ばし攻撃してくる。間にビーム攻撃も仕掛けてくるが

ロイドは華麗に水上を舞いながらパンチを躱し、ビームを受け飛ばす。


「念動掌」


「念刀両断、裂細剣」


『念動掌』で敵一体を吹き飛ばし、もう一体を引き寄せると

裂細剣の斬撃が敵ゴーレムに炸裂する。

敵ゴーレムは頭部から胴体へと不可視の力で裂け始め

最期は2つに分かれて力を失い水中へと沈んでいった。

残りの一体はロイドが2体を相手してる隙に逃げる様に水中へと潜行した。


『お嬢様一体そちらへ逃しました』


一部始終観察していたエイミーは念話を受け取ると水中への警戒を強くする。


「透視」


彼女はすべてが視えていた。船底さえ透けて水底の様子が分かるのだ。

敵ゴーレムが船を下から突き破ろうと水中を突き進む姿が丸見えであった。

エイミーは『念動』を使って船を瞬時に移動させ敵の攻撃を躱すと

攻性雷光刃を敵ゴーレムへと仕掛ける。

光の剣が突撃が空振りに終わり水上に姿を現したゴーレムに縦横無尽に

斬りかかり手足を切り落とし最後に首をはねたが最期の悪足掻きとばかりに

ビームを発射して来た。

エイミーはそれを6条反射防壁で撃ち返し自らの攻撃を受けた胴体は大破し

敵ゴーレムは川の藻屑となった。

残る一体のゴーレムもロイドが始末しそうだったが突如としてゴーレムの体躯が

怪しく発光し始めた。


『ロイドそいつを「念動掌」で空へ打ち上げてくれない』


エイミーが念話で執事に伝えるとオーベンカを再構成する。


「24条神性攻撃『天照』を展開」


オーベンカは24条の円環を構成し神々しい魔方陣が浮かび上がる。

タイミングを見計らったようにロイドは自爆寸前のゴーレムを打ち上げた。


「『天照』敵を討て!」


24条の円環から放たれた光の奔流は空高く舞い上がったゴーレムと

その自爆光さえ飲み込みすべてを消滅させた。


「危なかった・・・まさか『天照』を使う事になるなんて。

 土偶ゴーレム危険過ぎる、倒したのも回収しないと」


初の実戦投入となった『天照』が上手くいきデータも取れてホッとしてる

エイミーが考え込んでいるとロイドが船へと帰って来た。


「とんでもない獲物でしたな」


「うん、倒した奴を引き上げて回収しよう」


 二人は船を留めて『念動』で土偶ゴーレムの残骸を引き上げていた。

するとそこへ水中からヒョッコリと少女が顔を出してエイミーを見ている。


「水中にいた時から視えてたけど、あなたはだーれ?」


「あのー、わ、私お礼が言いたくて、そのー・・・」


辿々しく応える少女。エイミーには分かっていた。『透視』でずっと

人魚がいるのが視えていたのだった。


「あなた人魚でしょ、お礼って何のお礼かな?」


「は、はい。あの怪物を退治してもらって、はい・・・」


 どうやらこの人魚は土偶ゴーレムを倒した事に感謝しているらしい。

そこでエイミーは詳しく話を聴いてみる事にした。

人魚の話によると彼女は名前をアリアールと云いサハール川で暮らしていた。

ところが最近あの土偶ゴーレムが棲み付き隙あらば襲って来るので

隠れて暮らしていたそうだ。それを今回エイミー達が退治してくれたので

元の暮らしに戻れると家族共々喜んでいるのだった。

人間には馴れていない様で怖さから辿々しい話し振りだったが

次第に馴れて来たのか辿々しさは消えていた。


「あっ、後れたけど私がエイミーでこっちがロイドねヨロシク」


「ロイドと申します」


「アリアール、良かったね。こちらにとってはただの偶然だから」


「そうで御座いますな。我らが通り掛かったのも何かの縁でありましょう」


「ちょっと待ってて」と言ってアリアールは水中へ潜るとまた戻って来た。


「これ上げる」


アリアールは手を差し出して来た。そこには一粒の宝石と金貨銀貨が

手の平一杯分載っていた。


「これって人魚の涙・・・これくれるの?」


「うん、先祖のお守り。人間のお金はいらないからあげる。

 もうブラウンさんいないし・・・」


「ブラウンさん?」


エイミーは急に出て来た名前に好奇心を覚えブラウンさんについて

アリアールから教えてもらった。

彼女の話ではブラウンさんはインリーバ村の漁師で偶然知り合い

たまに物々交換をしていたらしい。彼女が川底で拾い集めた

金貨や銀貨などの人間の落し物や収獲した魚や貝などと人間の道具を

交換していたが最近姿を見なくなったそうだ。


「ブラウンさんに変わった事聞いてないかな?」


「デンドウシがどうとか、村が変とか・・・難しい事喋ってた」


「デンドウシ、伝道師。村が変?」


「これは思い掛けず重大なヒントが得られましたな」


 人魚アリアールによってもたらされた重要な手掛かりに驚く二人。

船上で興奮するエイミーとロイドを水間から静かに見つめる人魚。

大河サハールは水底に抱えていた秘密を届けてホッとしたかの様な

穏やかな流れであった。

今週は3話投稿出来ました。読んで下さった方ありがとうございます。

エイミーとロイドの謎解き冒険は続きます。

次回は「交易都市メロア」です。

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